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2人の出会い (蓮視点)

薄暗い雨雲が空を覆い、ポツポツと水滴が落ちてきた放課後。

高校2年生の僕佐藤蓮は、昨日のお使いの途中で見つけた廃墟に立ち寄っていた。

僕はワクワクしながら廃墟を探索していると奥の暗がりから、あってはならない「生々しい異音」が響いてきた。


「ひっ……う、あ……やめて……離して……っ!」


「へへ、静かにしろよぉ……。誰も来ねえよ、こんな場所。お前みたいな可愛い女子高生が、こんな雨の日に一人で歩いてるのが悪いんだよぉ……」


部屋の奥、埃まみれのブルーシートの上。

そこにいたのは、見るからに小汚い、不潔な身なりの肥満体の男だった。脂ぎった顔に、だらしなく伸びた無精髭。執拗に、怯える少女の手首を地面に組み伏せ、その上に覆い被さろうとしている。

誘拐、あるいは拉致。

少女の制服のブレザーは引き裂かれ、男の汚い手が彼女の肌へと伸び、ふしだらな行為に及ぼうとしたその瞬間。


(……最悪だ。なんでこんな日に、こんな奴がいるんだよ)


一瞬にしてワクワクした気分が冷めた。


(関わるな、今すぐ回れ右をして逃げろ、通報だけして終わりにしろ。)


厄介事から全力で距離を置きたい僕の防衛本能がそう告げていた。だが、男の暴力に恐怖し、涙を流しながら絶望の淵に立たされている彼女を見て放っておけなかった。


「おい、何してんだよ」


「あぁ!? なんだお前、ガキが——」


男が忌々しそうに振り返り、立ち上がろうとした瞬間。

僕は迷わず、男の股間をめがけて、全体重を乗せた容赦のない前蹴りを叩き込んだ。泥沼の喧嘩になったりするのは一番御免だ。だから、確実に一発で終わらせる。

グシャッ。


「ぶふぇっ……!??!?」


鈍い音が部屋の中に響き渡る。

男は白目を剥き、言葉にならない悲鳴を上げてその場に崩れ落ち、気絶した。


「……はぁ。最悪だ、お気に入りの靴が汚れた」


僕は小さくため息をつき、転がっている男を無視して、ブルーシートの上でガタガタと震えている、同じ高校の制服を着た少女へと歩み寄った。


「大丈夫……じゃないよな」


少女——白百合奈緒は、完全にパニックに陥っていた。

あまりの恐怖に「はっ、く、ひゅ……っ、あ……」と激しい過呼吸を起こしている。瞳の焦点は定まらず、涙がボロボロと溢れて止まらない。

僕は自分の通学カバンを床に置き、着ていたブレザーを脱ぐと、彼女の小さく震える肩にそっと被せてあげた。

そして、彼女の視線に合わせるように、その場に屈み込む。


「大丈夫。もうあの男は動かないから。ゆっくり息を吸って、吐いて。……僕の真似をして。すう、はあ……」


「ひゅ……あ……っ、う……」


「大丈夫、大丈夫だから。ここにいるのは僕だけだから。ほら、ゆっくりね」


これ以上事態を大ごとにしたくない僕は、とにかく彼女を落ち着かせることに集中した。焦らすことなく、極めて冷静に、静かな声をかけ続ける。震えている彼女の手に、驚かせないように、そっと上から包み込んだ。

どれくらいの時間が経っただろう。

雨の音だけが響く部屋の中で、僕の声を道標にするように、彼女の呼吸が少しずつ、少しずつ整っていった。


「……落ち着いた?」


僕が尋ねると、彼女は涙に濡れた長い睫毛を揺らし、ゆっくりと僕の顔を見上げた。

その瞬間だった。


「……あなた、は……」


「僕は佐藤蓮。今から警察を呼ぶから安心してくれ。」


警察を呼ぼうとする僕の服の裾を、ギュッと握りしめた。


「……蓮、くん……」


彼女は頬を赤く染めながらそう呟いた。

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