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モンスター協奏曲  作者: 東京小町
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63/86

モンスターの逆襲


 おっ、ストレート系


 あ、スプリット


 これは〜、スライダー


 やば!竜斗の癖、見抜いちゃったよ


 データ解析班杏子の日々が続いてる

 騒動はまだ収まってないが、解析に没頭することで、だいぶ楽になった。



 竜斗はヤバいくらいの成績を残し続けてる


 とうとう、地上波でも放送されるようになった。


 よかった


 でも、見つけてしまった、竜斗の癖


 ストレート系は、セットに入ってから、モーションに入るまでの間合いが少しゆっくり

 おそらく、タメを無意識に作ってる


 スプリットは、握る瞬間にほんの少しだが、グラブが揺れる

 指を挟むから


 スライダーは、投げる瞬間少し体が開く

 曲げたい意識が先走りしてる


 今のところはバレてない…と思う


 全く打たれてないから


 でも、そろそろ、他チームのデータ班に気づかれるかも


 今まで、気づいたことや相手データを迷惑かもしれないが、竜斗のプレー用タブレットに送りつけていた


 いらなきゃ、削除するだろう


 でも、今回は重要な気がするので、竜斗に電話で話をした


 やはり、気づいてなかった


 修正方法と、癖が出てる瞬間の動画に、編集で丸印を入れて送りつける!




 そして、今度はオリーが打撃の調子を落とした


 すぐに解析開始!


 再生しては、巻き戻し、好調だった時と不調の時を何度も見比べた


 そして!見つけた!


 軸足の体重の乗せ方がおかしい、不調の時は軸足が少しキャッチャー方向に倒れてる、そしてその影響なのか、バットが内側から出てこない


 すぐに、竜斗経由で送った




 すると…戻った!オリーの調子が戻った!


 オリーが調子を落とすと、前を打つ竜斗にはまともな勝負はこない、そうなると一気に得点力が下がる


 その間、チームは勝ててなかった。


 やった!役に立てた!怪我の功名?やったね!




 データ解析班になって二ヶ月


 今は八月中旬


 私の騒動もやっと落ち着き始めてきた


 竜斗にはあまり被害は出てないのはよかった

 むしろ、私に強引に婚約されてかわいそうとか言われて、同情されてる


 悲しいけど、よかった

 竜斗は頑張ってるのに、みんなより遠回りして、やっとメジャーデビュー出来て、大活躍してるのに、私のせいで変な目で見られたらキツすぎる。

 

 もう少し待てばほとぼり冷めるかな?

 でも、このままだと結婚しない方が竜斗のためだよね…

 婚約破棄するしかないかな…


 そんな考えが起き始めてると

 あるニュースが飛び込んできた。


 竜斗が来季の契約を交わしたとの報道が入った


 今年の九月で二十五歳になる竜斗、来季は八年目


 なので、来季の契約は外国人に適用される二十五歳ルールから外れる


 なので当然メジャー契約になった


 新人選手が、シーズン中に来季の契約を結ぶのは異例中の異例


 今季の活躍を見て、早々にチームが動いたのかな


 ただ、評価が少し低いような…


 一年契約で年俸七億円


 う〜ん、安くないか?


 いや、これでも日本でグイグイ投げてるノブさんの数倍、だけど竜斗のこの成績でこれ?メジャーだよ?


 しかも一年って…複数年じゃないの?


 で、この契約に伴い、竜斗が日本メディア向けの記者会見を現地で開くと発表された。


 今や、日米で大人気の竜斗


 メディア対応もよく、記者陣達からも人気もある


 なので、大々的に会見が行われるようになった、テレビ放送も、ネット配信も入る


 注目の記者会見となった


 ただの、契約会見なのになぜ?


