28. 教えました!
「悪い悪い、他の奴の的狙う訳にはいかないだろ? って言うか分かってるならイチイチ確認しなくても良いだろ。」
「それはそうかもしれないですけど、演習場でセイ様に聞くとご迷惑になると思って、我慢してたんですっ。でも、狙うにしても壊さなくても良いじゃないですか。どうやったの? とか、何の魔法使ったの? とか、もう一回見せて〜とか大変だったんですよ!」
「言い訳を考える良い練習になっただろ?」
よっぽど大変だったのか、ゲッソリとしたミーナが肩を落とす。
「それより、今日レプト先輩とエル先輩と買い物だろ? 用意は済んでるか?」
「は、はいっ。セイ様に気に入って貰える様な可愛いのを選んで来ます。」
「じゃあ、ちょっと待っていてくれ。キョウコ先生の所に行ってくるから。」
ミーナに待っているように告げ、職員室に向かう。キョウコ先生の用件は分かっている、今日の事にも関係するため少し急いだ。
職員室の扉を開け、いつもの様にキョウコ先生を呼ぶ。
「はいはーい、ここに居ますよ~。」
今日は職員室で問題ないと分かっている為、いつもの返事が返って来るのを確認し先生の元へ向かう。
「待ってたよセイ君。はい、じゃあこれね。とりあえず、2つに分けてあるからこっちは保管してね。普段使うのはこっちね~。」
一通りの説明を受けると、キョウコ先生にお礼を言って教室へ戻った。
「あれ? セイ様早かったですね?」
いつもはキョウコ先生の所へ向かうと、割と話し込んでしまうので、ゆっくりと待っているつもりだったミーナが驚いている。
「頼んでおいて先輩達を待たせる訳にもいかないだろ。そうだ、忘れない様に先に渡しておくぞ。」
俺はポケットから一枚のカードを渡す。
「セイ様これは?」
「支払い用のカードだ。それを受け取りに職員室に行っていたからな。それにある程度金を入れてる、まぁ足りないと言う事は無いと思うから、これで払って来い、ついでに先輩とお茶でもして来ると良い。有意義な話をして貰えるかもしれないぞ。そうそう、買い物に付き合って貰うんだ、ちゃんとそのカードで奢るんだぞ。自分から言いにくかったら、俺に言われたからとでも言っておけば良い。」
ミーナのカードを持つ手が震える。
「私、初めて支払い用のカードなんて見ました・・・。こ、これってどれ位お金が入ってるんですか?」
まぁ、実際俺もこんなカードがあるなんて知らなかったんだけどな。
「ん~、良く分からん。ここの入学金分位入ってると思うけど?」
ここの物価なんて知らないので、要り物があるからとキヨウコ先生に伝え、足りない事が無い様に入れておいてくれと頼んだ。確かそれ位入れてると言っていたはずだ。
「にゅ、入学金分!? セイ様っ! 下着はそんなに高くありませんよっ!?」
「ん? そうなのか? まぁ、全部使えと言ってる訳じゃない、必要な分だけ買って、お茶して帰って来いと言っているだけだ。足りるんだろ?」
「足り過ぎですっ! 逆にこんな大金持ってるとドキドキして心臓に悪いですよ・・・。」
「それ位慣れろ。これから先、高額商品を買う時お使いも出来なくなるぞ? あっ、それとな、本当はもっと早く言おうと思ってたんだが・・・。」
周りには誰も居ない事を確認済みだが、念の為ミーナの耳元で小声で話す。
「俺、魔族側の人間なんだ。」
「へっ?」
「だから、俺は人間だけど魔族側に属しているんだ。」
二人の間に数秒の沈黙後が流れる。
「えぇぇぇぇっ! モゴモゴッ。」
予想は出来ていたので、素早くミーナの口を塞ぐ。
少し落ち着いたを見計らって手を離す。
「小声で話せ、分かったか?」
コクコクと頷くミーナ。
「まぁ、詳しい話は買い物から帰って来て話すとして、何故このタイミングで話したか分かるな?」
「も、もしかして先輩も・・・。」
ミーナが恐る恐る言葉を発する。まぁ、半分正解だがそれでは不十分だ。先輩たちに無礼があっては不味い為ちゃんと事実を伝えておく。
「ミーナ、これで俺の秘密の一つを知った訳だが、碧の契約は覚えているな?」
「はい、分かってます。何があろうとセイ様の為に生きると決めています。」
「んで、先輩なんだが・・・、あっと、その前に口を塞いでおけ。―――先輩達は正真正銘の魔族だ。」
