苦手な女
突然だが、シンセスに出発するまでの間ジャネットは家族と過ごしている。 だからハーベスト伯爵によって負ったストレスを解消すべく、今夜は夜の王都に繰り出した。
サラリーマンが仕事のストレスを発散するにあたって、その方法は大きく分けて2種類に分類される。 キャバクラ派と風俗派だ。 キャバクラに恋愛ゲーム的楽しみを見出す紳士も居るが、実利を取る僕は圧倒的に風俗派である。
はい! やってきましたバドック王国最大の歓楽街。
「マッチョの兄さん。 安心安全のトービツ商会がお薦めだ」
「予算は幾らだい? 責任もって最高の店を紹介するよ」
「ワンドリンク付きで30分15,000Ptぽッきり! 回数は無制限だ」
どの世界においても客引きに捕まればカモにされる。 無視して真直ぐ目指す目的地に向かう。
王都の風俗は大雑把に3種類だ。
最も高級なのが没落貴族の夫人などが在籍する『淑女クラブ』と呼ばれる業態だ。 徹底したホスピタリティーと元貴族というブランドで最上の癒しを提供してくれる。 惜しむらくは嬢の年齢層が高いことだろうか。 枯れた爺さまになってからお世話になりたい。 費用は一晩5万Pt~
費用は中間クラスで若い貴族に最も人気なのが『令嬢ヘルス』だ。 散財して勘当された令嬢や小銭を稼ぎたい下級貴族の夫人、遊ぶ金が欲しい平民女子など若い嬢が短時間で気軽に稼ぐ業態だ。 残念なのはプロ意識が欠如してサービスがお座成りになりがちだということだ。 費用は30分15,000Pt~
最も安価なのが街頭に立つ未成年の少女達。 トービツ商会の裏通りにたむろすることから『トー横キッズ』と呼ばれている。 条例で禁止される14歳以下の少女が多い。 衛生管理の欠如から病気のリスクも高く、青田買いだと称して手を出す勇者の気がしれない。 費用は一回5,000Pt~
しかし、僕が選ぶのはどの業態とも違う『パパドーラ・ファイトクラブ』一択だ。
酒場に拳闘場が設けられた業態で多くの客でごった返す。 システムは一風変わっていて、少女が一晩の金額を設定して拳闘士を募る。 参戦するにあたって男は一口10,000Ptを支払い総額が少女の希望額に達すれば拳闘開始。 そしてバトルロイヤルに勝利した者唯一人が少女を持ち帰ることが許される。 少女は一晩で大金を稼げる反面、大勢の男性から支持される美貌が求められる。 一攫千金を求め美しさを競う女達は『パパ活令嬢』と呼ばれ、社交界でも一定の評価を得ている。
「パイン・バナナ公爵令嬢、間も無く締め切りです。 残り1口です」
「勝ったら凄いことしてあげるよ~♪」
希望額15万Ptで現在は14人がエントリーか。 悪いがこの女はパスだ。
「タイムアウト。 残念! 不成立です」
「ちょっと~ あーマジむかつく」
焦りは禁物だ。
「次は大人気ピーチ・マリー公爵令嬢です。 エントリー開始」
「勝者に最高の夜をプレゼントするわ」
希望額50万Ptの強気な設定が、あっという間に達成してしまった。 だが、媚びた笑顔を振りまくピンクブロンドに不思議と食指は動かない。
「エントリーが100人に達しました。 ここで締め切らせて頂きます」
「みんなありがと~う♪」
希望者多数で司会が早々にエントリーを打ち切ると、異様な熱気の中バトルロイヤルが始まった。
100人の男の殴り合いは何とも壮絶だ。 狭い空間に押し込まれてもうぐっちゃぐちゃ。 暫く眺めても一向に終わる気配がない。
「みんな頑張って~♪」
時刻が深夜に及んでも未だ半分くらい残ってる。 身体強化魔法を使う細身の男が優勢か。
「支配人。 営業時間内に次はあるかね?」
「ピーチ姫が出勤の夜は大抵このまま店じまいさ。 悪いな兄さん」
へたこいたー。 ひとつ前のパイン何某で手を打てばよかった。
「よく無双してた兄さんだろ? また顔出してくれ」
「あーまたくる」
なんと虚しい徒労感。 帰り際に例のピーチ姫がウィンクを飛ばしてきた。 何故だろう? やっぱりあの女は苦手だ。
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「勝者が決まりました! ピーチ・ローズ公爵令嬢と暑い夜を過ごすのはこちらの紳士です」
パチパチパチ
「結局ケビンが勝っちゃったか~♪」
「はぁ はぁ はぁ ・・これで今夜は俺が貴女を独り占めだ」
マリーダは時々この手のゲームで俺達を翻弄する。
「な~んだ。 貴方も他の男達と同じね」




