晏嬰 一・二、危言危行
続いて晏嬰。
斉は管仲と晏嬰が二大巨頭です。
1.
晏平仲嬰者,萊之夷維人也。事齊靈公、莊公、景公,以節儉力行重於齊。既相齊,食不重肉,妾不衣帛。其在朝,君語及之,即危言;語不及之,即危行。國有道,即順命;無道,即衡命。以此三世顯名於諸侯。
(訳)
晏平仲嬰は萊の夷維の人である。
斉の霊公・荘公・景公に事え
節倹と力行を以て斉で重んじられた。
斉の相となった後でも
食事に肉を重ねず、妾に帛を着せなかった。
朝廷に在る時は、主君の言が彼に及べば
そこで言葉を危しくし、
及ばなければ、そこで行いを危しくした。
国に道義あらばそこで命に順い、
道義なくばそこで命を衡った。
この事から三世代、
諸侯の間で名声を彰らかにした。
(註釈)
姓は晏、諱は嬰、字は仲、諡は平。
晏嬰のほか、晏子でも変換されるので
どちらかの呼び方が一般的なのかな。
管仲はどこか俗っぽい現実主義者でしたが
晏嬰はステレオタイプな人格者っぽい。
晏嬰の時代ごろになると
陳からの亡命者の系譜である田氏が
力を握っており、そのうち
姜氏に代わって斉を治める事になります。
2.
越石父賢,在縲紲中。晏子出,遭之涂,解左驂贖之,載歸。弗謝,入閨。久之,越石父請絕。晏子懼然,攝衣冠謝曰:「嬰雖不仁,免子於緦何子求絕之速也?」石父曰:「不然。吾聞君子詘於不知己而信於知己者。方吾在縲紲中,彼不知我也。夫子既已感寤而贖我,是知己;知己而無禮,固不如在縲紲之中。」晏子於是延入為上客。
(訳)
越石父は賢者であったが
縲紲(捕まった罪人)の中に在った。
晏嬰は外出の途上で彼に遭遇すると
左の驂を解放して
越石父の罪を贖い(馬車に)載せて帰った。
(晏嬰は)言葉を交わさぬまま
閨房へ入ったが、
ややひさしくてから
越石父が絶交を申し出てきた。
晏嬰ははっと驚いて
衣冠を攝る(整える)と、詫びて言った。
「嬰は不仁ではあるが、
子を縄から解き放ったというのに
どうして子はここまで早急に
絶交を求めるのだ?」
越石父は言った。
「そういう事ではありません。
吾は、君子が己を知らぬ者を斥けて
己を知る者を信じると聞いています。
まさに吾が縲紲の中に在ったとき
彼(捕まえたやつ)は我を知りませんでした。
そもそも子は感じるところがあって
我が罪を贖われたのでしょう。
これは、子が吾を知る者という事ですが、
知己であっても無礼であれば、
はじめから縲紲の中に在った方が
よいというものです」
晏嬰はこうして
越石父を招き入れて上客とした。
(注釈)
罪人となっていた越石父を助けた晏嬰。
しかし、帰り道から閨に入るまで
全く口をきかなかったので
越石父にげんめつされた。
越石父
「やつらは私を知らないから捕えた。
あなたは私を知るから助けた。
あなたは私の知己だけど
こういう無礼なふるまいをする人に
助けてもらうくらいなら
牢屋にいた方がましです」
晏嬰
「私はなんということを。
反省します、ここに留まってください」
越石父を助けた時点でもう
ええ事したったぞー、という気になってた。
越石父にしてみると、
晏嬰がサヨナラホームラン打って
勝利投手になれるところだったが、
彼がいい気になって
ベースを踏み忘れてるのをみて
「何してんだこいつ」と言いたくなった。
そんな感じだと思います
(ぜったいちがう




