59/135
夢と恋、そして連弾
「離れるべき相手」
というカテゴリー
多くの人が容易に判断できることが
私には出来なかった
なぜならその相手は
人として男性として
知的さと誘惑の配合が
素晴らしく
気まぐれな私の言動に対して
大きな両の手で包み込むかのように
根気強く付き合ってくれて
そして
私の前で素直に笑ってくれた
あの日
私たちが共に眼差しを送ったのは
ビルの窓際、開かれた空間で催された
ピアノによる小さな演奏会
深い緑色のドレスを身に纏った女性と
漆黒のタキシード姿の男性が
ピアノの椅子に並んで腰掛け
二人は息を合わせ
肩と腕が微かに呼応するかのように
指先を鍵盤に踊らせた
『連弾』
私たちは
その降り注いでやまない
流れ星のような旋律に
心を乗せ
想いを馳せ
自然と互いの指先を絡ませた
間違いなく
二人の深い心の動きは
その指先を通じて共有され
それはほとんど等しいものになり
私たちは
お互いが離れることが出来ない存在なんだと
天にも届くかのような崇高な演奏に
思い知らされた
本当は
夢と恋どちらかを
選ぶべきなのに