「!?」
まぁ、口を塞げと言った時点でネタばれしている様な物だが、実際聞くとそれなりにビックリはするみたいだ。
俺の秘密を知り、ボンヤリとした契約という楔が現実味を帯び気が引き締まったと言った所か、ミーナの顔が少し大人びる。
「ときにミーナ。」
「はい。」
「ちょっと立ってみろ。気をつけっ! 休めっ!」
手を太もも横にぴったりと付け直立不動になった後、次の掛け声で足を開き腕を後ろに組む。
休めの状態になっているミーナの周りをくるりと回ると、正面に立ちおもむろにしゃがみ込む。
制服のスカートの端を摘むと、上へ向けめくり下着の確認をする。
「ふむ。」
顎に手を置き、目の前にあるクタクタの下着をマジマジと見た後、生地を触る。
「ひぃゃっ!」
何をされているのか気付き、咄嗟にスカートを押さえ、足を閉じるミーナ。
って言うか触るまで気付かなかったのかよ、と思ったがまぁいい。
「もうっ! セイ様っ!」
「ん? どうした? ミーナの恥ずかしい所はほぼ見たんだ、今更恥ずかしがる事は無いだろ?」
「ボロって分かっていて、見られるのは流石に恥ずかしいですよっ! しかも明るいし・・・。一応女の子なんですよ。」
俺は立ち上がると、ミーナの腰に手を回す。
「え? せ、セイ様・・・誰来ちゃいますよ・・・。こんな所で・・・んっ。」
ミーナの腰に回した手でお尻を掴み少し揉む。
次にくびれたウエストを両手で押さえ、最後に胸を掌で包む。
「ふむ、ミーナちゃんと食ってるか?」
「しよ、触診ですか・・・。」
「お前に近接戦闘は望んで無いが、遠距離からの攻撃をするにしても、しっかり体を作っておかないと強力な魔法にも体が耐えれないし、俺の実験にも耐えて貰わないと困るからな。そこら辺も先輩に相談してみるといい。」
「白兵戦より、セイ様の実験に耐える方が大変そうな気がするのは気のせいでしょうか・・・。」
とりあえず今日必要な伝えるべき事は伝えたので、先輩達と待ち合わせをしている下駄箱に向かう事にした。
下駄箱付近には先輩たちの姿はまだ無く、靴を履き替え外で待つ事にした。
「ミーナ、何か聞えないか?」
「え? んー言われてみれば、何かボソボソ聞こえますね。」
先輩達かと思い、声のする方へ向ってみると、人目を避ける様に2つの人影があった。
近寄ると声色がはっきりとし、先輩ではないと分かったので邪魔をしちゃ悪いと思い、立ち去ろうとした瞬間その言葉は耳に飛び込んで来た。
「・・・はい。・・・そうです。・・・セイです。」
先にミーナの口を塞ぎ、身を潜める。
木の影に隠れ目を凝らすと、見知った顔があった。・・・ナオだ。
もう一人は見た事が無い。制服からすると3コ―の生徒である事は分かるので、2年か3年か・・・。
「座学ではそこそこ知識がある様です。後、魔法に関してなのですが、特有の魔法を使うのか詳しくは分かりませんが先生は機材に影響を与えると言ってました。」
「そうか・・・、それで、実戦の方はどうなんだ? 今日から実技の授業だったんだろ?」
「それが、授業中ずっと演習場をフラフラしては先生と話しているだけで、全く魔法を使わなかった様でした。私も模範生徒として3コ―と5コ―の生徒に教えていまして・・・。」
「そうか、模範か・・・。いや、良くやってるな偉いぞ。これからも何かあれば報告してくれ。後、授業頑張るんだぞ。」
「はいっ、お兄様っ!」
そう言うとナオは男に抱き付き、頭を撫でられている。
「おにぃ様・・・か。」
俺の事を話している以上、ここで気付かれては面倒事になるのは必至なので、今日の所は俺の事を調べているもしくは監視している奴が居る事。その一人がナオである事が分かっただけでも良しとし、ミーナの口を塞いだまま、下駄箱の方へそっと戻る。
「ぷはっ、セイ様、・・・たまに手が鼻まで塞がれて、・・・死ぬかと思いましたよ。」
ポンポンとミーナの頭を撫でなから、さっきの男に付いて考える。
ここ最近の状況を考えれば、あの男は3コ―の3年生である可能性が高い。
俺の出身やアスタ、そして魔族についてではなく、この学院に入ってからの俺個人について調べ、報告を受けている様子だった。
キョウコ先生にちょっと聞いてみるか。




