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#13「未知なる再会」

「――夏休みが終わり、今日この北海道石狩陽翔学園始業式を開催するにあたって、今学期から新たに英蘭高校から121名の生徒と9名の教職員を正式に受け入れる事になりました」


 この学校の学園長と思われる50代あたりの若々しい女性が、ステージの上の中心で流暢に話す。その下で、僕を含む121名の生徒が体育館を埋め尽くした。静かに、ただ静かに話を体育座りをしながら聞いていた。


「……」


 始業式――英蘭高校に入学予定だった生徒達にとっては、これが初めての高校の入学式となった。希望は諍いによって不条理に砕け散り、全く志望していない学校に仕方なく入る事となったのだ。受け入れられた全生徒及び教職員の顔には、微塵も笑顔なんて言葉は存在していなかった。


 僕も同じだった。自分の意志で学校に行くとあの日誓ったとはいえ、志望すらしていない学校に無理矢理行かされたのだ。新たな学校生活が始まるワクワク感とか、そんなものは芽生えるはずがない。それは僕を含めここにいる121人に限らない。受け入れを拒否してそれぞれ他の学校に転入した人達にも言える事だ。



「――そんな皆さんに、この学園を代表して私が謝罪します。本当に、申し訳ございませんでした」


 生徒達は声には出さなかったものの驚きを隠せなかった。しかし学園長は謝罪の理由をすぐに答える。


「本来、この121名の生徒は、この学園との縁が無かった方たちです。しかしこうして、今目の前でこの学び舎の門を()()()()()()()()。それも最悪の形で。誰も望まない、誰も笑顔にしない……あまりにも理不尽としか言えない結果で、貴方達を迎えてしまった。貴方達の負ってしまった傷の痛みは、私達では決して計り知れません。これからも、貴方達にはとても辛い思いをさせてしまうでしょう。


 だからこそ、私達は貴方達に伝えなければなりません。この陽翔学園の良さを。どの学校にも誇れる魅力を。そして貴方達に思わせなければなりません。『この学校で過ごせてよかった』と。とても楽しかったな、と。たとえ傷を癒せなくても、痛みを誤魔化す事は私達でもできます。在校生の皆さん、教職員の皆様……どうか、彼らの負った傷を誤魔化しましょう。忘れさせましょう。楽しい思い出で、充実した学園生活で……心を埋め尽くしてあげましょう。それくらいしか、私達が彼らのために出来る事がありませんから」

「…………」


 少し悲しい表情を浮かべた学園長の言葉を、生徒達はしっかりと聞いていた。もうこの時点で『この学園は良い場所だ』と思う人はきっと少なからずいる事だろう。


 僕も、多少はこの不安が和らいだ気がした。


 始業式が終わり、先の暗い未来への不安で満腹の状態で、僕は体育館を後にした。そのまま気持ちを押し殺しながら3階にある1年生の教室へ繋がる階段を上っていく。


 ――その直後だった。


「――美尊君?」


 廊下を歩いている途中にふと僕の名前を呼ぶ声が聞こえ、ふと振り向く。そこにいたのは――


奏刃(かなは)……君!?」

「久しぶり。覚えていてくれて嬉しいよ、美尊君」


 視界に映る、オフホワイト色の柔らかい髪がふわりと風に揺れながら、にこっと微笑む美少年。彼こそ――僕が小学生の頃からの唯一の親友である、桐谷奏刃(きりたにかなは)であった。


「奏刃君……前に福岡に引っ越したはずじゃ」

「それがね、色々あって4月にこっちに戻ってきたんだ。それにしても、まさか僕の親友とこうして会えるなんて。これからの学校が楽しみだよ」

「僕の方こそ……奏刃君がいてくれて、おかげで不安が晴れた気がしたよ」

「ふふっ、それは良かった。あ、クラスは僕と同じだから案内するね。こっちこっち!」


 奏刃君に優しく左手を引っ張られながら、僕は新たなクラスの教室へと入っていく。中に入ると、またしても予想だにしていない事が。


「え、美尊君っ!?」

「えっ……あ、あゆさんっ!!?」


 教室に入ってすぐ目に入った、黒の短髪にサファイア色の瞳の……何度も見た少女の姿。


 そう、あの幻画想者(インフルエンサー)海月あゆこと、遠野歩夢さんであった。 

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