金庫
般若は停めてあった車のトランクを開け、アタッシュケースをしまい込む。
そして、パンダからノコギリのようなものを受け取り、それも入れる。
「ほら、乗れ。」般若が言う。
般若、ピエロ、パンダ、キツネは、黒い車に乗り込む。
運転席は般若。助手席にはピエロ。後部座席の左側にパンダ、右側にキツネ。
4人は、フードを取り、仮面をはずした。
般若の仮面をしていた者の名は、アルグレート。
ピエロの仮面をしていた者の名は、イージス。
パンダの仮面をしていた者の名は、ウォーズ。
キツネの仮面をしていた者の名は、エーデル。
アルグレートが、車のエンジンをかけ、発車する。
「今回の依頼人、腕だなんて、めずらしいわね。」
エーデルが言った。
「大体は、目とか、脳みそとか、そういうのが多いからな。変わった依頼人なんだろ。」
ウォーズが言う。
「まあ、そもそも、お金を払って人体の一部を欲しがること自体、変人だけどね。」
イージスが笑いながら言った。
それもそうか、とエーデルとウォーズが笑う。
「今回の依頼人は、大手パソコン会社の取締役の息子だ。そいつには恋人がいて、交通事故でなくなったんだと。でも、その恋人のことが忘れられなくて、若い女の左腕を依頼してきたんだ。自分と手を繋げるようにな。」
アルグレートが、今回の依頼人について説明する。
「あら、なんだ。意外とまともな人なんじゃない。愛する人の代わりの身体の依頼なんて。」
エーデルは感心した表情で言う。
「まともか?」とウォーズが聞く。
「ちょっと前の依頼なんて、愛人に金持って逃げられたのに、愛人のことが忘れられなくて、女の胸とあそこを依頼してくる変態がいたじゃない。それに比べれば、ずっとましよ。」
エーデルが答える。
「あとは、目を食べてみたいっていう欲望があるやつとかいたよね。想像するだけで、吐き気がする。」
イージスが怪訝そうに言った。
「そう言われると、今回の依頼人がまともに思えてくるところが怖いな。感覚が麻痺してくる。」
ウォーズは呆れている。
「前回の依頼の、脳みそを直接目で見てみたいとかの理由のほうが、よっぽど健全よ。」
エーデルが言う。
「健全……ねえ。」とウォーズは苦笑いする。
「健全かどうかはどうでもいいが、脳みそとかの依頼が多いと、その分報酬も弾む。俺としては助かるな。」
アルグレートは淡々と言った。
「今回の、腕は、いくらなのかしら?」エーデルがウキウキして尋ねる。
「8千万だ。8千万。」アルグレートが答える。
「あら、そう、ちょっと少なくないかしら?」エーデルは不満げだった。
「でもまあ、腕ならそんなもんか。」ウォーズはそこまで、金額を気にしなかった。
「前回の、脳みその報酬は4億だっけっか。」イージスが聞く。
「そうだ。今日、帰ったら山分けだ。」アルグレートが言う。
その言葉に、エーデルは嬉しそうに鼻歌を歌う。
4人の乗る車は、街の中を抜け、森の近くの廃墟へと近づいていた。
その廃墟が、4人のアジトだった。
「ついたぞ、降りろ。」
アルグレートはエンジンを止め、車を降りる。そして、トランクから、アタッシュケースを取り出す。
そして、血のついたノコギリのようなものを、ウォーズに渡す。
アルグレートは、アジトに入り、まっすぐと冷蔵庫の方へ向かう。冷蔵庫を開け、女の腕を中に入れる。取引は明日なので、それまで傷まないように保管する。
ウォーズは、武器を地下室までもっていった。アルグレート達が犯行に使う武器はすべて、地下室に保管していた。地下には、ターゲットを捕獲するための檻や、手枷、足枷もある。
「じゃあ、早く、前回の報酬、分けちゃいましょうよ。」
全員が集まってすぐ、エーデルは言った。彼女はお金に目がない。
「ああ、わかったよ。」
アルグレートは金庫に向かう。
エーデルもその後ろにピタッとくっつくように、ついていく。
イージスとウォーズも少し遅れてついてくる。
アルグレートは金庫の鍵を開ける。そして、扉を開く。
中を覗き込んだアルグレートは、目を見開き、叫ぶ。
「ない! お金が、ない!」
アルグレートの発言を聞いた3人は、驚き、叫ぶ。
「お金がないってどういうことよ!」
「なんで金庫にあるはずのお金がなくなるんだよ!」
「そんなはずはない。確かにここに入っていた。おい、俺に確認させろ。」
ウォーズは、金庫の中を確認する。
金庫の中には、1枚の札束も入っていなかった。




