鬼頭真琴の場合その2 04
第七節
「いや…何でも…」
「は、橋場くんっ!!!!」
美夕の大きな声だった。
「あああああっ!」
上から馬乗りの様にのしかかっている橋場の胸板に大きな突起がぶら下がっていた。
それは…位置関係、大きさ、バランスなどから考えて…バスト…乳房に違いなかった。
「こ、これはぁ!?」
思わず上半身を起こしてしまう橋場。
膝で立っていられなくなり、その場にペタンとお尻を落としてしまう。
目の前に翳した指がぐんぐんと細くなり、白魚の様に細く長く美しく変形していく。
生き物のようにわさわさと髪の毛が伸びていく。
「あ…あ…」
「は…しば…くん?」
押し倒されていた美夕が上半身を起こしてこちらを見ている。
ぐぐぐ…とウェストがくびれていくのが分かる。胴体そのものが細くなっているのだ。
肩幅が縮まり、なで肩になっていく。そこを流れ落ちる黒髪。
「バカな…これは…どうなって…るん…だぁ!?」
今はメタモルファイトなんかしてない。心当たりが全く無い。
「うっ!」
むぐぐぐぐ…と脚が内側に曲がって行き、両膝が無理なく接触する。
う、内股になってしまっている…。その変化は同時にズボンの上からも分かる初々しい思春期の少女の脚線美を形成し、次にはむくっ!むくむくっ!と丸みのある臀部が膨らんで行った。
「ああ…そんな…あああっ!」
さっきまで充血する準備をしていた大事なところが小さく萎み、体内に吸収されていった。
そこには呆然とする大量の髪をふり乱した美少女がいた。
第八節
「あ…」
見下ろすとそこには、男物のシャツを下から突き上げる大振りな乳房の形があった。
可憐な自らの手でそっと触ってみる。
「…」
確かに感覚が通ってる。自分の物に違いない。
「どういうことなの?」
それはこっちが聞きたい!と言おうとした瞬間、ある可能性に思い至った。
「まさかあいつ!」
脳内に別れ際の鬼頭の思わせぶりな笑顔がフラッシュバックした。
これ…鬼頭の能力…なのか?試合は終わってるのに?まさか…時間差?
「…ってことはああああっ!!!!!」
甲高い少女の声で大声を上げて飛び上がる橋場。
「な、何!?何なのよ!?」
飛び上がると同時にベッドわきに立ち尽くす美少女…と成り果てている橋場。
これが鬼頭の能力なんだとしたら…あいつの能力は…。
「…っ!?」
動こうとしたが足が動かない。この場を離れられない!?
「美夕…その…また今度ってことにして…」
今日は帰ってくれ、と言うべきなのか「いいから出て行け!」と大声を上げるべきなのか迷っていたところに次の衝撃が襲ってきた。
「んぁっ!」
さっきまで履いていたガラパンが変形し、シルクのパンティとなって乙女の柔肌に吸い付いたのだ。
「橋場くん…あんたまさか…」
ギクッ!とする橋場。女のカンは鋭い。
「いや…違う!違うんだその…」
どこからともなく出現したブラジャーが、生まれたばかりの橋場の乳房を覆い、アンダーバストを回り込み、肩に細い紐を食いこませるように背中で“ぎゅっ!”と留まった。
「ぁあっ!」
頬が真っ赤に染まった。
何度も体験しているが、この「他人に無理やりブラジャーを付けさせられる」かの様な感覚は何とも屈辱的だ。
目の前で氷の様に冷たい美夕の視線が見下ろしている。




