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 32. 観念しました!

男の声が辺りに木霊す。


「あれってやっぱり俺達の事かな?」


「主様諦めましょう、私達の他に気配はないですよ。」


さて、どうしたものか選択としては・・・。


1.素直に出ていく。 2.このまま隠れて様子を見る。 3.ミーナを囮にする。


向こうに気配もしくは魔力を完全に察知出来る奴が居ると手詰まりだが、さっきのサクのくしゃみに反応しただけなら、まだ回避の芽は残っている。


「おいっ、そこにいるんだろ! 早く出てこいっ!」


男が更に声のボリュームを上げる。立っている場所から考えると、教員の一人だろう。


先日の3コ―3年からの攻撃、俺の事を調べているキョウヤという人物の問題も解決していないし、魔王さんからの目立つなという指示も考えると、やっぱり1以外の選択だよな。


「クロ、ワカ、サク中に戻ってくれ。ミーナ、一旦この場所を離れるぞ」


「セイ様、私はどうしたらいいですか?」


今自分が足手纏いになると言う事が分かっているのか、いつになく真剣な表情で指示を仰ぐ。


「最初から何でも出来る奴はいない、俺もまだまだ出来る事は少ない、ミーナはとりあえず経験していれば良い。経験して糧にしろ。さしずめ今は逃げる隠れるという事を経験しようか。」


ミーナの腰に手を回し、抱き抱えると体制を整える。


「出て来ないなら引きずり出すぞっ!」


向こうが何をする気か分からないが、わざわざ待ってやる義理も無いので、腹ばい状態のミーナを起こすと、口元に指を一本立て移動する方向を指差す。ミーナの頷きを確認し態勢を低く駆け出し隣の棟へ飛び移り様子を伺う。


こちらが別棟に移り身を潜めると同時位か、先程居た所に声を張り上げていた男性教員が姿を表し、辺りをキョロキョロと見渡している。

どうやら、サクのくしゃみに反応しただけで魔力の感知や追跡等は出来ない様だ。

一通り辺りを確認すると、教員は小首を傾げフッと姿を消す。


「まだ気を抜けない状態だが、何とか見つからずに済んだな。」


「セイ様、緊張で心臓バクバクしてます。なんだか、孤児院時代に皆で夜中調理場に氷砂糖を探しに行ったのを思い出しました。」


「別に見つかった所で命を取られる訳じゃないんだ。まぁでも、この緊張感の繰り返しで成長するのかもな。しかし、やるじゃないか孤児院時代はもっとされるがままのイメージだったから見直したぞ。焼き菓子とかじゃなくて、氷砂糖を探しに行くあたりは何て言うか悲しいけどな。」