 それは、今まで球団に守られて、黙り通してた婚約者冬川京子の件を、何か話すんじゃないかとの推測がされてるから


 日本向けの記者会見だからそう推測される、契約の話だけなら日本向けにする必要はない


 アメリカでも、もちろん記事のことは知られてるが、日本みたいにあまり騒がれてない

 デビュー戦のインタビューの私達の振る舞いを直接見てる記者陣達が、日本の記事を信用してないからだ

 

 日本で大変な騒ぎになってると、報道はされてるが、あまり掘り下げては、ないみたい


 なので、日本向けなのは、何か話すと推測されてる


 あともう一つ注目されてるのは、やはり単年で安めの契約

 ネット、一部メディアには冬川京子査定で減額とか書かれてる

 日本向けで、安めの契約記者会見、そりゃ何かあると思うのは不思議ではない



 記者会見当日


 本拠地サンフランシスコの試合後の記者会見


 日本時間はお昼過ぎ


 民放各局は、帯番組の生放送で会見の中継映像を流す


 竜斗のこと大好きなNHKもサブチャンネルで放送


 ネット配信番組もこぞって生配信する


 アメリカ本国も結局、大注目してるらしい


 日本全国、アメリカ本土で一斉に流される大注目の記者会見になった

 


 いよいよ、会見が始まる

 竜斗は何を語るんだろうか…


 事務所内の大きなテレビで、みんなと見る

 事務所の人間のほとんどが集結してる

 

 どのチャンネル回しても、この記者会見


 映像が繋がる


 テレビには、アメリカ人の記者も多数映ってる


 でも、通訳はいない

 日本向けなのでいるわけない

 なのに、アメリカ人記者がいる、それで注目度がわかる。



「今回の契約についてお聞かせください、まず春樹選手は今回の金額などは納得されてますか?」


「はい、充分評価してもらってますし、こちらからの要望も聞いてもらったので満足しています」


「要望とは、具体的にどのようなことですか?」


「すいません、ちょっとシーズン中なので、その内容はもう少しお待ちください、シーズン終わったらまたコメントさせていただきます」




 何事もなく記者会見は進んだ


 が、ある記者の質問で状況は一変する



「婚約者の冬川杏子さんの記事のことはご存知ですか?」


「もちろん知ってます」


「春樹選手からは、その件について何もコメントをされてませんが、それは記事のことは事実とゆう解釈でよろしいですか?」


「事実なわけないだろっ!」ダンッ!


 テーブルに手を叩きつけてキレる竜斗

 目が据わってる、そう怒った時のあの目だ


 今までメディア対応が良かった竜斗の一喝する怒号と鬼の形相に、場は一気に凍りつく


「この件について、自分から話をこれからさせていただきます、かなりお時間を取りますので、興味のない方はどうぞご退出ください」


 シーン


 当たり前だが、誰も席を立たない



「自分は、冬川京子と出会う高校二年の秋まで、控え選手でした」


 ザワザワ

 まぁ、今の竜斗からしたら想像できないよね


「控えと言っても、あともう少しでレギュラーとかではありません、ガッツリ控えです」


「自分は、小学校三年生から野球を始めましたが、高校二年になるまで、一度も公式戦に出たことはありませんでした、練習試合もほとんど出たことありません、紅白戦も人数が足りなかったら出れる程度でした」


「別に体が弱かったとかではありません、ガッツリ健康体でした」


「小六の時に、父親が自分の試合にこっそり見に来てくれました、でもその時、父親の目に飛び込んできたのは元気にプレーする姿ではなく、ベンチの端っこで背中を丸め、スコアブックに一生懸命記入する自分の情けない姿でした、そうです下手くそなので、選手として使い物にならないからスコアラーしてたんです」


「中学生の時に初めて彼女ができて、その彼女が野球部の試合に見に来てくれました、でも、自分は試合に出ることはありませんでした、とても、とっても恥ずかしかった」


「高校に入っても状況は変わりません、でも体が大きくなり始め、パワーもついてきてたので、もしかしたら試合に出れるかもと、少しは期待してたんですが、バッティングがダメすぎて結局同じでした、練習試合や紅白戦は下級生が試合に出る中、審判してました」


「そんな中、冬川京子、いや本名星川杏子と出会い、自分の野球人生は一変します」


「最初に言っておきます、自分は星川杏子のおかげでメジャーリーガーになれました!嘘でも誇張してるわけでもないです!」


「みなさんは、想像できないかもしれませんが、星川杏子は立派な野球人です、とてもとても優秀な野球人です、今でも尊敬しています」


「自分はみなさんご存知の通り左バッターです、でも彼女と会うまでは右バッターでした、全然ダメな右バッターでした、でも彼女が左バッターの可能性を見出してくれて、彼女の勧めで左バッターになりました」


