般若。ピエロ。パンダ。キツネ。
残虐な描写があります。苦手な方はご遠慮ください。
女は路地裏の暗く細い道を走っている。ヒールのカツカツという音が周囲に響き渡る。20代前半の女が着ている白いブラウスは、汗で透けていて、中にきているピンク色の下着が少し見える。
女は途中で足をくじいてしまい、その場に倒れこむ。女の綺麗な黒髪は、昨晩の雨で湿っている地面についてしまい、先端が汚れてしまう。女はすぐに顔を上げて立ち上がり、走るのには適していないパンプスを脱ぎ捨てる。素足になった女はまた、走り始める。くじいた足の痛みなど気にする余裕もなく、ただひたすら走る。
女は自分が今どこにいるのか、わからなかった。けれど、そんなことは関係なかった。とにかく”奴ら”から逃げなければいけなかった。
「はあ……っ……はあ……っ……。」
女は息を切らしながら走っている。体力の限界であったが、止まるわけにはいかない。女は走り続ける。
ある路地を曲がって進んだところで、女は立ち止まり、その場にへたり込む。
その先は行き止まりだった。女は絶望した表情を浮かべる。
必死に走り、”奴ら”から逃げる女に、神は救いの手を差し伸べなかった。
女の来た方向から、近づいてくる足音がする。
”奴ら”だ。
「はあ……ああああ……。」
女の心臓は破裂しそうなくらいバクバクと波打つ。
女は先日、同僚と話していた時の事を思い出していた。
「ねえ、知ってる? 今日も、発見されたんだって。死体。脳みそがなくなっていたみたいだよ。さっき、ニュースでやってた。」
「え、脳みそ……!? 嘘、怖いね。それもまた、”奴ら”の仕業なの?」
「警察は”奴ら”の犯行だとして捜査しているらしいよ。」
「”奴ら”かあ。あんまり情報は掴めてないんだっけ?」
「そうなんだよね。顔とか年齢とか何もわかっていない。被害者も、年齢とかバラバラだし、共通点はないんだって。だから警察も、特定できないんだってさ。唯一、分かっているのは、”奴ら”は、仮面をかぶった四人組だってことだけ。般若、ピエロ、パンダ、キツネ。不気味すぎるよね。結ちゃんも、気を付けなよ?」
女は、”奴ら”の姿が見えた瞬間、血の気が引く。
般若、ピエロ、パンダ、キツネ。
4人とも、黒いパーカーを被り、顔にはお面。ジーパンをはいている。
般若はアタッシュケースを持っている。
パンダの手には、ノコギリのようなもの。それには、うっすらと血の跡がついている。
”奴ら”は無言で女の前へと歩いていく。
女は、これほどまでにない、不安と恐怖で気を失いそうだった。
「今回は、大人しくて楽だねえ。」とピエロが言う。
「怯えてるんだろ、俺たちも大分有名になってきたからな」とパンダが返す。
女は震えて、頭を地面につけながら、必死に言った。
「お願いします……。助けてください……。お願いします。お願いします! 助けてください!」
女はの顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃになっている。
キツネが、女のもとにしゃがみ込み、言った。
「ほら、泣かないで。安心して。大丈夫よ。さぁ、顔をあげて。」
女は顔を上げ、真っ赤な目で、黙ってキツネを見る。
「私たちはね、あなたの命を奪いたいわけじゃないの。私たちが欲しいのは、あなたの腕よ。」
キツネがそう言った瞬間、女は、いやああああ、という叫び声をあげ、立ち上がり、逃げようとする。
けれど、全力疾走して、疲労している華奢な女を、抑えるのは容易なことであった。
いとも簡単に女は両腕を掴まれる。
右には般若、左にはピエロ。
「抵抗すると、余計にひどくなるぞ」と般若が言った。
その言葉に女は、ひっと声を上げ、大人しくなる。
「ほしいのは、右腕だっけ? 左腕だっけ?」とピエロが確認する。
「左だ。左。」
般若が答える。
「ほら、まず、そのシャツを脱いで地面にうつぶせになれ。」
般若が女に命令する。女は逆らうこともできず、黙って言うとおりにする。
シャツのボタンに手をかけ、ボタンをはずそうとするが、女の手が震えてなかなかはずせない。
「あら、上手く脱げないようね。私が脱がせてあげるわ。」
キツネが女の前にきて、かわりに女のシャツを脱がせる。女のピンク色のブラジャーが露になる。
女は何も言わず、うつぶせになった。
「じゃあ、俺、抑えとくわ」
女の上にピエロが跨るようにして、押さえつける。
女の右側には、指示をだす般若が、左にはノコギリのようなものをもったパンダが、女の頭の方には、キツネがいる。
上半身ブラジャー姿の女、その上にまたがる男、それを取り囲む3人。
傍から見れば、レイプ現場のように見えるであろう。
しかし、4人は女を襲い、レイプすることなどには、まったく興味がない。
4人が欲しいのはその女の腕だけ。それだけだった。
「ピエロ、まず、腕を折れ。その方が切りやすい。」
般若がピエロに指示をだす。ピエロは女の左腕を掴み、後ろへと持っていく。
「少し、痛いかもしれないけど。我慢してね。」とキツネが女に声をかける。
「歯、食いしばったほうがいいよ、じゃあ、いくよ。」とピエロが言う。
その発言を聞いた女は、咄嗟に歯を食いしばる。
ピエロが力を入れ、女の腕を、関節が曲がる方と逆方向に折り曲げる。
「あああああああ!」
女は悲痛の叫び声をあげた。
「じゃあ、早いとこ、腕、切れ」
般若は女の様子など気にすることもなく、淡々と作業を進めようとする。
「はいよ。ピエロ、女の腕離せ。俺が切るから。」
ピエロは女の腕を離した。女の左腕は、だらんと地面に落ちた。
パンダは女の腕にノコギリのようなものの刃をあてる。
「このへんでいいかー?」とパンダは般若に確認する。
「そこでいい。」
それを合図とするように、パンダは女の左腕を切り始める。
女は先程同様、叫び声をあげている。しかし、4人はそれをまったく気にしない。
女が暴れ、切る場所がずれないように、ピエロと般若がしっかりと女を押さえている。
女の抵抗も虚しく、女の左腕は切り落とされた。切り口からは血がどくどくとあふれ出している。
「任務完了だね!」ピエロはそう言い、立ち上がる。般若も押さえつけるのをやめ、女は解放された。
般若が、女の左腕を手に取り、パーカーのポケットから出した白い布で包み込む。それをアタッシュケースのなかに入れる。
「ああ、さっさと帰るぞ。」
般若がそう言い、歩き出した。それに他の3人もついていく。
4人の中で、女の方を振り返るものはいなかった。