えへへ、と笑みをこぼすミーナ。


教員をまいたのはいいが、肝心の敵と思わしき影がここからだと見え難い。

かと言って、教員は居なくなったがすぐに動くのも時期尚早だろうな・・・。


「もう少しだけ待ってから、正門が見える別の場所に移動しよう。」


町の外に敵が迫っているとは言え、俺達が敵ではないと確認した訳じゃない。

さっきの教員が自分の行動に自信があるのなら、敵ではないと確認するまで警戒している筈。

ならば、教員の姿が消えて時間が経ったとはいえ、同じ場所に戻るのは危険だろう。


もう良いだろうと、さっき同じ様に身を屈め屋根と屋上を伝い、別の場所に移動し正門を確認する。


「そこまでだ。」


不意の声にビクッと体が震える。

辺りに魔力の反応は無い・・・いや、無かったと言うべきか。

迂闊だった。教員は俺達の更に後方から俺達を監視していた様でなかなか良いスピードで俺達に向かって来る。


逃げるか? 全力で逃げれば、数秒もしないうちに振りきれるだろう。

相手が敵ならばその一択だろうが、ミーナの足に施している魔力がどれ位もつかも分からないし、月明かりに照らされ制服も教員には見えているだろう。

逃げた所で、最終的にバレる可能性が高い。後でバレた方が同級生やここに居ない生徒にも知られる。

ならば、ここで大人しく掴まり、興味本位で等と言い訳でもした方が良いだろう。


「すみません、セイ様、私がお荷物名ばかりに・・・。」


ミーナが申し訳なさそうに呟く。


「いや、俺のミスだ。ミーナが気に病む事は無い。」


男性教員が俺達の前に到着する。


「ん? なんだ、お前か。」


俺の顔を確認すると、教員が俺の事を知っている風な言葉を発した。


「俺の事知ってるんですか?」


「いやいや、学院でお前の事知らない教員の方がおかしいだろ。まぁ、良いとりあえず下に降りるぞ。」


教員に続き下に降りる。


「悪くない判断だったが、経験の差が出たな。俺が消えてすぐに動かなかった点、元の所に戻らなかった点は評価に値するが、もう少し周りに気を配る事だな。」


正門に向いながら、男性教諭が声を掛けて来る。


「先生、でも、周りに魔力の反応は無かったんですけど?」


「なんだお前魔力感知も出来るのか?」


しまった・・・、疑問を考えなしにぶつけてしまった。

マズイというのが顔に出てしまったのか、教員が言葉を続ける。


「そんな顔をするな。秘密にしていたのなら別に言いふらしたりはしない。それにな、モンスターには魔力に反応して攻撃してくる奴も居る。そんな時の為に魔力を察知されない方法もいくつかある。覚えておけよ。」


授業でもするかの様に教員が話す。

しかし、敵が迫って居るというのにえらく落ち着いている。


「あの、先生ぇ・・・。」


「ほら、着いたぞ。」


気になったので聞こうとしたが、どうやら集合場所に着いてしまったらしい。


『セイ君!?』


見知った顔が一斉に声を上げるの見て、男性教員が驚く。


「何だお前、綺麗所ばかりと知りなのか!?」


キョウコ先生が近寄り声を掛けられる。


「セイ君にミーナさんもどうしたの~? こんな所で、寮で待機のはずでしょ~?」


「あぁ、いや、何と言うか興味本位で・・・。」


「もう、ちゃんと指示を守らないと先生困るよ~?」


キョウコ先生の横からさっきの男性教員が口を挟む。


「いや~、キョウコ先生の生徒は元気があって宜しいですね。男の子はこれ位やんちゃな方が将来楽しみですよっ! それに判断もなかなかイイ線いってますし、即戦力としても問題無い位ですよ。」


「すみませ・・・んぐっ。」


キョウコ先生と男性教員に頭を下げようとした時、何かに引っ張られ、急に息苦しくなる。


「セイ君、大丈夫か? 怪我してないか? おねぇちゃんに会いたかったの?」


レプト先輩に抱き締められる。凛とした先輩から、徐々におねぇちゃんモードに変化する。むしろこっちの方が首等へのダメージが大きい様な気がしてならない。


「レプト様、セイ君窒息しますよ?」


横からエル先輩が口を挟み、レプト先輩の拘束が弱まった隙にまた何かに引っ張られる。


「レプトさんもエルさんも引っ込んでくれるかな? 先にセイ君に唾付けたの私なんだけど?」


最悪な事にナキアに抱き締められる。


「ちょ、ナキアっ、誰がっ・・・んーっ!」


俺の口を塞ぐように自分の胸に押しつける。


「ナキア、君のお父上の事は知っている。だが、学院ここに居る以上私達と同じ立場だな?」


「えぇ、そうよ? セイ君にの言ったけど、アイツはアイツ私は私ですよ?」


「それを聞いて安心した。悪いが、私の・・セイ君返して貰おうか? どう見ても嫌がっている様にしか見えないぞ。」


「何が安心したのかしら? もしかして、力尽くなら私に勝てると思っているのかしら?」


「あぁ、そうだ。可愛い弟の為なら、サタナ=プート貴女に勝つなんて造作もない。」


「何が可愛い弟よ、貴女の妄想に付き合わされる方が、セイ君が可哀そうだと思わないのかしら?」


「あぁ?」


「んだぁ?」


レプト先輩とナキアが額を付け睨みあう。


「はいは~い。そこまでね~、喧嘩ならちゃんと手続きしましょうね~。とりあえずセイ君は担任の私が預かるから~早くセイ君と遊びたかったら、アレさっさと片付けましょうね~。」


襟元を掴まれキョウコ先生に引き剥がされる。


さっきの男性教員が咳払いを一つして、指示を出す。


「良く分からんが、話は付いた様なので続けるぞ~、重複するが相手はゴーレム4体、危険度は不明、術者も不明、額の文字の頭文字を消すのが定例となっている。チーム編成はいつも通り3年コースチーム、5年コースチームでいく。ゴーレムのパワーは危険度に関係なく非情に強いから潰されない様に、以上。」


男性教員が話し終わると、キョウコ先生が補足の為口を開く。


「教員はいつも通りフォローに回るから、思いっきりやる様にね~。」


『はいっ。』


「セイ君とミーナさんは先生と一緒に見学ね~。」


モンスター相手の実戦を間近で見れる。ミーナにも良い勉強になるだろう。

戦ったこのと無いゴーレムというモンスターに疼く気持ちを押さえ、キョウコ先生と行動を共にする。


かくして先輩達による、ゴ―レム討伐戦が開始される。

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