「そこから、彼女との左バッターの特訓が始まりました、今のバッティングフォームの基礎を作ってくれたのは彼女です」


「毎日毎日、自分にトスを上げ続け、そして指導してくれました」


「バッティングピッチャーもやってくれました、毎日、毎日!自分のため、チームのために投げてくれました」


「出会った当時の彼女はまだ中学三年生、恩師アンソニー氏の通訳として自分達の野球部に来たんです、その通訳の中三の女の子が毎日毎日バッピを務め、一週間で五百球を投じることもありました」


「自分たちの、野球部は廃部寸前で部員が少なく、しかも当時佐藤は腰を痛めており、他の投手の負担も考え、中三の彼女がバッピを買って出てくれたんです」


「甲子園で優勝できたうちの野球部の打力を支えたのは彼女です!」


「甲子園で不調だった自分の打撃を修正したのは彼女です!」


「彼女がベンチにいなかったら…あの準決勝のサヨナラホームランは…打てませんでした」


「そして、ピッチャー、もちろんやったことありません、初めてまともに投げたのは甲子園の初戦です、本当にぶっつけ本番でした」


「アンソニー氏にピッチャーを勧められてから、やはり彼女との投手訓練が始まりました、今のピッチングフォームの基礎も彼女が作りました、自分の感触を伝え、フォームを作っていきました」


「キャッチャー出身の彼女が、ミット片手に毎日毎日受けてくれました」


「甲子園であれだけのピッチングができたのは、彼女のおかげです」


「そして、サードの守備、当時自分は外野手、まぁ外野手ですけど、試合に出たことないですし、玉拾いをやってることがほとんどでしたから、外野手ではなく、外野にいる人ですね」


「サード転向は、アンソニー氏の勧めですが、その守備を鍛えてくれたのも彼女です」


「彼女は天才ノッカーです、力がないので内野ノック専門ですが、毎日毎日ノックバット片手に鍛えてもらいました、自分だけではありません、内野手の部員みんなです、うちの内野はコンバートがあり、内野の連携の作り直しで大変でした、でも彼女指導の元、みんなメキメキと上手くなっていきました」


「皆さん知ってますか?うちの甲子園での内野エラーは、わずか一個なんです、そうです、やはり彼女のおかげなんです」


「桜水高校が優勝できたのは、彼女のおかげと言っても過言ではありません」


「甲子園で優勝した時、部員みんなで彼女に向かって礼をしてます、それがみんなが彼女に対する思いでした、そのシーンは映像にあります、調べてみてください」


「そんな思いがある野球部でした、星川杏子との素晴らしい思い出がある野球部でした」


「そんな彼女を侮辱するデタラメな記事を載せた、週刊誌並びにそれに乗っかって面白おかしく報道したテレビ番組を自分は許しません!」


「そんな自分の野球人生の背景があったからこそ、日本のプロ野球、大学に進学して野球を続ける、とゆう選択肢はなく、渡米して恩師アンソニー氏の元で野球を続ける決断をしました」


「渡米をするとゆうことは、当時交際をしていた彼女星川杏子との別れを意味します」


「成功するかわからない、何年かかるかわからない、そんな状況で彼女を待たすわけにはいきません、自分達は別れることを決断しました、でも二人の中に、いつか再会して、その時は結婚するんだと強い意思を持ってました、別れるのは建前、絶対再会するんだと、お互い口には出しませんでしたが、その思いは強かったです」


「そこから、実際渡米するまでの半年間、彼女は自分の個人練習に付き合ってくれました」


「野球部はすでに廃部していたのですが、学校側に頼み、グラウンドの使用許可をもらい、そこから彼女と二人だけの練習が始まりました」


「彼女は、毎日毎日二人だけの練習に付き合ってくれました…別れが待ってるのに悲しい顔を絶対に見せず、絶対成功するから!といつも励ましてくれました」


「渡米する日、空港まで彼女は見送りに来てくれました、今にも泣き出しそうな顔なのに…それを必死に堪え、必死に堪え、笑顔で自分を送り出してくれました」


「その後、彼女は冬川京子として生きていきます、その彼女にはNGが三つあります、キスシーン、ラブシーン、最後は野球関係全てです」


「その三つ、全て自分のためです、大好きな野球を封印、自分と再会出来る日を信じて、自分以外とは一切野球をやらないと決め封印したんです、キスシーン、ラブシーンは異国で頑張る自分に気を使ったのと、子供みたいですが貞操を守る意味もあったみたいです、別れてるのにです」


