16. 注意されました!
バチンッ! バチンッ!!
怒りによる魔力の上昇で八雷神が意図せず反応し、辺りに雷光が走る。
[ワカっ! 本気で魔力吸ってる? このままじゃ、ちょっとマズイよ!]
[[本気で吸ってるわよ! 言いだしたの私なんだしっ!]]
体育館に集まった生徒の悲鳴が測定会場に響く。
俺が触れていない測定器も含め、並んだ5台の計測器は999999、つまりエラーを弾き出している。
当のナオは、俺の一喝に尻もちをついたまま動かない。
急な高魔力に中てられ、麻痺でもしているのだろう。
ナオに向い歩みを進めようとした時、何かが俺の腕にしがみついてきた。
「セ、セイ君、落ち着いてっ。」
今にも泣きそうな顔をしたミーナが、ガクガクと震えながら声を出す。
ミーナに気を取られていると、ガラッ! っと体育館のドアが勢い良く開かれる。
「何事っ!?」
キョウコが異変に気付き、走って来たようだ。
元凶であろう俺の姿を見るなり、頭を抱えている。
右手の人差し指と中指をこめかみに当て、左手の人差し指と中指をこちらに向けている。
何かしらの攻撃で俺を止めようとしているのか? 少々の攻撃なら耐えられる自身はある、問題無い。
ナオを挟みキョウコに向かって身構えると、頭の中に直接キョウコの声が聞こえる。
「セイ君、聞えますか?」
急にクロとワカ以外の声が頭に入り、ビクッとする。
「聞えている様ね、セイ君、とりあえず落ち着いて魔力を下げなさい、これ以上続くと問題を揉み消せなくなります。そうしたら、アスタちゃんが、悲しみますよ。私は貴方達の味方です。悪い様にはしません。」
キョウコのあの体制に、頭に響く声、間違いなくキョウコが直接俺に思念を送っている。
アスタが悲しむと聞き、ふと、さっき教室でアスタとキョウコが話していた事を思い出し我に返る。
気持ちを落ち着け少しずつ魔力を収束させていく。
俺が魔力を下げていくのを確認し、キョウコがパンパンッと手を打つ。
「はいは~い、皆落ち着いて~。セイ君も大丈夫? どこか悪い所は無い?」
「・・・はい。」
「ナオさんも大丈夫ですか?」
キョウコの声に我に返ったのか、ナオが素っ頓狂な声を出す。
「ひ、ひゃい。」
キョウコは周りを見渡し、教室に居た時と変わらず笑顔で言葉を続ける。
「はい、じゃあ魔力測定が終わって無い人は終わらせましょうね~。セイ君とナオさんはちょ~っと、職員室に来てね。」
「・・・わかった。」
「・・・はい。」
キョウコの抜けた様な声に落ち着きを取り戻し状況を確認する。
周りの生徒達が俺を見る目を見て、やっちまったと再確認した。
それに、未だ足をガクガクと震わせながら、腕にしがみつくミーナにも悪い事してしまったと反省する。
「ミーナ、・・・ミーナっ。」
「は、はいっ!」
少し呆けていたようだが無理も無い。
あの状態の俺に触れていたんだ、尻もちをついたまま動くことすら出来なかった奴よりは、多少なり影響が出てもおかしくない。
「わ、悪かったな、・・・怖かったか?」
「え、えへへ、だい・・・じょうぶ・・・です。」
どうみてもカラ元気といった作り笑顔を俺に向ける。
ミーナの引き攣った笑顔に口元が緩みそうになった。
「じゃあ、俺職員室行って来るから。」
「あっ、はい、お気を付けて。」
「あっ、あぁ、気を付けるけど、・・・離して貰っていいかな?」
そう言われ、ミーナは自分が俺の腕にしがみついている事に気付いた様で、慌てて両手を離すが足に力が入らず、ヘナヘナとその場に座り込む。
ポンポンとミーナの頭を叩き職員室に向かった。
[主~っ、勘弁してよ~、もう、魔力でお腹いっぱい~。]
[[そうですよ、ゲフッ・・・、失礼しました・・・、全く、主様があの場で全員消し飛ばすつもりで力を使ったのなら止めはしませんが、あの場の全員を・・・いや、あのナオと言うクサレビッチすら殺すまでは考えて無かったでしょ? 私達八雷神は主様の忠実な僕ですが、主様が不利な状況に陥る位なら、ちゃんと説教しますからねっ!]]
