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スキルグラッパーVSハイアンデッド

~戦闘中~

「この部屋から出られませーん!!」


まぁ、目前に迫るものと、背後の様子を見ればあれがどういうものかは考えるまでもないだろうが、俺はとりあえずエリシアの前に出て剣を構える。


「リューキ」


「なんだエリシア」


「……お望みのボスよ? どう料理する?」


にやりとエリシアは不敵な笑みを浮かべ、戦う気満々に杖を構えるが。


「正直逃げたい」


「弱腰か!?」


杖の硬い感触が、俺の後頭部を小突いた。


「あだっ!?」


「あんたが弱腰でどうするってのよ?」


「いや、だから俺は一般村人-程度の戦闘力しか持たないんだよ」


いきなりボスなんて言われたら見てみろほら……膝がマナーモードになっている。


「大丈夫よ安心して! 1分ぐらい時間稼いでもらえれば、ドラゴンみたく私がササッと魔法で倒してあげるから!」


「その1分が長いんだよ!! 10秒ももたないわ!」


「じゃあ、あの霧に飛び込むの?」


エリシアの呆れたような言葉に背後を見やると、明らかに触れただけでもひどい目にあいそうな不気味な靄を作り出している扉が見える。


「……無理」


「でしょう? だったらさっさと腹を決めてよね?」


「そうですよリューキ様、どうせあの敵倒さないとここから出られないんですから」


「うぐぐ」




「守ってくれるんでしょう?」




「!!……」


その瞳は、まるで俺が負けるなど微塵も思っていないような信頼。


その顔は狡い……本当は泣いてこの場から逃げ出したいというのに、まるで魔法のように俺の目を真っ直ぐに敵へと向けさせてしまうのだから。



今度は目前に迫るアンデッドを見ると刃を振り回して元気満々に俺を抹殺しようとゆっくりと距離を詰めてくる。


心なしか嬉しそうだ。


「ステータス……」


幸い、情報を探るだけの時間はありそうなので、俺は慌てて敵の情報を読み取ると。


真っ赤な視界に、敵のステータス画面が現れる。

―――――――――――――――――――――――――――

【ハイアンデッド】☠ LV5 NAMED 蟲毒の王 

筋力 4   体力14  速度 3  信仰 0 幸運 2


スキル/ 剣戟C 鷲掴みB 毒の吐息D 冒涜の触手C 王権特権B 

――――――――――――――――――――――――――――


レベル5……。


現在俺のレベルは1であり、エリシアはレベル3だ……。


先ほど倒した剣士たちも確かにレベル5であったが、こちらのボスには髑髏マークがついているため、恐らくはただのレベル5の人間とは一線を画す何かを有しているということだろう。


冷静になったうえで考えてみても正直まずい。


人間であれば、虚を突くことができるし、はったりをかますこともできるだろう。


だが相手が何考えているかわからない木乃伊である場合そのすべてが通用しない実力勝負となる。


はっきり言ってそうなれば俺に勝ち目はない。


「エリシア、やっぱりあのアンデッド相手にこのままじゃ一分はきつそうなんですが」


「大丈夫よ……アンタが戦うって決めてくれれば、私にだって考えくらいあるわ……信じてくれる?」


「一番いいのを頼む……」


「了解!」


そう言うと、エリシアは俺の隣を駆け抜けて、一直線にアンデッドへと走っていく。


「っはぁ!?」


「エリシアさん! 何を!」


走るエリシアは迷いなく、しかし魔法を詠唱することもなくアンデッドへと走っていき。


アンデッドはアンデッドでその行動をいぶかしむことも警戒する様子もなく。


機械のように近づくエリシアに対して剣を振り被り……両断しようと振り下ろすが。


「これでも……喰らってなさいっての!」


エリシアは胸元から丸められた紙の様なものを取り出し、敵へと放る。


【バインド!】


紐がほどけ、開いた紙は光り輝き、同時に触手の様なものが這い出でてアンデッドへと絡みつく。


「おぉ!」


黒い触手はまるで生きているかのようにアンデッドへと幾重にも絡みつき、ぶちぶちと引きちぎられながらも必死になってアンデッドを食い止めている。


「やった!」


俺は思わずそうエリシアに対して叫ぶが。


「まだよ! 初級……第一階位魔法だもん、二十秒くらいしか押さえておけない……私達じゃ、どんな攻撃を仕掛けても仕留めきれないわ」


「まじか!? だったらどうするんだよ」


「だから残りの時間を稼げるように! アンタに戦ってもらうのよリューキ!」


「はぁ!? だから俺は……」


抗議の言葉よりも早く、ミユキは一度アンデッドから離れると、杖を俺に構えて詠唱を始める。


【其の力は英雄の移し……脆弱を盤石に、弱者を強者に……その英雄譚、今ここに継承し継続せん!】


【英雄(ヒーロー)の歌(ソング)】


不意に、杖の先端から魔法陣の様なものが現れ、同時に中から幽霊のようなものが俺に対し一直線に飛び出し掴みかかってくる。


めっちゃ怖い!?