「絶対に迎えに来てくれる、彼女はそれだけを信じ、冬川京子を演じ、自分を磨き、五年半もの間、待ち続けてくれました」


「記事には、彼女が高校時代、部員を自宅に連れ込んだと書いてありますが、それは絶対にないと自分が証明できます、なぜならば!自分が毎日星川家に、お邪魔していたからです、いやらしい意味ではありません、彼女のお母さんが毎日自分にご飯を作ってくれてたんです、当時かなり多忙だった自分の両親に代わり、ご飯、お弁当を自分の母親代わりになって作ってくれました、他に、彼女のお父さん、お姉さんの葉山翔子さん、お兄さん、星川家の皆さん全員が自分の夢物語の後押しをしてくれました、内容は話すとキリがないので省略させていただきます」


「そして、自分達は念願の再会を果たすことが出来ました、この冬公開される映画で自分達は共演してます、もう少ししたら発表があるので、内容はそれまでお待ちください」


 ザワザワ、ザワザワ、ザワザワ

 

 ここまで、黙って聞いていた記者達が、映画共演の話を聞いてさすがにざわつき始める


「野球で再会する前に、撮影で再会しちゃいました、でも、もう迷いはありませんでした、せっかく再会できたんです、すぐに結婚の約束を先にしてメジャー昇格を狙いました」


「そして、今季メジャーに昇格することができ、偶然とゆうか奇跡的に、自分の晴れ姿、自分のデビュー戦を彼女に見せることが出来ました、とても喜んでくれて、自分の活躍する姿を見て心の底から感動し泣いてくれました」


「でもそこから一変、そのデタラメな記事のせいで、彼女は苦しみました、皆さん自分の今までの話を聞いて、そして自分の話が本当に真実だとしたら、彼女の気持ちをどう想像できますか?さぞ悔しかっただろうし、さぞ悲しかったと想像できませんか?質問した記者の方、どう思いますか?真実だと仮定しての話でいいです」


「いや…まだ事実確認ができてませんので…」


「だから真実だと仮定してと言ってます、どうですか?」


「はい、心中お察しします」


「ありがとうございます」


「そんな苦しんでる彼女、何も悪いことしてないのに、仕事はなくなり、表を出歩くこともできない、ただ事務所の一室に篭ることしかできない生活を強いられました、悲しいのに、苦しいのに、辛いのに、彼女はその間何をしてたと思いますか?」


 ガサゴソ ドンッ!


 足元に置いてあるカバンから分厚い書類を取り出しテーブルの上に置いた


「この書類、彼女が自分に送ってきた、自分のデータ、相手選手のデータなどです、皆さんにその量を分かりやすくするため、ペーパー化しました」


「見てくださいこの量、彼女は苦しんでる間も、こうして自分のことを最優先に考え、行動を起こしてくれてるんです」


「もちろん、うちのチームにもデータ班はいます、でもそのデータ班がこれを見て非常に関心してました、プロのデータ班も認める観察力です、実際、自分も同僚達もこのデータに助けられました」


「自分からの思い出話は以上です、おそらく今後、今は著名人になった元野球部員たちが、この話が本当だとゆうことを証言してくれると思います」


「今まで、この件に関してコメントを控えていたのは、自分がこのような会見を開ける選手になるのを自分自身が待っていたからです、公の場で発言し、少しでも多くの人に、冬川京子とゆう人間が本当はどんな人間なのか、知ってもらいたかったからです、そして仲間は自分が発言するまで待ってくれました」



「ここからの話は今後のことです」


「まず、冬川京子こと星川杏子は正式にうちのチームの一員になりました、肩書きは自分の専属マネジャー兼通訳、そして広報活動をします、ただこの一連の活動は彼女の誤解が解けたらスタートさせます、でも契約は履行されてるので、もうチームの一員です」


 え!どゆこと?


