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風の君臨Ⅱ タイムトラベル? 時間を超えた想い  作者: 竹宮 潤


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祭典

 アルシノエとアーセネイユは、ジュイ・エメロードと彼女のプロデューサーであるマイシーと会って、計画を持ちかけた。もちろんアルシノエの身元は伏せてあるのだが、アーセネイユが前に「うちのボスは宗能力者」と明かしていたので、話は支障なく進んだ。アルシノエ自身もぬかりなくアオのリングをはめて、シンプルなひわ色の片まといの上着姿、髪の色も普段より青を濃い目にして、ミトラ王とは気づかれないようにしている。

「グァダンの会場の手配はどうしますか?」

― どこが使いやすい? 大きくて大勢入れるところをどこでも押さえることができるけど。

 グァダンの施設は体の大きい低重力な惑星の人々を基準に作られている。もともとが大きいのだ。ヴァンセルガの住民なら、相当な人数が収容できるだろう。その人々を引き付けられるような特別なイベントが必要なのだ。

「つまり、そちらでやっていただけるということでよろしいのですね。」

― そう。お願いしたいのは数万人を動員できる音楽イベントを早急に企画してほしい、ということだけです。人の輸送、物資・機材の輸送や調達はすべてこちらで便宜を図ります。

― 必要ならリゼア系の後援で、と明示してもいいと思いますが、どうでしょう。

アーセネイユがアルシノエに尋ねる形で提案する。

― あまり前面に押し出されても困るけど…もともとリゼア系は音楽に無関心な文明だし。

「だからこそ、今回の後援に名前を入れることは意義があるかもしれません。何よりこちらとしては同業者に話を持ち掛けやすくなりますもの。」

と、マイシーは乗り気だ。

「そうよ、リゼアの方々がバックについているフェスなんて最高。特別席を作って何人か見に来ていただくというのはできないかしら。音楽業界はリゼアの方たちの関心が低いせいで、他の芸術より肩身が狭いんですもの。」

フレミーも珍しく力説する。

― そうなの?

今度はアルシノエが聞く。

― はは…、僕みたいなのは例外中の例外ですから。確かに共感応球で加工される映像メディアなんかに比べたら、音楽だけっていうのはリゼアじゃ認知度低いです。

― 最悪、沈黙塔置いて、アバター体に座っていてもらえばなんとかならない?

 アルシノエがアーセネイユだけに聞こえるように絞ったテレパシーで尋ねた。アーセネイユはため息交じりに答える。

― それは失礼ってもんですよ、王。観客がどうしても必要なら、興味のあるリゼア人を僕の方で集めますから。

 

 後援にリゼア連合の名を入れた、ほぼ無料の音楽フェスは、開催発表と同時に瞬く間に話題になった。出演者に有名な音楽アーティストを集めただけでなく、交易都市間の協力協定で戦場となるかもしれないヴァンセルガの住民への優先滞在が認められたからである。グァダンだけでは第2第3の立体映像会場を作っても収容しきれず、ディクラはじめいくつかの交易都市でも同時開催会場を作った。みなリゼアの立体映像の臨場感を知っているので、本会場でなくてもあまり文句は言わない。また交易都市そのものが商業・観光で成り立っているので、たくさんの人間の移動は商機と見なされ、どこも歓迎ムードなのだ。肝心のヴァンセルガの住民にしてみれば、ついでの観光旅行もできてほぼ無料なのだから、行かないという手はなかったのだった。

 必要なのはヴァンセルガからの申し込みは優先で遠いグァダンへ出し、すぐには帰さないことだった。フェスは2日間続くことになっていたが、ヴァンセルガから行く人々には3日前からの移動と宿泊の無料クーポンが出されることになった。費用はリゼア連合が出すことになっているが、実質だしているのはアルシノエだ。

― これでヴァンセルガの人口が半分以上減ります。残っているのはテュアルズ関係者とその出入り業者くらいです。

― いいわね。そのテュアルズの動きの方は?

定例の朝の報告会の場であった。 イクセザリアが答えた。

― カシャの宇宙エレベーターや人工衛星に示威飛行をしているだけ。まだ攻撃はしてない。カシャ防衛軍は直にヴァンセルガまで航行できる戦艦を次々発射した。でもたった4隻。防衛軍といったって、皆宇宙戦に慣れてない。このまま本当に戦争したら、間違いなくテュアルズの勝ち。

― 宣戦布告したところですぐに戦闘が始まるわけではないようですね。というのも、例の人工衛星の墜落に関しては、エルデン教のお告げがなかったのですよ、王。

と、サグが思いがけない話を始めた。

― エルデンシティに実害がないからじゃない?

― 確かにそういう見方もできます。でももしヴァンセルガ側がエルデンシティを攻撃対象としないなら、カシャ防衛軍はどう見るでしょうか?

 エルデンシティが安全となれば、カシャの他の場所の人々が避難してくるだろう。そしてそれは取りも直さずどちらの軍からも格好の標的になりうるということなのだ。カシャ防衛軍だって聖都が滅亡すれば新都市建設の大義が立つ。エルデンは裏切り者だと叫べばすむことだ。

 そして一旦はエルデンシティの攻撃をしないことにしていたテュアルズ側だって、いよいよとなれば、人口のあふれかえった聖都は魅力的な攻撃目標になる。市長が何を言おうと、戦時下で行動力があるのは文民ではなく軍だ。

どっちに転んでも、エルデンシティはあの大地震のときの二の舞になる…!

― そうか、ヴァンセルガじゃなかった…、守るべきはエルデンシティのほうなのよ! 


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