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達観した女神

もうあんな

狂おしい感情になるのは

嫌なんだと


人気(ひとけ)の少ないあの日の昼下がり


メキシカンハンバーガー店で

腰を下ろして彼と向かい合った瞬間に

そう思ったんだ




嫌なんだ


いつも仲良くしていたいんだ


彼の一挙一動と周りの様子に過敏になって

荒れ狂いながら大波をおこすのは


もう嫌なんだ




まるで嵐が過ぎ去った後かのような私達は

メニューを覗き込み合い、吟味する


そこで先に

辛味のあるハンバーガーを選んだ彼


私もそれに惹かれたけれど

味を交換し合いたかったから

なんとなく違うものを選んだ




私は彼が好きで

彼は私が好きで


同じ感性を持ち

同じ悪さを秘めている




メキシカンな店員さんの手で運ばれてきた

彼の辛味のあるハンバーガーを

一口頬張らせてもらった時


「やっぱりこっちの方が美味しかった」

なんて思ってしまった自分がいて

心の中で笑った




何事にも動じない

何事にも揺らがない

達観した女神のような彼女になれないものか


現実世界でやるべきことをこなしながら

美しいものを愛で追求して生み出し

彼には癒しのオーラを放つ


一体何をどうしたらそうなれるんだろう




彼は「美味しい」と

笑顔を滲ませていた


ここはきっと

彼好みのお店だろうなって

思ってたんだ


私は「良かった」と

辛味のない方のハンバーガーを

頬張りながら嬉しくなった




達観した女神


それはおそらく

悲しい意味で言うと


甘えることを諦めた

クールな傍観者なんだろう

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