 泣きながら見てた私の涙が止まり、姉を見る


 腕を組み、壁に寄っ掛かりながらテレビを見てた姉が、私の視線に気付きピースサインをしてきて、その伸びた二本の指をクイクイさせてる


 姉了解済みか…

 嬉しい、嬉しいよ


「そう、彼女はチームの仲間…なので自分は球団とタッグを組み、デタラメな記事を掲載した週刊誌を相手に訴訟を起こす準備に入ります、さっき話した要望とは実はこのことです」


「そして、単年契約にした理由は、世間に冬川京子の誤解が解けなかった場合は来年で野球をやめます」


 ザワザワザワザワザワザワザワザワ


 記者陣が大きくざわつく


「冬川京子、星川杏子に拾ってもらった自分の野球人生、彼女と生涯やり遂げたかった野球人生です、でも彼女が苦しむ姿を見ながらやる野球に魅力はありません、自分は彼女の笑顔が大好きです、その笑顔が自分の原動力です、そしてここまで頑張ってこれました、その笑顔が見れないならやりません」


「そ、その、笑顔で、下積み時代の辛い時に彼女の笑顔を思い出して、頑張ってきましたから」


 涙ぐむ竜斗

 私も釣られて号泣する

 いや、とっくに号泣してた


「自分はなんと言われてもかまいません、自分が彼女を守ります、逃げてるとか言われてもかまいません、全世界を敵にしても彼女を守ります、彼女が数奇な目で見られるのであれば、見られないところで暮らします」


「日本から離れた土地、アメリカの田舎とかで、二人でひっそり釣りでもして、暮らしていきます」 


 グスン、餌つけれないくせに 


「最後に!掲載した週刊誌にチャンスをあげます、今日から一週間以内に、謝罪文、小さな謝罪文ではなく、表紙もしくは、一ページ丸々使った謝罪文を掲載していただければ、今回の件は水に流します、例えそれで冬川京子の誤解が解けなくても、水に流します、デタラメ記事を認めてくれれば、それで結構です、訴訟は起こしません」


「この先自分が出来ること!それは今シーズンの残りと、来シーズン、一生懸命プレーして今日の発言が本当だとゆうことをプレーでも証明したい、そして早く彼女の誤解が解け、彼女の笑顔が戻ることを願い自分からのコメントは終了したいと思います!」


「どうか…どうか!冬川杏子のことを信用してあげてください!ご清聴ありがとうございました」


 パチパチパチパチパチパチパチパチ


 深々と頭を下げる竜斗、会場には拍手が湧き起こる


 竜斗、竜斗!竜斗ありがとう



「よっしゃーーーー!よくやった竜ちゃん!さすが私が見込んだ男!」


 姉が雄叫びを上げる


「みんなー!仕上げに入るよ!各方面に連絡!決行は二日後!よろしく!」


「はい!」


 社員一同が返事をして電話かけ始める


 なになに?なんなの?


「長谷川ちゃーん、GOに四日後に生配信させるから準備させて!」


「了解で〜す!」


「丸山さん!杏子のメイクとヘアメイク、それから衣装、四日後、地味めね!」


「はい!手配します!」


「コバッキー!一週間経ったらあのネタ解禁、配信の準備!ネタ練習しとけ!」


「………」コクリ

「ラジャす!」


 マジでなんなの…


「杏子!」


 スタスタスタスタ


 ガバッ!


