61 紫苑の告白
思ってもいなかったワードが紫苑の口から飛び出して僕は困惑していた。
どう見ても彼女は僕達と変わらない年齢に見えたからだ。
おまけに彼女は紫苑とは違って真っ黒な髪をしていた。
僕の困惑を見てとった紫苑はスマホを取り出すと画面を操作し始めた。
やがて一枚の画像を表示すると「ほら」と僕に見せてきた。
そこには金髪の女性を真ん中に挟んで立っている紫苑と彼女が写っていた。
真ん中の女性は明らかに紫苑の母親とわかるほど紫苑にそっくりだった。
僕は改めて女性の顔を正面からじっくりと見たが、その顔には見覚えがあった。
彼女にはお義父さんの面影があったからだ。
「妹はアリサと言ってね。僕とは二卵性双生児なんだ」
紫苑の言葉で更に納得がいった。
二卵性だから男女の双子になって、尚且つそれぞれの親に似た子供が生まれたと言うわけだ。
「……兄妹にしては随分と距離が近かったような気がしたんだけど……」
まるで恋人同士のようにベタベタしていた様子を思い出して、僕はジトッとした視線を紫苑に向けた。
紫苑は僕の視線を受けてちょっと肩をすくめてみせる。
「誤解を受けるからやめろって言ってるんだけどね。甘えられるとついつい許しちゃうんだ。こうして会えるのもあと少しだしね」
「え?」
紫苑の言葉の意味がわからずに僕は紫苑に視線を向けた。
紫苑は少し寂しそうな顔でスマホの中の写真を見つめる。
「もうじき母と妹はアメリカに引っ越しちゃうんだ。向こうの祖父母も高齢だし、アリサは向こうの大学に通いたいらしいからね」
色々と事情があるらしいことはわかったが、せめて妹がいる事くらいは伝えていてほしかった。
そう不満をぶつけると紫苑は素直に謝ってくる。
「その点に関しては申し訳なく思うよ。まさか雅樹にアリサといるところを見られるとは思わなかったからね」
しれっとした顔で紫苑は言うけれど、あんな風に堂々と腕を組んで歩いていたら目立つと思うんだけどね。
やれやれと肩をすくめたところで、僕は足元に何かが落ちている事に気づいた。
何気なく拾ってみれば、どこかの店の会員証らしい。
そこには紫苑の名前と生年月日が書かれていた。
あれ?
そこに書かれている紫苑の誕生日に違和感を覚える。
そこに書かれていたのは僕よりも半年後の翌年の3月とあった。
「紫苑は4月生まれじゃなかったのか?」
僕の呟きにハッとした紫苑は、僕の手から会員証を奪い取った。
じっと見つめると紫苑はあたふたと会員証をポケットにねじ込むが、その顔は耳まで赤く染まっている。
「紫苑?」
少し低い声で問いかけると、僕から顔を逸らしてウロウロと視線を彷徨わせている。
「だ、だって……。雅樹が僕よりも半年も早く生まれたって聞いたからさ……。ちょっと見栄を張ったんだ……」
どうやらそれで兄として主導権を握ろうと思ったらしい。
いずれバレるとわかっているのに何でそんな嘘をついちゃうかな?
僕は顔を赤くしている紫苑を見やる。
いつもは自信満々な紫苑が、随分と年下に見える。
今なら僕が主導権を握れるかな?
僕はスッと立ち上がると、俯いている紫苑を見下ろした。
さて、どう可愛がってあげようかな?
《 完 》




