老子 一・二、龍の如き男
晋書や三国志は
興味の有無が極端なので
順番がめちゃくちゃになってますが、
史記は特に好きな人物いないので
順番通りにやろうと思います。
列伝一が伯夷・叔斉
列伝二が管仲・晏嬰ときて、
三巻には老子・荘子・申子・韓非子です。
特に老子と荘子は重要そうですね。
読んでいきます。
1.
老子者,楚苦縣厲鄉曲仁里人也,姓李氏,名耳,字耼,周守藏室之史也。
(訳)
老子は、楚の苦県厲鄉曲仁里の人である。
姓は李、名は耳、字は耼、
周の守藏質の史だった。
2.
孔子適周,將問禮於老子。老子曰:「子所言者,其人與骨皆已朽矣,獨其言在耳。且君子得其時則駕,不得其時則蓬累而行。吾聞之,良賈深藏若虛,君子盛德容貌若愚。去子之驕氣與多欲,態色與淫志,是皆無益於子之身。吾所以告子,若是而已。」孔子去,謂弟子曰:「鳥,吾知其能飛;魚,吾知其能游;獸,吾知其能走。走者可以為罔,游者可以為綸,飛者可以為矰。至於龍,吾不能知其乘風雲而上天。吾今日見老子,其猶龍邪!」
(訳)
孔子が周へ向かい
老子に礼について問おうとすると
老子は言った。
「子が言う所の者は
その人と骨はいずれも已に朽ちて
その言のみが在るにすぎない。
かつ、君子はその時を得れば則ち
駕(車駕に乗る高貴な身分)となり、
その時を得られねば則ち
蓬累して行く(あちこち彷徨う)もの。
吾はこう聞いている、
『良賈(よい商人)は
藏を深くして空虚の若くで
(良い品は仕舞い込んで
店は空のように見せる)
君子は盛徳にして
容貌は愚者の若くである』
子の驕る気持ちと多くの欲望、
態とらしい態度と
淫らな意思を取り去れ。
これらは皆、子の身にとっては
無益なものだ。
吾が子に告げる所以は
このような事のみだ」
孔子は去り、弟子に対して謂った。
「鳥が飛べる事を吾は知っている、
魚が泳げる事を吾は知っている、
獣が走れる事を吾は知っている。
走る者は網を、泳ぐ者は綸(釣り糸)を、
飛ぶ者は矰を用いる事ができるが
風雲に乗って天に上る龍に至っては
承知していない。
吾は今日老子に見えたが
彼こそはあたかも龍のようではないか」
(註釈)
老子の本名は李耳らしい。
孔子(孔丘)や荘子(荘周)みたいに
姓+敬称じゃない。
後漢書孔融伝では、
孔子の子孫の孔融が
李膺に面会を求めた時
老子(李姓)と孔子が話したことを
引き合いに出してた。
孔子と老子の対談は
お金が取れそうな豪華マッチング。
この会見は、孔子がまだ
30代の頃らしいが、老子は
「驕氣」「多欲」「態色」「淫志」
を捨て去れ。君にとって
それらは何の得もないからだ。
それしか言うことはない。
と述べている。
老子の目から見たら、孔子すらも
俗だっていうのか。
感銘を覚えた孔子は、弟子たちに
「老子は龍のようだ」と語った。
鳥・魚・獣は陸海空の生物を挙げて
万象に例えようとしたんだろうけど
その枠組みに嵌まらない例外が
存在するという驚きに繋げている。