 姉に抱きしめられた、初めてかも


「よく我慢した、よく耐えた、さすが私の妹、よく頑張った!でももう大丈夫、もうすぐ竜ちゃんに会えるよ、もうこの先はずっと一緒にいられる、よかったな」


「う、うんありがとう、お姉ちゃーーーん、う、う、ウエーーーーーーーン!」


「やめろ、服が汚れる、うわ!汚なっ!離れろ!」

「ひどい」


「杏子、四日後にGOチャンネルの生配信に出るぞ!準備しとけ!それ終わったら、竜ちゃんのとこすっ飛んでけ!」


「え?う、うんわかった!」


「お〜し、ガッポガッポ〜セットはんば〜い、いぇい!」


 上機嫌で踊りながら、去っていく


 マジでなんなんだ




 竜斗の会見後、最初に反響が出たのは、アメリカ側だった


 サンフランシスコを中心とした全米野球ファンが、一斉にその週刊誌を叩き出した


 大変な騒ぎ、そりゃそう、この先二度と現れないかもしれない、いや、絶対に現れないスリーウエイ選手がいなくなってしまうかもしれないんだから


 メジャーリーグ機構も動き出した


 面白おかしく報道した日本のテレビ局に、メジャー放送全ての映像を出さないと通達した


 それに泡食ったテレビ局


 特番を組み、謝罪番組を放送した


 出演者全員、深々頭を下げていた


 その謝罪番組は、あの甲子園優勝時、部員みんなが私に整列して頭を下げてるシーンや、私が竜斗にジェスチャーをしてアドバイスを送ってるシーン、それから、竜斗が泣いてる横で静かに座る私のシーンを放送しながら、かなり美化して説明してる、まさに手のひら返し


 関係のないNHKも甲子園の映像を出してニュース番組を作った


 当時のアルプスリポートの映像を流した


 そこに映るのは、リナさんとうちの母


 母のアルプスリポートは、竜斗がうちにご飯を食べに来てたこと言うコメントに対しての裏付けになる

 そして、親の目を盗んで、部員を連れ込んでたとゆう記事を根底から覆すことになる


 当時は、お母さん何してんのよ!状態だったが、今は大変感謝してる。


 そして、日本からも反響が出始める


 ネットが追い風に変わっていく


 (春樹、男だ素晴らしい)


 (二人の純愛泣ける)


 (冬川京子がバッピ?すげ〜)


 (この二人応援したい!)


 (冬川京子、すまない誤解してしまっていた)


 (春樹は控えだったんだ、それを発掘したのが冬川京子、この物語泣ける、映画にした方がいい)


 (春樹が嘘を言ってるようには到底見えない、信じていいだろう、今まで以上にこの二人を応援したい)



 だが、一部まだ否定的なコメントも目立つ



 (中三女子が、そんなに投げれるわけないだろ春樹盛りすぎ)


 (天才ノッカーって…冬川京子が打てるわけがない)


 (五百は盛りすぎ、せいぜい五十だろ、しかも春樹にだけ投げてたんだろ、他の部員が気の毒)


 などなど、私の誤解は解けてるけど、今度は春樹盛りすぎで騒がれ始めた




 そして会見から二日後


 今まで沈黙していた仲間達が一斉に私達の援護を始める


 まずリナさんが、自身のSNSに動画を立て続けにアップして、それが一気に拡散された


 そう、姉からもらったリナさん自慢のデジテルビデオカメラの映像だ!


 当時はいつ使うんだよと思ってたが、ここで活きてきた


 何も編集なしの、リナさんのコメント付きの動画が、かえって真実さを増す


 私がバッピしてる姿、ノックしてる姿、竜斗と投球練習してる姿が流された


 リナさんは世間では外面よくしてる


 でも、この動画のコメントは、言っちゃ悪いがアホ丸出し


 だが、そのコメントが竜斗が盛ってないことを証明する


 リナさんは自分のキャラを犠牲にしてまで、協力してくれた


 そして、締めのリナさんガチ呟きコメント

 それは知らなかった、なんかやってるなと思ってたけど…

 結果、私の愛の力を証明してくれた


 他に、私の中学の卒業式で、みんなに胴上げされてるシーン


 体育祭の部活リレーで、優勝した時に、竜斗が私を抱っこしてクルクル回ってるシーン


 アップされた動画全てが、大反響!


