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闇の眼 光の手  作者: 碧檎
第三部 闇の皇子と焔色(ほむらいろ)の罠
119/124

第12章―2

「皇子殿下、お待ちしておりました。こちらへどうぞ」

 騎士の言葉に僕は頷くと、用意された奥の部屋にまっすぐに向かった。ハリスの要塞。ハリス自体には街の様子を伺うため、去年から何度も足を運んだけれど、砦内部には、スピカが怪我をしたとき以来久しぶりに足を踏み入れた。

 ――懐かしい。

 ここは空気の臭いが独特だ。乾いた土の臭いと微かな鉄――血の臭い。それを嗅ぐといろんな思い出が次から次へと蘇ってくる。

 初めて来たとき、僕は15になったばっかりだった。命を狙われ、身分を隠して、レグルスとスピカに守られていた弱々しい子供の僕。

 スピカも性別を偽っていたというのに、自分の身ばかり心配していた気がする。女の身でどれだけ過ごしにくかっただろう。僕を守るために何も言わずに我慢していたはず。スピカの気持ちを考えると自分が情けない。

 部屋に着くと、僕は隅に据えられたベッドに腰掛ける。簡素な石造りの部屋を見渡してため息をつく。

 あの頃は今がずっと続けばと――皇子である事を忘れて、スピカやレグルスと一緒にずっとここで働いていければいいなんて思っていた。そのくらい穏やかで楽しい日々だった。でも、今はもうあんな風には戻れない。僕はやっぱり皇子だし、スピカがもしあのままただの友人だったらなんて……考えるのも嫌だ。――あの時はこんなに好きになるなんて予想もしなかった。

 今の僕が昔のようにスピカの隣に眠ったとしても、もう、きっとあれほどドキドキしないんだろうな。……というか、絶対我慢なんか無理だし、胸を高鳴らせる暇もなく腕の中に囲うんだろうけれど。そう想像して僅かに笑みがこぼれる。

 僕たちの間にはもう衝立もレグルスの牽制も無い。駄目だと思えばこその昂りだったのかもしれない。それか、僕がそれだけ未熟だったか。あれから二年ほどしか経っていないというのに……。今の僕と比べると、不思議だった。


 僕はエラセドに向かう途中だった。今度はルキアは置いて来た。さすがに子連れで行く訳にも行かず、サディラとシュルマごと叔母と父に任せた。

 父には結局思ったよりもたくさんの事を託してしまった。ルキアの事、それから母の潔白の証明と、僕の身の証。それに伴う貴族達の混乱を治める事。特にミルザの周辺で一部の貴族がこっそりと盛り上がっているのは、頭の痛い問題だったのだ。

 僕はその関係で、ハリスに着くなり、まず、牢に預けていた例の<証拠品>を引き取り、宮に届けることにした。本来ならば、ジョイア南端のガレから船に乗り、オルバースを介してアウストラリスに入国するのがエラセドへの近道だ。入国をハリス経由にしたのはいくつか理由があったのだけれど、その証拠品関係の処理も一つだった。

 それらを渡せば、僕が尋問するよりもきっと父が尋問する方がうまく行く。愛する妻・・・・の墓を荒らされたのだ。甘い僕には出来ない事も、の父ならばとことんやる。おそらく効率が違うだろうし、そもそも――この問題は、僕ではなく、父が解決すべき問題だった。僕には、僕のするべき事が別にある。

 それから、ハリス経由の行程にした一番大きな理由は、オルバースを抜けたくなかったから。ヴェスタ卿の支配下であるあの街を通るのはいろんな意味で危険を感じていた。足止めを食らう可能性――足止めだけですめばまだいい――を捨てられず、僕は遠回りをしてハリス経由で入国する手はずを整えていた。

 そして最後の理由は――

 扉が開く。衣擦れの音とともに近づいて来た影に向かって僕は尋ねる。

「レグルスは? ミアー」

「……地下の牢に軟禁させていただいています。ループスが見張っております」

 僕はため息をつくと立ち上がる。

 レグルスは絶対にジョイアに戻らないと言い張って聞かなかったが、ミアーとループスになんとかレグルスをハリスに連れて来てもらえないかと頼んだ。彼を動かすのが無理ならば、アウストラリスに入国後に僕が彼の元に向かうつもりだったのだけれど……

 僕はミアーを伴って地下に足を進める。かつん、かつん、と足下の石が音を立てた。道すがら再びミアーに尋ねた。

「どうやって連れて来たんだ? ジョイアに戻るだけでも面倒なのに」

「さすがに二対一でも真っ向勝負では無理なので……薬を盛りました」

 僕は目を見開く。そしてくすりと静かに笑うミアーに聞く。

「――例のお茶か」

「はい。隊長もさすがに精神的に限界だった様で、薬の効きがとても良かったのですよ」

 ミアーは否定せずに、しかも悪びれずに『薬』と認める。その様子に小さくため息をつきながら思い出す。僕も前に一度やられたんだった。あれは、確かに参っているときにはてきめんに効いた。……今更だから怒る気にもならないけれど。