クロとワカにも迷惑かけたな・・・ワカの言う事には、全く反論の余地が無い。
あれだけ魔王さんにも、スクにも注意されてたのになぁ、あの時キョウコが来なかったらと思うと、ゾッとする。
[主ぃ~、もっと気楽にいこうよ。まだ始まったばかりなんだし、ねっ!]
職員室に着くまで、ワカの説教とクロ慰めを交互にされながら向かった。
ガラガラ―――扉を開け、職員室に入る
「失礼しまーす。」
「おぉ、彼か、さっきのふざけた魔力は。」
「入学そうそう元気一杯だな。」
「うふふ、大物ルーキーね。」
思っていたのと違う言葉が、知らない顔の人達の口から洩れる。
「セイくーん、こっちこっち。」
ミーナと話している間に、先に着いたキョウコとナオが話しをしていたようだ。
「話しは魔力測定中の職員から聞きました。ナオさん、あなたの信仰は素晴らしい物です。ですが、人を貶めるのは信仰とは違いませんか?」
「・・・すみません、言い過ぎました。」
「セイ君も、怒るなと言われても確かに無理な状況だったかもしれませんが、関係無い人に危害を及ぼしたら大変でしょ? 魔術学院での戦闘は、ちゃんとした手続きをすれば公式に出来ます。頭に血が上った状態ではもどかしいでしょうが、これからはそれを利用して下さいね。 セイ君の魔法は機材に影響を及ぼすから、あんまり機材の近くでは無暗に使っちゃダメよ?」
先程までの甘ったるい様な喋り方ではなく、ハキハキと注意をするキョウコ先生の言葉に素直に頷く。
「はい、・・・へっ?」
「ほら、魔力測定器がエラー出てたでしょ? 最新機器だから壊れなかったけど、古い機材だったら壊れる事もあるからね。セイ君は後日別で魔力測定しますからね。」
先程叩きだした魔力を機材のエラー、キョウコ先生が俺にだけ見える様な角度でウインクする。
魔法で故障させた事にしようとするキョウコ先生の意を汲み、話しを合わせた。
「はい、お説教終わりっ。これからは仲良くね~、って事で2人供、明日から3日間寮で謹慎ね~。」
「「マジ(ですか)!?」」
ニコニコとするキョウコの顔を見る限り、本気の様だ。
「今日の授業後、生徒指導室に来てね。」
職員室を去ろうとした時、キョウコ先生が耳打ちしてきた。
教室に戻り、本日のガイダンスや、オリエンテーションを淡々とこなす。
キョウコのあっけらかんとした態度や、俺の魔法が機器に影響を与えると言うやった本人が言うのも何だが、無理矢理だなと思う説明で、先程取っていたナオの悪態も手伝い生徒達から特別危険視される事も無かった。むしろ数人は凄かったなと、逆に話しかけて来る奴も居た。
大して気にはしなかったが、入学早々の騒動で少数ずつだが俺側に友好的な奴と、ナオ側に友好的な奴が出て来た。
今日のカリキュラムが終わり席を立つと、隣から俺を呼ぶ声がする。
「セイ君、・・・あの、一緒に帰らない?」
ミーナが話しかけて来る。
「わりぃ、生徒指導室に呼ばれてるんだ。それに、明日からいきなり謹慎だからな・・・。」
「そ、そっかぁ。・・・いってらっしゃい。」
少し寂しそうにミーナが手を振る。
しかし、ミーナはどうして俺に構う? あいつも魔族関係か? いや、それならアスタに何らかの報告が来ている筈だし、それとも、ナオの様に反魔族勢力が俺と同じ様に力を隠して近づいて来ているとか?
腕組みし、ウーンと悩みながら、生徒指導室へ向かった。
生徒指導室には既にキョウコ先生が着いており、言われるまま向かの席に着く。
「セイ君、聞える? 聞えてたら足をもう少し前に出して。」
席に着いた途端体育館と同じ様に、頭に直接声が届く。
足を少し前に出すと、キョウコの爪先に当たる。
「これで、セイ君の声も私に届くから、思うだけで大丈夫よ。」
こんな事で、本当にキョウコに声が届くのだろうか?
「こーらっ、先生を呼び捨てにしないのっ!」
「本当に聞えているんだな、逆に下手な事は考えられないって事か・・・。」
「あのねぇ・・・セイ君、下手な事って・・・。」
キョウコが何とも言えない困った表情を見せた。