 引用され、切り抜きショート動画がガンガンユーチューブにアップされた


 これで、完全に私の誤解が解けた


 完全に追い風ムードになる


 私の好感度は、騒動前より全然上がってる


 そして、日本のプロで活躍するノブさんと大さんが擁護のコメントを、スポーツニュースなどに出してくれた


 大さんは、ヒーローインタビューでもコメントしてくれた


「今日打てたのは、高校時代、冬川京子さんがバッピしながらアドバイスをくれたインコースのさばき方が、今でも焼きついてるからです」


 大さんは今でも硬派、下手な冗談を言わないのはファンもわかってる、ありがとう


 ガブさんは、只今発展途上、でもコメントを求められ

「あー、冬川京子さんには、よくメガホンで叩かれました シクシク、あ、ガブっちょ!」


 ってそれリナさんだから!私叩いてない!しかもキャディさんにガブっちょしてるし、変わってね〜


 羽堂さんは、夜のスポーツニュースでコメントしてくれた


 自分の女癖がバレたくないのか、当たり障りのないコメントだが、しっかりと援護してくれた


 ありがとう羽堂さん


 でも、竜斗を合コンに誘ったら殺すからね


 で、私の仕事なのだが、全然埋まらない、誤解が解けたなら何かしら入ってきそうなんだが…



 姉に聞いてみる


「お姉ちゃん!」

「なに!」


「離れてった仕事は戻ってこない感じ?」


「ふん、一度杏子から逃げた客なんて知るか、頼まれても死んでも戻さん」


「いいか、杏子、これからは逃げなかったCM企業以外は新規しか取らない、それにお前はもう竜ちゃんの付き人、シーズン中はいつも一緒、オフに二人で帰ってきて、セットのCMを、営業してもらうから、いや、たぶん、向こうからわんさか来る、ウシシシシ、あ、うん、えっと、企業によってはシーズン中にアメリカでの撮影もあるかもしれない、その時は杏子自らスケジュール調整するんだぞ、専属マネジャーの仕事頑張れ」


「え?本当にずっと一緒にいていいの?」

「結婚するんだろ?」

「うん!」


「夫婦が一緒にいないでどうすんっだっよ!」


「わかった!私頑張る!やった!」


「おーよ、じゃないとここまでやったことが水の泡よ!」


「ん?どうゆうこと?」

「なんでもなーい」


「お姉ちゃん!」

「あんだよ!」


「竜斗の年俸、よくお姉ちゃん納得したね、交渉してるのうちの事務所なんでしょ?」


「は?バカか?あの金額は、お前のマネジャー代は含まれてない!」


「ほえ?」

「お前の年俸いくらだと思う?」


「ハウマッチ?ゴクリ」


「六億え〜〜ん」

「はい?」


「合わせて?」

「十三億?」


「ピンポーン」


「ま、マジで!え?やば!って、なんでそんな回りくどいことすんの?」


「まぁ節税?ってのは嘘、十三億ドンッだと妥当すぎるべ?それより全然少ない金額のが、なんで?ってなって会見に注目するだろ ハハ」


「杏子のは結構先から分割払い、老後も安心だね!」


「ま、マジか、策士すぎる!」

「ほ、褒めるな、照れる!」


 いや、褒めてない、もう怖いんですが


 ん?ってことは、記者会見の仕掛け人は姉?


「あ、それから〜、インセンティブあんよ」

「え?」


「来年の観客動員数が、一定のラインを超えるとまた入ってくる」


「ま、マジか、超えそうなの?」


「おいおい〜これだけの騒ぎが起きて〜おかげで二人の恋の物語が世間に知れて〜冬に二人が出演してる映画が公開するんだよ〜しかもラストはお前が自然に泣いてる〜どうなる〜?」


「あ、めっちや売れるわ」


「そゆこと、で、まず、日本からサンフランシスコのツアーが組まれる、もちろん本国でも人気が出て〜みんな見にいく、しかもスタジアムでは〜夫婦二人を見ることができる、しかも夫はスリーウェイプレーヤー、すでに大人気、そして杏子は実況にもいじられるマスコット的存在でしかも売れっ子女優、で、二人の純愛物語」


「こんだけ好条件揃えば、自然と観客増えるよね?おそらく余裕のよっちゃんで満額もらえる」


「ま、満額ハウマッチ!」

「知りたい?」

 コクコク


「六十」

「へ?まん?」


「オク」


 ガクブルガクブル

 チーン


 泡吹いて倒れそうになった


「なのでぇ〜竜ちゃんと杏子の年俸も合わせてると〜?」


「七十三?」

「オク!」


「ひーーーーー」


「さらに〜」


 まだあんのかい


「日米間の飛行機ファーストクラス乗り放題無料!」

「わお!」

「もちろん、夫婦二人分ね」

「わおわお!」


「来季もホテル住まいだと〜、いいとこのホテル、いい感じの部屋無料!」

「わお!」


「朝食無料!」

 ズコッ!