 いくつもの階段を下り、辿り着いた地下の牢の前で、ループスがにこりと人の良い笑顔を見せる。

「ご苦労だった」

 声をかけると、「隊長を捜しに行かせていただき、本当にありがとうございました」と逆に感謝される。こんな事になっても、変わらず部下に愛されているレグルスが本当に羨ましい。

 牢の扉を開く。黴臭い臭いに一瞬息を止め、吐き出しながら燭台を目の高さに掲げる。――痩せたな。そう思った。

「……レグルス」

「…………」

 彼は石の床に這いつくばるように膝をついていた。肉の落ちた背中が、僕の声に僅かに震えた。

「無事で良かった」

「――申、し訳ありません。私は、あなたからスピカを奪っておいて、結局守れなかった。……でも、お願いです。これ以上アイツを追わないで下さい。前とは違います。今度あなたが追えば戦になる。私たちが消えれば・・・・、この『力』を巡った諍いは終わる。ジョイアもアウストラリスもそれで平和を取り戻します。――分かって下さい。スピカはあなたの重荷になる事だけは絶対に望まない。そして、多くの人の不幸の上にある幸せも望まない」

 僕の言葉を拒絶したまま、レグルスは床に頭をつけている。僕の赦しなど必要ないというような、頑な態度。彼は、スピカの罪を、全て負ってしまおうとしていた。最初から彼は、いざとなったらそうするつもりだったのだろう。彼の娘への甘さは、その覚悟があるからこそのもの。

 ――親として。親だからこそ持つ身勝手さで。彼はその手で二つの命を断つつもりなのだ。


『ああ、幸せが何かなど聞かないで下さいよ。生きていなければそんなもの、存在しない――』


 彼の口にした言葉が耳に蘇る。そう言った彼が何よりも大事な命を絶とうとするのは……それだけ彼の絶望が深いということだ。彼はスピカが幸せになることを既に諦めていた。彼の目には闇しか映っていなかった。スピカのために国を巻き込んでの争乱が起こる。そしてルキアの将来も未だ暗いまま。その状態で彼女がこれから僕の隣で生きていくのは、死よりも辛いと判断した。――それが今の彼の僕に対する評価。

 僕がスピカを苦しめた事は事実だ。だからそれもしょうがない事。分かっていても悔しくて、唇を噛み締めて俯いた。

 遠くで水の流れる音がする。その隙間を縫って、騎士達のかけ声が微かに響く。

 彼は答を待っていた。僕が『覇道』と『王道』のどちらを選ぶのかを。

 選ぶのは、『王道』。だけど、それはスピカを諦める事ではない。彼女を手に入れてこその王道を、僕は進む。

 首を小さく横に振ると前髪で遮ぎられていた視界が開けた。大きく息を吸うと、言葉が届くように祈りながら、語りかける。

「――レグルス。僕は戦はしない」

 金色の髪が微かに揺れ、レグルスがようやく僕を見上げる。緑灰色のうつろな瞳が僕を見つめた。

「スピカを捨てて下さるのですね」

「いや、スピカは諦めない」

「でも――」

 何を子供のような事を言っているのだと言いたげに、その顔が歪む。

「大丈夫。僕に任せて。――戦はしない・・・・・スピカは取り戻す・・・・・・・・

 その目をしっかり見つめ、言い聞かせるようにもう一度言う。レグルスの瞳の中で燭台の光が静かに揺らめいた。

「皇子――?」

 彼はまるで初めて見るような目で僕を見た。

「でも、僕一人ではそれは無理だ。頼む。スピカを取り戻すために――僕を助けてくれないか」



 レグルスを牢から出すと僕たちは皆でそろって僕の部屋へと移動した。そして用意してもらった食事を囲む。暖かく立ち上る湯気の向こうにレグルス、ミアー、ループスの顔を見回すと、あと一人の到着を待つ。

「お待たせしました」

 扉が開き、遅れて来たイェッドがレグルスを一瞥し、一瞬悩んだあと、彼の隣へと腰掛けた。

「……」

「……」

 間に会話が産まれる事も無く、二人は黙ったままだった。ミアーが立ち上がり、お茶を入れる音が部屋の隅から微かに聞こえて来た。

「じゃあ、始めるけど……食事をとりながらで良いかな」

 僕が沈黙を破ると、空腹だったのかイェッドが率先してパンを手に取る。レグルスがちらりと睨むと「毒味です」とあっさり言う。

「じゃあ、俺も」

 レグルスは小さく呟きながら、スープを一気に流し込む。食欲はあるらしい、というか空腹だったのはレグルスの方だったようだ。今までろくに食べられなかったんだろう。スープを音がなるほどに慌てて飲み込むその様子に安心しながら、僕もパンを手に取った。


