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淡々史記  作者: ンバ
第八十六 刺客列伝
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34/274

荊軻 十六、二人目の刺客

32.

其明年,秦并天下,立號為皇帝。於是秦逐太子丹、荊軻之客,皆亡。高漸離變名姓為人庸保,匿作於宋子。久之,作苦,聞其家堂上客擊筑,傍偟不能去。每出言曰:「彼有善有不善。」從者以告其主,曰:「彼庸乃知音,竊言是非。」家丈人召使前擊筑,一坐稱善,賜酒。而高漸離念久隱畏約無窮時,乃退,出其裝匣中筑與其善衣,更容貌而前。舉坐客皆驚,下與抗禮,以為上客。使擊筑而歌,客無不流涕而去者。宋子傳客之,聞於秦始皇。秦始皇召見,人有識者,乃曰:「高漸離也。」秦皇帝惜其善擊筑,重赦之,乃矐其目。使擊筑,未嘗不稱善。稍益近之,高漸離乃以鉛置筑中,復進得近,舉筑樸秦皇帝,不中。於是遂誅高漸離,終身不復近諸侯之人。


(訳)

その翌年、秦は天下を併呑し、

秦王政は立ちて皇帝(始皇帝《しこうてい》)と号した。


ここにおいて、秦は

太子丹・荊軻の賓客を駆逐し

彼らはみな亡《ほろ》びた。


(荊軻の親友であった)高漸離《こうぜんり》は

姓名を変えて人の傭保《ようほ》(雇われ人)となり、

宋子《そうし》に隠れ住んで労役に出ていたが、

しばらくの間は苦労が絶えなかった。


主家の堂上にて客が

筑を撃っているのを聞くと

居ても立っても居られず、

いつも口を出していた。


「かの(演奏は)善い点も有るが

善くない点も有る」


従者はそれを主人に告げて言った。


「かの傭保は音楽がわかるらしく、

密かに是非を論じております」


家の丈人(家長)が高漸離を召し出して

目の前で筑を撃たせたところ、

一座は「素晴らしい!」と称え、酒を賜った。


高漸離は久しく隠遁して

困約したり、畏縮していても

きりの無い事だと考え、

かくて退出すると

匣《はこ》の中の筑と善い服を装着し

容貌を改めて(皆の)前へ出てきた。


坐客はみな驚き、

坐を下りて対等の礼を行い

高漸離を上客と為した。


筑を撃たせて歌わせたところ、

流涕《りゅうてい》せずに去って行った客は無かった。


(高漸離の評判は)

宋子の人々に伝わり、

彼は客として迎え入れられた。


秦の始皇帝はこの事を聞くと

高漸離を召し寄せて見えたが、

人々の中に彼を識《し》っている者がおり

このように言った。


「あれは(荊軻と仲の良かった)高漸離だ」


始皇は高漸離が

善く筑を撃つ事を惜しみ

彼を重んじて赦したが、

(自分に危害を加えぬように)

その視力を奪った。


筑を撃たせてみると

称賛せぬ者は一人もおらず、

始皇はだんだん彼を近付けるようになった。


高漸離はそこで

筑の中に鉛を仕込んでおき、

再度近付く機会を得た際に

筑を振り上げ、始皇に殴りかかったが

命中しなかった。


こうしてとうとう高漸離も誅殺され

始皇は終に諸侯(外国)の人間を

近付けようとしなくなった。


(註釈)

荊軻もまた高漸離《こうぜんり》の知己。


秦の天下統一が成った後は

隠遁していた高漸離でしたが、

彼のような才人が市井に

埋もれているままのわけがなく、

筑の名手として再び脚光を浴びます。


服装を正してみんなの前に出てくるとこ

少年漫画っぽくてステキ!

落ちぶれていた前作主人公等が

復活して手を貸してくれる感じの……。



その噂は

「始皇帝」となった嬴政の耳にも届き

召し抱えられるようになります。


「あいつ、荊軻の親友だったヤツですよ。

仇討ちを目論んでいるのでは……?」


と諫言する者がいましたが

始皇は高漸離の筑の才能を

消すには惜しいと考え、

命は奪わず、彼の目を潰しました。


視力が利かなくても

ちゃんと演奏できるのがすごい。


高漸離の名演奏に気を良くした始皇は

だんだん彼を近付けるようになり、

高漸離は始皇を討つ好機と見て

筑に鉛を仕込みます。


筑はしゃもじみたいな形状をしてるので

鉛の仕込まれた状態でフルスイングすれば

十分に人を殺せる威力になりそう。


ふたたび謁見の機会を得たときに

決行に移した高漸離でしたが

あえなく失敗……!


無為に時を過ごすよりも

荊軻との友情の為に散った高漸離、

彼もまた烈士であります。


秦舞陽と組ませるくらいだったら

高漸離が一緒に来てくれたらなぁ。


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