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黄色い表紙

ついに私の人生で

いくつかの本に人の影が宿り始めた




今日は極々稀に生じる

緩めた歩みで書店をまわるという

自分時間dayだ


目星をつけている数人の作家の本の

背表紙にあるタイトルを吟味しながら

ようやく気になったものを本棚から取り出し

それなりな感じの表紙を眺めた


「これにしようかなぁ」


そんな心の独り言を浮かべながら

隣の棚にからだの向きを変えると

平積みにされている数々の本の中から

身に覚えのあるタイトルの黄色い表紙が

目に飛び込んできた


「これは……」


今はもう別々の地で

別々の理想を掲げた

輝かしい大人の青春を共に駆け抜けた

あの子が当時読んでいた本だ




『本当に楽しかったよ』


とドアノブに手をかけたままこぼした

あの子のその言葉には

突然別れの挨拶を告げに来た私に対して

本音を伝えてくれたとしか思えなかった




だってあの日々は魔法がかっていたから


共に一生懸命戦って

共に抜け穴を見つけ出して

私たちは年甲斐もなく笑い合って走った


ただ彼女は芯の部分は真面目だったし

私は見かけよりも奔放だった




彼女は今日もきっと

少し薄暗い自然光の部屋で

温かな空間を創り上げているだろう


私は今日も変わらず

洒落たBGMの中、紙ストローをくわえ

少し歪んだ創作物を生み出していた

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