荊軻 五、傍若無人
21.
荊軻既至燕,愛燕之狗屠及善擊筑者高漸離。荊軻嗜酒,日與狗屠及高漸離飲於燕市,酒酣以往,高漸離擊筑,荊軻和而歌於市中,相樂也,已而相泣,旁若無人者。荊軻雖游於酒人乎,然其為人沈深好書;其所游諸侯,盡與其賢豪長者相結。其之燕,燕之處士田光先生亦善待之,知其非庸人也。
(訳)
荊軻が燕へと渡ったとき、
燕で狗の屠殺に従事し、
また筑(打弦楽器)の名手でもある
高漸離という者と親愛になった。
荊軻は酒を嗜んでおり、
毎日、狗を屠殺しては
(高漸離の仕事を手伝いながら?)
高漸離と燕の市で酒を飲んだ。
酒が酣となると
(酔いが回ってくると)
高漸離が筑を撃ち、
荊軻がそれに合わせて
市中において歌った。
互いに楽しみ、終われば泣く有様は
傍らに人がいないかの如くであった。
荊軻は酒飲みと交遊してはいたものの、
その人となりは沈着深慮で書を好み、
歴遊した諸国の間では、
賢者・豪傑・長者の盡くが
荊軻と互いに交誼を結んでいた。
燕へ行った際も、
燕の処士・田光先生に厚遇され
その非凡さは知れ渡っていた。
(註釈)
《《周りに人がいないかのよう》》に
飲めや騒げや泣けや歌えやの
大騒ぎをしていた荊軻。
これが「傍若無人」の語源です。
もうちょっと印象的な場面で
出てくるのかと思ってたんですが……。
現代だと「横暴」とほぼ同じニュアンスで
使われますが、人目を憚らない行動
全般に当てはまる言葉って感じですね。
傍目から見ると遊んでいるように
見える荊軻ですが、
その価値を認めている友人も数多。
見る人が見ると違うんです。
次回からやっと
嬴政(始皇帝)が絡んできます。




