17. 娘に会いました!
「それで先生、こんな回りくどい事をして、話って何ですか?」
「そんなに警戒しなくても~。体育館でも言ったけど、私は君達の味方のつもりなんだけどなぁ~。ちなみに、アスタちゃんとも仲良しだよ~。」
アスタというフレーズにピクリと反応してしまう。
「あははっ、本当にアスタちゃんが大好きなんだね~、いいなぁ~こんな可愛い子に慕われて。」
「先生、ちょっとバカにしてます?」
「素直に羨ましがってるんだけどな~。魔族の話しをする時は出来るだけ、私はこの方法を取ります。争いも終わってるし、最悪学校側にバレるのは良いんだけど、ほら、ナオさんみたいな人も居るからね。一応先生としては、中立で居ないといけないのよ。」
「先生はどうして、魔族側を庇うん何ですか?」
「んー、それは話すとちょっと長くなるから、また今度ね。とりあえず今日は、私がセイ君達の味方って事と、・・・復讐は考えない事の念押しをする為に呼んだの。アスタちゃんの話と、今日の君の魔力を見る限り、君を抑えられるのは教員でも、限られた人が数人掛りになると思うし、一応ここ学校だから生徒を消されると困るのよね~。」
「消されるとね、分かりました。もしも戦闘になりそうな時は先生の言う通り、手続きを踏んでやります。」
それだけ言うと、席を立とうとする。
「セイ君、今日の事で分かってると思うけど、スクちゃんの言葉・・・忘れない様にねっ。」
そこまで知っているのかと一瞬ギョッとするが、それ位魔族側と繋がっているのかと思い直しハイハイ、と手をヒラヒラさせ返事をし、生徒指導室を後にする。
「全く、アスタちゃんも大変な子を拾っちゃったね~、どう育つか楽しみではあるけどね~。」
キョウコ先生は、俺が去った後もニコニコ顔を崩さなかった。
全く、あのキョウコって先生はどういう立場なんだ? スクさんの言葉も知ってるし、俺と一緒と考えて良いのか? 良く分からんが、前途多難な気がする・・・。
「あっ、セイ君! 奇遇だねっ!」
あー、忘れていた、こいつもグレーゾーンの悩みの種だった・・・。
「奇遇じゃねーだろ? なんで待ってたんだ?」
俺の言葉を聞きしょんぼりと、肩を落とすミーナ。
「やっぱり、私迷惑ですか?」
さっきの震えながらも俺を止めようとしたミーナの顔を思い出し、言葉を改める。
「いや、迷惑とかじゃ無くて、何て言ったら良いかな? 素性とか良く分からないから、警戒してるだけだ。」
[[主様、警戒とか言うと、余計に怪しいですよ?]]
あー、もう、ミーナと居ると調子が狂う・・・。
「セイ君っ! 自己紹介しますっ! 名前はミーナ、孤児院育ちです。座学は苦手、魔力はそこそこです。セイ君とお友達になりたいですっ!」
「何か、お前キャラ変わってるぞ、もっとオドオドキャラだっただろ?」
「セイ君を待ってる間に、練習しました。」
大きなため息を一つ吐き、質問を続ける。
「何で俺に構う?」
「優しくしてくれたからです。」
「そんな事した覚えはない。」
「席を教えてくれました。」
「それだけか?」
「あっ、あと、頭ポンポンしてくれました・・・。」
「席教えたのは、たまたまだろ? ミーナが違う場所に居たら、違う奴だった訳だし。 気まぐれで教えただけだ。」
「はいっ! 気まぐれで、たまたまです。だからっ、運命ですっ!」
(アスタと会えたのは運命だねっ!)
