(エピローグ)その後の世界
――数年後、世界はようやく秩序を取り戻した。120億人を超えていた人口は10億人まで縮小した。虫とポールシフト、両方の影響だ。
私は過去の遺産、GLを再建した。子育てをしながら。
人口が大幅に減ったことで食料問題などは解決する。GLもイージーに設定して多くの人が寿命を得やすいようにした。
スカイは沙耶を完全にデリートした。代償は払ったが人類は堪え忍び、なんとか元通りの生活が送れている。
スカイと私の間に産まれた子ども、飯田ラインには安心して暮らせる世界を用意する。出来る限りの。
『ママ! オモチャ買って! 買って!』私とラインは地元のスーパーマーケットに来ている。何でもGL便りではいけないという教えを込めての買い物だ。
ラインは床に寝っ転びながらジタバタと駄々をこねる。
『先週、ミニカーを買ってあげたでしょ? ダメよ』
ラインはどうやら、ドローンが欲しいようね。まだ早いわ。
『F52スカイラインのドローンだよ。パパも喜ぶよ』
『パパは居ないのよ』
『…………パパはどこなの? ……うわ〜ん! パパに会いたいよ〜!』ラインは泣きじゃくってしまった。どうしよう……困るわ。
――ピピピ。ラインのウェアラブル端末が鳴った。
「よ〜、ライン。元気か〜?」
『…………パパ!? ぐすっ……今どこに居るの?』
「東京だよ、明日には帰れるから。泣くな、泣くな〜、アハハ」
『本当?』
『スカイ、お疲れ様。そっちはどう?』
「はぐれ虫が東京のサーバーに現れて退治したところだよ」
『そう、良かった。帰ってきたら、チョコレートケーキでも食べましょう』
『やった! ケーキだ〜!』
「じゃあ明日なライン、オズ」
――俺ははぐれ虫というバグの処理に当たっていた。これが結構厄介でGLから隔絶されているサーバーに現れる。GLに一瞬でも繋ぐと、そこのサーバーに逃げ込んで増殖する。種虫(女王)は残り2匹。フォールンエンジェルアローズ・ルシファーを撃った影響でバグが生じ、残った十数匹の虫が女王となり、人間に交戦をする。沙耶ほど強くないから抹殺は出来るだろう。かつてのトッププレーヤー達がパーフェクトモードでキルに当たる。問題はどこに現れるかだ、GL本体なら自宅からアタック出来るのに、トホホ。
俺は第4期復刻版R32スカイラインGTRを運転して中部地方へ帰る。
『ゆうこ、新しいボディーの調子はどうだ?』
『はい、とってもいい感じです』
ゆうこは助手席ではにかんでる。
『そうか、ふんふんふふふ〜ん』
『ご機嫌ですね』
『2週間ぶりにラインに会う、楽しみだな〜』
『スカイ様……あの時は危なかったですね。今考えても怖いです』
『沙耶をデリートした時か? ゆうこのスペックが沙耶を上回り、残り0.1秒で寿命を奪い返してくれた。危うくタイムアウトするところだったよな、アハハ。ゆうこはただのキュアー専用じゃない、カケ造じいちゃんの秘蔵っ子AIだ。カケ造じいちゃんは先見の明があったね』
俺は中部の自宅に着く。辺りは薄暗く、くたくただ。GTRを降りた時。
『パパ、お帰り』
俺はビクッとなる。ラインの気配が全くしなかった。末恐ろしいな、アハハ。
『ただいま、ライン』
俺は両手でラインを抱っこする。
『ゆうこもお帰り』
『ライン様、ただいまです』
『ゆうこ、悪い、ドア開けて』
『はい』
俺は久しぶりに自宅に戻った。オズは笑顔で出迎えてくれた。
『お帰りなさい、あなた…………』
俺は嫌な予感がする。オズはいつもスカイと呼ぶが、あなたと呼ぶ時は大体怒ってる。心当たりはあるが…………。
『なんだい? おまえっ』
『夜のお店に寄ってたでしょ?』
『アハハ〜、バレちゃったかいっ。悪いねっ』
許してもらう時はアナゴさんスタイルだ。
『全く』
『いや〜、東京でサトルとミセルに誘われちゃって。ただ、これだけは言わせてくれ』
『何よ〜?』
『スズンヌセンセーが経営してる店なんだよ。スカイ軍のトップが集まるなんてレアだろう? ジャックとゴンゾウのオッサンも一緒だった。決していかがわしい店じゃないよ』
『まあ、詳しい話は後にね』
『怖か〜』
『さあ、ライン、フライドチキンとケーキを食べましょ』
『わ〜い! 腹減った〜』
『ライン、ゆっくり食べるのよ』
皆でリビングへ行く。
『おばあちゃんの猪肉ステーキってヤツを食べてみたいな〜』
『スカイ……』
空中都市、ソラリスの存在は抹消され、地上との接触を禁止された。GLのシステムを根底からひっくり返されるからだ。地磁気逆転の影響が収まった今、ソラリスの存在価値は無限の寿命だけ……、それも破綻しかけてる。
『ライン、いいかい? おばあさんとおじいさんは遠い国に居るんだ』
『飛行機代が高いの?』
『後3年だ。3年も経てば日本に帰ってくるよ』
『本当?』
『ああ、日本が恋しいって言ってたし』
『長〜い。でもやったー』
ソラリスは無補給で8年くらいしか持たない。母さんと父さんもいずれ日本に戻るだろう。
――俺は夜中、寝室でGLにログインする。ウォーパークEXの手頃なテーブルは……ハイリミットが1つあった。すぐにエントリーした。少し待ち時間がある。すると、声を掛けられた。
「ユーザーネーム、スカイ!? いいのか? 君」
『あんちゃん、何か問題でも?』
「その昔、スカイ軍ってのがあってな。世界を救ったんだ」
『だから?』
「そんなユーザーネームにしてると狙い撃ちされるぞ」
『アハハ、それが狙いさ』
俺はオープンスコアにする。
「…………ウォーパークⅩの戦績が35000キル200ダイだと!? 本物のスカイ様? ……失礼しましたー!」
『どうだい? 同じテーブルにエントリーしないか?』
「えっ、遠慮させてもらいます!」
話し掛けてきた男は逃げるように去っていった。
「スカイ君、相変わらず、大人げないな〜」
『カニパンか、サイバーエメリッヒも何とか立て直したな』
「伝説の男がCEOをしている会社だからね。よっ! 社長〜」
『社長って実感ないけどな。それと、サトルをシバかないでね』
「もうシバいたよ、フフフ」
『そうか、アハハ』
「あら、スカイ、楽しそうね〜」
『オズ! これはただのミーティングだよ』
「ふ〜ん、まあ、いいわ」
「オズさんは束縛するタイプなのね。フフフ、ごゆっくり〜」
カニパンはログアウトした。
『なあ、オズ』
「何?」
『俺達は勝ったんだよな?』
「不可抗力…………いえ、人類は勝った。滅亡は免れたから」
『ああ……』
パッと画面が切り替わる。夜の廃病院のステージだ。200人対200人の総力戦。俺のアバターはアームテンタクラー。
「3、2、1、スタート!」
定番のアナウンスだ。ワクワクするぜ。
――終わり――
最後までお付き合い下さって本当にありがとうございます。
まだまだダメ作家ですが、これからも宜しくお願いします。
(´ω`)♪