 このワード好きだな、東横イン大好きかよ



「で、で、でも、それじゃあ、球団が損しないの?」


「アホか、小娘、向こうもガッポガッポだよ!客ガンガン増える!グッズもガンガン売れる!しかもチケット代も高騰化する!両者ウインウイン!」


「ここまでくると本当に怖いよお姉ちゃん」


「褒めるな、照れる」

「褒めてない!」


「あ、杏子〜あとで、契約書にサインしてね〜」

「六十億!」


「アホか、お前の六億ちゃん」

「なんか安く感じるんですけど」


「あ、そだ、映画のギャラ教えてやろうか?」

「え?ハウマッチ」


「一人ひゃくまんえーん」

「え?安っ」


 ま、サブストーリーのみだし、私も竜斗もハリウッド映画初、そんなもんか

 でも、全然いい、なんならタダでもいいくらい

 夫婦で素敵な演技をやらせてもらったんだから


「バーカ、その額で私が納得するとでも?」

「ほえ?」


「バックエンドあるよーん」

「え?インセンティブ的なやつだよね」


「おーよ、興行収入が、ある一定ラインを超えると〜ガッポガッポよ」


「ま、マジか、てか、サブキャラ二人にそんな出るの?」



「そうなんだよ、だから、そのラインがかなり高い、竜ちゃんの野球とは違って、不透明だからね」


「そ、そうだよね」


「日米で、このシリーズ最高記録叩き出したら、ガッポガッポ」


「えー、それはさすがに無理でしょ〜」


「小娘はわからんかなぁ、これ、やばいよ、記録作るよ、このシリーズどころの騒ぎじゃないかもよ、さっきも言ったけど、共演してる日本人二人は本当の恋だぞ、学生時代からの純愛、しかも、離れ離れからの〜再会、からの〜即共演、二人の演技に自然と注目が集まる、そして杏子のセリフは、もう離れたくない的なやーつ、で、お前のマジ泣き」


「う、うん」


「で、竜ちゃんはスリーウェイプレイヤー、今も異次元の成績を残してる、それに同行して竜ちゃんを愛で支える野球バカ売れっ子女優、野球も映画も大変なことになること間違いなし!」


「わーお」


「バックエンドの金額わ〜」

 コクコクコクコク

「ふったり合わして〜十八」

「へ?まさか、オク?」

「ピンポンパン」


 チーン


「おしい!みんなひっくるめてヒャク届かなかった〜、ま、日本のセットCMわんさかだから、いっか、ウシシシ」


「もう、本当やばいよお姉ちゃん」

「照れる!」


 だから褒めてねっつーの


「杏子!」

「なに!」

「こんだけあれば老後も安心だね!」

 ズコッ!

 好きなワード多いな

 いやいや、老後どころの騒ぎじゃねーだろ

 人生何周出来んだよ、うちらお金の使い方、地味なんだぞ


 にしても…


 凄すぎる、姉のこのキレモノぶりは凄すぎる

 でも、なんか出来過ぎのような気もする

 全て物語のような気がしてくる


 でも、そうだとしても、竜斗が活躍してくれてるから全てが成り立つ、マジ竜斗に感謝


 そして、あの竜斗の会見!ほんと好き!あそこまで私のことを思ってくれてたなんて…


 あ〜もう!早く会いたい!あったらどうしてくれようかしら!


 はちゃめちゃにしたい!ずっと一緒!毎日、はちゃめちゃ!


 エヘヘヘヘ


 そっか、もう離れなくていいんだよな

 そう仕向けてくれたのは姉か…


 姉は、お金目当てのように言ってるけど、でも、ちゃんと私達の未来を考えてくれてたんだな



 あれ?専属マネジャー?

 早速、夢叶っちゃった

 違う、竜斗が叶えてくれたんだ


 専属マネージャー!

 楽しみ!嬉しすぎる!

 また、野球に携わることができる!


 第三の野球人生だ!


 竜斗〜大好き




 そして、例の週刊誌が謝罪文をデカデカと掲載した


 記者の捏造でした、誠に申し訳ございませんでした

 その記者は解雇しました

 と、載ってた


 これで完全終了!

 勝訴!


 みんなありがとう!本当にありがとう!

 竜斗守ってくれてありがとう!


 昔の言葉を、思い出す


 竜斗は、私に何かあったら守る、って言ってくれてた


 本当に守ってくれた


 ありがとう



 はづきさんはどうなったのかな。

 


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