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闇の眼 光の手  作者: 碧檎
第一部 闇の皇子と世界の始まり
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第7章―2 密室で

 僕とレグルスは、別々に拘束されていた。 

 どうも僕は何かの標的になっているようだし、……かなり心細い。

 いったい何をされるんだろう……いい思いだって? 絶対逆の意味に決まっている。

 逆……って――ふいに浮かんで来たどす暗い想像にぞっとする。それは僕を心を萎縮させるのに十分だった。

 ……だめだ。頭を働かせろ! こんなところで足止めを食ってるわけにはいかないんだ。

 僕は自分を叱咤し、冷静になろうと大きく息を吐いた。

 頭を振ると、部屋を見回し、逃げる手段が無いか調べる。

 階段を降りたので、おそらく地下にあたるのだろう。部屋は薄暗く、窓は部屋の上部に一つだけ。換気のために開けられているような、頭が入るか入らないかの小さな窓だった。

 小さな暖炉があり、炎が赤々と踊っている。

 ……この火を消せば、煙突から出れないかな……。

 そんな風に思って、暖炉を覗き込もうとしていると、部屋の戸が開いた。

 あ、どうせならそっちから出たい――そう思って、戸の方を見ると、外には体格の良い兵士が2名。

 そして、赤い髪をした娘が部屋の入り口に立っている。

 娘だけが部屋の中に入ると、扉は再び堅く閉じられた。


 娘は黙ったまま部屋の隅にある寝台に近づくと、それに腰掛けて、僕を熱のこもった目でじっと見つめる。

 その大きな瞳の色は茶色。鼻筋が通り、唇はぽってりと肉厚。顔の作りはかなり派手だ。髪の色や目の色を見る限りどうやらシトゥラの血縁者と思える。おそらく歳は僕よりいくつか上だろう。豊満な体のラインがそれを物語っていた。

「…………」

 彼女は僕を見つめるだけで、一言も発しない。

 ……僕に、どうしろと言うんだ。

「君、誰?」

 僕は目を泳がせながらとりあえず聞いた。

「メイサ」

 落ち着いた感じのしっとりした声が部屋に響く。

 話は出来るようなんだけど、それ以降の会話が続かない。仕方なく僕は再び口を開く。この娘が味方なのか敵なのか、それさえ分からないのは、落ち着かない。

「君は、どうしてここに?」

 娘はふっとその顔に微笑みを浮かべると、僕を上から下まで舐めるように眺める。

「――あなた、今はまだ若すぎるけれど、あと数年待てば、きっといい男になるわ。うん、きっと、女で随分変わるタイプなんじゃないかしら?」

 答えにならない事をつぶやくと、メイサは立ち上がって僕の側にやってきた。ふわり、と甘い香りが鼻に届く。

 僕は圧迫感を感じ、思わず後ろへ後ずさる。

「男と女が密室でする事って言ったら、一つじゃなあい?」

 その美しい顔が、妖しく綻ぶ。

「!」

 僕はその瞬間一気に壁まで後ずさった。壁に激突し、酷く強く腰を打つ。衝撃で、一瞬息が止まった。生唾を飲み込むと叫ぶ。

「――なんで、僕と君がそんな事しなければならないんだ!!」

 カーラが言った言葉を思い出して、はっとする。――いい思いって、まさか、ソレ?

 おたおたと挙動不審な僕を前に、メイサは少々呆れたような様子だった。

「何も聞いていないの? ……あなたアルフォンスス家の者なんでしょう?」

 僕は叔母から聞いた話を思い出す。

 

 確か、僕は光の家の娘の力を制御することが出来ると――

 そのためには、娘と肌を重ねる必要があると――


 思い出し、いろんな事が繋がった。

 ということは、まさか――

「君は………僕に力の制御をさせようとしているのか……!」


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