「まず役割だ。イェッドは僕の付き添いを。ミアーとループスには引き続き護衛を頼みたい。で、レグルス――君は……時が来るまでここで待機していてくれ」

「待機?」

「シトゥラはきっと君を捜している。君にもし何かあれば、スピカが悲しむ」

 スピカの名に、その顔があっという間に歪んだ。痛みを飲み込むように喉を鳴らすと、淵の赤くなった目で僕を懇願するように見つめる。

「…… あいつは、おそらく、私の命と引き換えにあの城に留まっているのです。シトゥラに死んだという話が流れて来ないことから考えても、間違いない。ジョイアが国交を閉ざしたことで、私は、あなたがスピカを諦められたのかと思っていました。裏切りだと、切り離されたのだと。あいつもそう思っているでしょう」

「え? 国交を閉ざしたのは、暴動があったからで――」

「そうなのですか? でもあちらではそんな話は一言も聞きませんでした。だから、スピカはあなたに追い出されたのだと」

 なんだって――? それじゃ、スピカは、僕が彼女を許さないと、ジョイアを追い出したと――そんな風に思ってるってこと?

 驚愕する僕をレグルスはうつろな瞳で見つめる。そして小さく首を振ると膝に顔を埋めた。

「まだ想っていただいているのであれば、分かっていらっしゃると思いますが、あいつはあなた以外を受け入れるつもりなんか無い。あなたが駄目なら他の男となど、いくら私が望んでも、そんな事、考えもしないのです。ましてや、ルティは、あの王子だけは絶対にない。彼に身を任せるくらいなら、死を選ぶに決まってる。それなのに――死ねない。死ぬよりも辛い状態に追い込んでるのは、私なのです。

 あいつの置かれている状況を考えると――私が、死ぬしか無いと思いました。実際一度死のうとしたのです。でも、直前で止められて死ねなかった。『死んでも何も変わらない』と嗤われた。――私が死んでも生きている事にすると。ルティは、シトゥラにそう言えと伝えていた。もしそんな事になれば、スピカは一生――あの城で『飼われる』。死ぬ事も許されず、アウストラリスのために働かされ続ける。――シトゥラで飼われ続けたあいつの母親ラナのように」

 冷たい響きが部屋の壁に反芻した。誰も口を挟めず、沈黙する。

 なんということだろう。あいつは、僕だけじゃなくて、スピカにも罠をしかけていた。彼女の事を知り尽くしているから出来る手を使って、彼女が逃げてしまわないように、鎖をつけた。

 僕がスピカに使われた手。自分にしか守れないものを残し、望みを繋ぐ。

「助けるのはもう不可能だった。だから、私に残された道は一つだったのです。シトゥラから何としてでも逃げ出して、スピカの目の前で死ぬ事。エラセドで大きな事件を起こせば、公開処刑される。妃ともなれば、いずれ耳に入るでしょう。それであいつをしばる鎖は解ける。そう思っていました」

 レグルスはそこまで言うとようやく顔を上げる。そして確認するように慎重に口を開いた。

「皇子――。今スピカに私が生きている事を知られても、死んでいる事を知られても駄目なのです。どちらを知られても、あいつはきっと死のうとする。――もし、あなたがスピカを救って下さるというのであれば、あなたはまずスピカの体を取り戻すのではなく、心を取り戻さなければならない。絶望の縁に居るあいつを拾い上げなければならないのです」

「……分かってる」

 ――それがどれだけ難しいかも。僕は彼女の安全と、ルキアの安全、その二つを彼女の前で証明してみせなければいけない。それから――。

 でも、僕は、絶対にやり遂げてみせる。


「イェッド。準備は整ったのか?」

 僕はレグルスにもう一度頷いてみせると、黙々と食事を続けていたイェッドに尋ねる。「ええ。全て手配済みです。今すぐにでも出発できます」

 僕は外の闇を見ると決めた。

「じゃあ、明朝出発だ。それで良いね?」

 レグルスを除き、全員が頷く。

 僕は手に持ったパンを全て食べ終わると、立ち上がる。そしてミアーの入れた怪しいお茶を、彼女の空になったカップを見ながら飲み干して、言った。

「あとは、……レグルスと二人だけで話があるから、外してくれるかい?」


 二人きりで残された部屋には、カツリ、カツリと見回りの兵の足音が遠くから響いていた。外側に大きく開いた窓から外を見ると、細い月明かりが砦を囲む木々の葉を照らしていた。