昔の記憶がフラッシュバックする・・・。
・・・いや、俺とミーナは違う、自分を重ねるな。
感情に流されそうになった自分を自分で戒める様に言い聞かせる。
グレーゾーンから抜けた訳じゃないが、まぁいいか、魔族に仇なすと分かれば覚悟を決めるだけだ・・・。
「はいはい分かったよ、お友達ね・・・。じゃあ帰るぞ。」
「はいっ。」
校舎を後にし、寮に向かい二人で歩き出す。
「なぁ、友達って、手でも繋いだ方が良いのか?」
「い、いえ、それはまだ、早いって言うか・・・恥ずかしいです。」
友達って難しいな・・・。
寮で先輩によるオリエンテーションの時間も近いので、少し急ぐ事にした。
寮に着くと、一階のロビーに先輩と思わしき人物が立っており、生徒達が集まっている途中だった様なので、慌てて合流し列に並ぶ
「よーし、全員集まったか? 俺は3年のジンだ。一応寮にもルールがあるから、伝えに来た。出来るだけ守る様にな。」
「セイ君、ルールって言ってるけど、何だかあの言い方だと緩いね。」
「あぁ、そうだな。」
ジンと名乗った3年生が話しを続ける。
「もう皆知ってると思うけど、1階はロビーを除けば、全て男子の部屋になっている。2階はまだ鍵が掛かっている思うが、談話室や簡単なジム、大浴場がある。部屋のシャワーと違い、使用時間が決まってるから守る様に。後、大浴場の掃除は使用の有無に関わらず、ちゃんとグループを決めて全員がやる事、シャワーしか使わないから、掃除しませんは無しだからな。」
知らない声が質問する。
「先輩、女子の方が人数少ないんですけど、掃除する回数が多くなるのは仕方ないですか?」
「女子の大浴場の方が少し狭く造られてるから、回数が多いのは我慢してくれ、男子に掃除さても良いなら別に構わないぞ? そこらへんのルールは決まって無いからな。」
この言葉を聞き、「えー」「やだー」とお決まりの声が飛び交う。
「続けるぞ、3階は女子寮になっている。一応言っておくが、男子は招かれても無いのに、行くなよ~つるし上げられるからな。招かれても、行けば間違いなく噂になるから、家柄等で立場上困る奴は止めておけよ~。」
周りが思春期特有の変な盛り上がりを見せる。
「特に女子でこの先ギルドに入る事を考えてる者、パーティーを組めば、自分以外全員男と言う事もあるからな、ちゃんと自衛の意識を持つ事。それも兼ねて、男女同じ寮になっているからな。」
『はーい。』
女子が声を合わせて返事をする。
「全体説明としては最後だが、門限は一応夜の10時だ。但し、課外授業等で遅くなった場合や、担任の許可があった場合はオッケーだ。消灯時間は決まって無いが、各自授業に影響が出ない様にしっかり睡眠は取る事、以上だ。女子は、ナキアから少し説明がある様だから、2階に移動してくれ。」
忘れたくても忘れる事が無いであろうその名前に反応する。
さっきから喋らず、ジンの隣に立っている女は付き添いか何かと思っていたが、まさかこうも早く会う事になるとはな・・・。
こちらが名前に反応した瞬間に、向こうも1年の反応に注意していたのか、チラッと視線を動かした。
「君がセイ君かな?」
多分、俺とジンと言う奴しか反応出来なかったであろう。
つい今し方までジンの横に立っていたナキアが、次の瞬間には俺の目の前に居る。
「・・・お前が、娘か?」
「こらこら、先輩にはちゃんと、敬語を使わないとダメでしょ? 礼儀を知らない悪い子はこうだっ!」
俺の頭を両手で掴むと、自分の大きな胸に押しつけ、胸で挟むように抱き締める。
急な事で周りは一瞬静寂が流れるが、ジンはやれやれと頭を抱え、男子生徒からは嫉妬の眼差し、女子はキャーキャーと騒いでいる。
俺はナキアを引き剥がし、何のつもりだと問う。
「何って、こういうのは早い者勝ちでしょ? 強い雄はす~ぐ誰かに持って行かれちゃうからね。今はあの人も居ないし、他の子が手を出す前に、私のモノにしておこうかなって。」
ナキアと呼ばれた女がチラッとミーナの方に目をやりニコッと笑う。
「いや、私のモノってなんだよ、今会ったばっかりだろ? それにアンタはアイツの娘だ。」
「君がそんな事言うかなぁ? 既に一人落としちゃってる様だけど、それに、私は君の事ちゃ~んと聞いてるから全然問題無しよ? それに、君を怒らせたあの人と私は切り離して考えてねっ。私は私、ナキア=プートだから。その内逢い引きしましょうね~。」
終始笑顔を絶やさず言いたい事を言うと、キャーキャー言う女子を連れてニ階へ向かう。
「・・・何が「その内逢い引きしましょうね」だよ。」
ニ階へ向かうナキアを見ていると、肩をポンと叩かれる。
「君も厄介な奴に目を付けられたな・・・。」




