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鬼頭真琴の場合その2 06


第十一節


「どういうこと?もう戦わないって言ったよね?」

「いや…だからこれはその…形式を整えただけなんだよ」


 焦りまくってる制服美少女。


「形式?何それ」


 呪い殺せそうな声色だ。


「それはその…」


 美夕にメタモルファイトの細かいルールを解説しても理解してもらえるかどうか。それに、形式上の話とはいえ「試合をした」のは確かである。


「で?それってちょっと引っ掛けただけの学園祭とかのなんちゃって女装じゃないんだよね?ポケットの中とか教えてよ」

「ポケット?」


 思わず腰の部分を探る橋場。確かにそこには何かある。


「これは…スカートのポケットに…ハンカチとティッシュが…」


 平板に見えるセーラースカートだが、ひだに埋もれる様にポケットがある場合がある。これは男の知らない知識だ。

 ふと気づいて、大きな乳房に押し上げられて居心地の悪そうな胸ポケットを探る。いつの間にか結構硬い。


「…せ、生徒手帳に…ヘアピンだ…」


 何という生活感だ。まるで本物の女子高生である。

 といっても、これは橋場がさんざん他人に掛けてきたことだ。いい年こいたテロリストのおっさんも「生活感あふれるセーラー服の女子高生」に変えられたもんだ。今どこでどうしているのか知らないが。


 思わず裏側を観てみると、「橋場英男(女)」という名前表記に今の姿の顔写真まで張ってある。

 ご都合主義の能力だと知ってはいたが、ここまでとは。


「へー…そこまで女子になっちゃってるんだ」

「いや、だからこれはだなあ…」

「橋場くん巻き込まれて戦ってるから仕方なくメタモルファイトしてるって言ったよね?」

「そ、そうだよ!」


 口調こそ男だが、仕草まで操作されているのでセリフの内容情報以外は完全に女子である。


「じゃあ何でファイトと全然関係ないタイミングで女になってんの?必要ないよね?」

「だから俺にもわからねえんだって!」


 しばし沈黙。


「…何よそれ。変態じゃないの?男のクセにセーラー服なんか着ちゃって…」

「いや、だからこれは…」



第十二節


「あの女に頼んで部屋で一人で楽しもうとしてたんじゃないわよね?」

「ち、違う!そんな訳があるか!」


 思わず大声になってしまう。

 とはいえ、今のこの状況は説得力がまるでない。


「じゃあ何?折角いい雰囲気になってたのに…女になってまであたしと…するのを嫌がってるっての!?」

「だからこれはその…事故だよ!不幸な行き違いで…」


 一歩前に出る女子高生。


「寄らないで気持ち悪い!」


 どん!と突き飛ばされるセーラー服。


「きゃっ!」


 一瞬よろめくが、メタモルファイターはこの程度で倒れ込んだりはしない。


「わけ分かんない」


 ぷるぷると肩を震わせている美夕。


「大体しゃきっとしなさいよあんた!何よ身体が女になって制服着たくらいでなよなよしちゃってさあ!」


 さっきからの橋場の「女の子の仕草」のことを言っているのであろう。


「これはその…お前に言って分かってもらえるか分からんが、メタモル能力は相手をかなりコントロール出来るんだ。仕草を変えるくらいは簡単に…」


「いつまで女の制服着てんのよ!いいから早く脱ぎなさいよこの変態!」


「だってお前…」


 メタモルファイトが終われば着ていた服も元に戻る。敢えて脱ぐよりは着続けていた方がいいのだ。

 確かにここは橋場の自室だから、着替えはそこらじゅうにある。

 それはそれでいいのだが…メタモルファイトで食らった服を脱ぐファイターは特別な目的でもない限り少数派だろう。


 何故なら、それは『下着含めた女体ストリップショー』に他ならないからだ。


 ただ単に食らって、戻っただけのファイターはそれだけだが、その状態で脱いだり着たりするのは「女の着替え体験」であってまた別の話なのである。


「うっ…」


 また何か違和感を感じた。この上今度は何だってんだ!?



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