「ぎゃあああぁ! ななな!? なんぞこ……うっぅふ!?」


逃げるよりも早く、その幽霊は俺の体の中に潜り込むと。

〖ステータス異状・憑依を検知しました〗


ミユキの声が頭の中に響き渡る。


「ひょ、憑依!?」


「英雄の歌は、一時的に英雄の魂を召喚して憑依させ、戦闘スキルと戦闘能力にバフをかける第六階位の魔法です! 本来であれば……レベル3の冒険者では扱うことができる様な代物ではないのですが……」


「要するに……」


俺はふと自分のステータスを確認すると。

―――――――――――――――――――――

【リューキ】LV1 職業 NEET 称号 竜狩り


筋力  6+2

体力  5+5

信仰  8-3

敏捷 10+2

運   1+0

―――――――――――――――――――――

【保有スキル】スキルグラップLV1 戯言LV3【憑依分】剣技B 受け流しB 鋼鉄の体C 【戦闘スキル】 一閃


なるほど、自分のステータスにこうして憑依分の力が加算されるってことだな……。


レベル1なのは変わらないが、このステータスならば……。


俺は蟲毒の王と銘打たれたアンデッドに視線を戻す。


ステータス画面は赤から黄色へと変色していた。


これならば行けるということだ。


「……よっし!!行くぜ!」


憑依であるため、スキルグラップとは異なり時間制限はないようだ。


これなら。


【AAAA―――――!!】


全ての触手を引きちぎり、アンデッドは雄たけびを上げながら自らの楽しみを邪魔したエリシアへと剣を振りかぶり切りかかる。


だが。


「おおおおおりゃあぁ!」


上段からの振り下ろしにより、俺はエリシアしか見ていないアンデッドを真横から強襲する。


「!?GUA……」


一線に振るった刃は、アンデッドの横っ腹を切り裂き、血液ではない黒い煙のようなものを代わりに噴出させる。


「さすがですリューキ様! 正面じゃなくてわざわざ横から強襲するあたりがいかにもリューキ様らしいです!」


「ミユキ、それは褒めてるのか?」


「もちろんですよ!」


楽しそうにそういうミユキに対し、俺はどこか素直に喜べずによろけるアンデッドに対し剣を構える。


「AAAaAA……」


「さすがに、横っ腹斬られたぐらいじゃ倒れてくれないか」


「ハイアンデッドは、アンデッドが強い魔力を浴び続け蓄積されて一つ高位の存在になったものです! 魔力があり続ける限り、傷を延々と修復していきます……」


「倒す方法は?」


「修復できないぐらい、一気にDEATH!!」


なるほど、エリシアが時間を稼げといった理由が分かり、俺は再度迫りくるアンデッドに対し切りかかる。


「了解だ!」


火力に関して言えば、ドラゴンを握りつぶしたあの魔法を見れば心配など必要はない。


ただ、エリシアを信じて彼女を守ればいいだけだ。


「AAAAAAAAAAAAA!」


怒声を上げながら、今度は標的を俺に変えて走り寄る。


動きこそ鈍重であるが。


「げっ!?」


その刃の一撃は重く、何よりも斬ってもひるまないその突進に、次第に受けることが困難になる。


これが……殺し合い。


いかに魔法の力で戦えるようになったからとはいえ、命のやり取りは俺の精神をガリガリと摩耗させていく。


気が狂いそうなほどだ。


【AAA!!】


不意に、アンデッドが距離を取る。


「リューキ様!」


ステータスを見ると、選択されているのは冒涜的な触手。


効果のほどは知らないが、ろくなスキルじゃないことは確かだろう。


「ちぃっ!」


故に、正直怖いがエリシアを狙わせるわけにはいかないため、俺は真正面に走ってそのスキルを妨害する。


「ああああああああああああああああ!」


スキルが発動されると、同時にアンデッドの体から黒い霧が放たれ、その霧が触手のようになって俺へと走る。


その光景は、まるで遺体から寄生虫が這い出ているようで気持ち悪い。


「狙いは……リューキ様とエリシアさんです!」


「させるかよ!」


ミユキの言葉に、俺はアンデッドのもとまで駆け寄り、すぐさま戦闘スキルを発動する。


【一閃!!】


放つは、渾身の横一文字。


スキルにより放たれた一閃は、ただの一撃とは異なり、すんなりとアンデッドの横腹へと食い込むと。


「だあああああああああああああああああああ!」


アンデッドの体を両断する。


【GUU!】


「おぉ!? すげえ!」


体勢を崩したアンデッド……やはり両断ともなると損傷が激しいためか、触手の形をしていた黒い霧は、一斉に切り口へと集まり、分かたれた体をつなぎ合わせ始める。


「スキル、キャンセルされました……!」


両断されたハイアンデッドは、一度動きを止め、体の修復にその黒い霧を集中させ。


同時に。


「リューキ! 離れて!」


その隙を狙っていたのか、ミユキの声がダンスホール内に響き、俺は反射的に後ろへと下がると。


【ジャイアントグラップ!】


レッドドラゴンを倒した時と全く同じ、巨大な巨人の腕が地面より生え出でて、ハイアンデッドを握りつぶす。



―――――――――――――――――――――

【リューキ】LV1 職業 NEET 称号 竜狩り


筋力  6

体力  5

信仰 11

敏捷 10

運   1

―――――――――――――――――――――

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