 月の色を反射した金色の髪が忍び込んで来た風にふわりと靡く。

「レグルスは、さ。――母上のこと、どう思っていたんだ?」

 一連の騒ぎはいつか彼の耳にも届く事だろうし、宮に戻れば父にも聞かれるのかもしれない。でも、僕には直接聞く権利があると思った。

 レグルスは一瞬目を丸くした。そしてややして弱々しくため息をつく。

「――言わなければいけないのですか? 今?」

「頼む」

 それを尋ねる理由は今は言いたくなかった。ジョイアで起こっている事を知らないままの彼に聞きたかったから。

「それがスピカを救う事に?」

 僕はそれに答えずに黙って待った。引かない僕に、しばらく彼は迷っていたけれど、やがて根負けしたようにぽつり、ぽつりと静かに口を開いた。

「……憧れの女性でした」

 彼はもう『友人』とは言わなかった。

「手が届くはずの無い女性ひとだと思っていました。でも、私も昔は若かった。夢を見たのです。強く望めば叶うかもしれないと思いました。――しかし、やはり夢は夢でしかなかった。私が地位を手に入れた直後でした。彼女は見初められ、本当に手の届かない人になってしまった」

 レグルスは自嘲するように笑う。彼には似合わない笑顔だった。

「私は、孤児なのです。物心がついた頃には既にハリスにいました。両親は疎か、どこで産まれたのかも、分からない」

 ――孤児……。思いも寄らない事に、僕は相槌も打てないまま、レグルスを見つめる。

「だから、いくら出世しようとも、貴族の血を引く女性など、駆け落ちでもしない限り無理だったのですよ。諦められず、しばらくはさすがに荒れましたが、私はラナに出会った」

 レグルスは目を閉じて、少しの間、黙る。そして、続きを待つ僕に、もう十分じゃないですか?とでも言うような困った顔をして、ため息をついた。彼は僕の表情から、僕が何を聞きたいのかを察しているようだった。

「…… その後、久々に里帰りされたあのひとを見て、磨かれた美しさに驚きました。あのひとには妃という立場がとても似合っていらした。幸せそうな彼女を見て身を引いて良かったと思いました。でも――あの日、あのひとは怪我をした。傷一つつけてはならないはずの人なのに、『あの方』は、あのひとを傍で守らなかった。それがなんだか悔しかったのです。釘を刺しておかないと気がすまなかった。昔から見守っていた、大事な人には変わりなかったのですよ」

 レグルスは、ほっと息をついて少し伸びた髪をかきあげた。

 それを聞いておぼろげだった部分がはっきりと像を描く。若い日のレグルスは、父に言ったのだろう。手に入れたからには、全力で守れと。妙に簡単に想像できた。父は、それを聞いて初めて知ったのだ。母を慕う男がいる事を。そして――。

「だから、彼女があんな風に亡くなったことは、許せなかった。今でも許せないと思っています。あれだけ大事にしろと言ったのにと、私は怒りました。――なぜ全力で守っていただけなかったのかと、その程度だったのかと、宮に出向きました。お会いする前にあっさり捕まりましたが。あれは、若いとしか言いようが無かった。ラナにもヴェガ様にも軽率だと散々怒られました。まぁ、後悔はしていません。私は、誰かが責めなければいけなかったと思っています」

 彼は突如口をつぐむ。それ以上は話さないつもりのようだった。僕も、それで十分だと思った。

「――この辺でいいでしょうか。青臭いことを思い出すのは恥ずかしい。あぁ、この話はスピカには内緒にして下さいよ」

 レグルスは照れくさそうに頭を掻く。いつもの彼の様子が垣間見えて少し愉快になる。そして思った。

 ――僕たちは、ここからまた近づける。確信を胸に、思い切って口に出す。これは、彼に対してする、最初で最後の確認。もっと早くこう言えばよかったのだ。

「分かったよ、『とうさん』」

 レグルスはぎょっと目を剥く。そして直後、凶悪な目で僕を睨むと、ぷいと顔を背けて子供のように拗ねた。

義父とうさんですって? そういう台詞はスピカを取り戻してからにして下さい。取り戻さなければ、そんな関係にはなれないのですからね!」

 レグルスは何の含みも無くそう言った。スピカの事で、以前と同じようにむきになって怒る彼を見て、思わず吹き出した。そのあまりに平和・・な対応に僕が笑うと「笑ってる場合ですか」と彼の眉間の皺がますます深くなる。それでも笑いは止まらず、胸の中のしこりが笑顔で溶けて小さくなっていく。

「何がおかしいのです!」

「いや……嬉しいだけ」

「?」

 心底怪訝そうにレグルスは肩をすくめると、ようやく眉間の皺を治める。そして呆れたように微かに微笑んだ。久々のその笑顔は、酷く懐かしく、暖かい。幼い僕をずっと見守ってくれていた、その顔だった。


 スピカを取り戻せば――僕は、彼の息子・・になれる。その事が心から嬉しかった。

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