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失顔探偵 ᒐᘄがƕ たƕてい 〜失顔症のJKと所轄刑事の捜査チーム〜  作者: 路明(ロア)
第4話 花より団子よりお金でしょ

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余目総合病院 病院内カフェ

 余目(あまるめ)総合病院の病院内カフェ。

 飲み物と軽食が注文できるカウンターもあるが、壁の一角にはずらりと自販機が並び、そちらから飲み物を買うこともできる。

 三階の男性用トイレで採取されたという誰のものか分からない吐瀉物(としゃぶつ)を受け取りに、(まこと)百目鬼(どうめき)は訪れた。

 制服のミニスカートをひらひらとさせながら花織(かおり)がカフェに来る。

「ウイルスとかの心配があるから、お渡しするのにちょっとお時間もらいますって。お二人ともジュースでも飲んで待ってて」

 百目鬼が自販機の方を見る。

「警察署内のものみたいに安くないですけど」

 「やっぱりな」と百目鬼が顔をしかめる。

「警察って設置場所、無償提供してんでしょ? 謝礼受けとって捜査費用にしちゃったらいいのに」

 花織が言いながら自販機に小銭を入れる。

「謝礼受けとると、特定企業から利益を受けることになって法律違反なの」

 誠は言った。

「あ、なるほど」

 花織がチャリン、チャリンと小銭を入れる。

「わたしがお二人に飲み物(おご)ったら、賄賂(わいろ)になっちゃいますか?」

「それくらいは別に大丈夫だけど……」

 誠は言った。眉をよせて続ける。

「というかそれ以前に、未成年に奢ってもらうつもりないから」

「人見さんと百目鬼さんに、ミルクティー奢ってあげる。わたしが何かで捕まったら、お二人で調書の改竄(かいざん)とかやってくださいねー」

 言いながら花織がチャリンチャリンと小銭を入れる。

「要らない」

 誠は語気を強めてそう返した。

 百目鬼が、無視して別の自販機に小銭を入れる。出てきた飲み物のプルトップを開け、ごくごくと飲んだ。

「吐瀉物、もうちょっとかかるのかな」

 花織がカウンター上の時計を見上げる。

「うちの自宅で待っててくれても良かったんですけど。御園(みその)さんがまたお二人にミネストローネご馳走したいって言ってましたし」

「そんな訳にいかないでしょ」

 誠は顔を歪めた。

「というか花織さん、吐瀉物、吐瀉物って平気で言ってるけど」

「あ、気に障りました?」

 花織が言う。

「わたし割と平気なので。だって吐瀉物って吐いた人についての情報量すごいですから。まじまじ観察しちゃう」

 百目鬼が横で顔をしかめた。

「えと、刑事さん」

 カフェのドアが開き、女性の看護師が顔を出す。

「お渡しする準備できましたけど」

「あ、ども」

 誠がそう言うのとほぼ同時に、百目鬼のスマホの着信音が鳴った。

「あ、俺」

 百目鬼が花織たちに背中を向け通話する。

「院内のスタッフステーションに行ってくれってさ。俺らも行く」

 花織が目を丸くして誠の顔を見上げる。

「鑑識係員に来てもらう。僕らじゃ扱えないから」

 誠はそう説明した。

「俺らは、河で見つかった遺体の嘔吐の跡と、余目総合病院にあった吐瀉物がどこでつながったのかって、どう調書に書くか頭ひねんないとな」

 百目鬼がスマホをポケットにしまう。

「入れ替わった中の人が殺したんでしょ。ここの男性用トイレで毒飲ませて、死んだあと河に運んでドボンして入れ替わった」

 花織が腕組みする。

「花織さんの言ってたこと知ってたら、そう考えるのが一番素直なんだけど……」

「ほら見なさい。わたし言ったでしょ。大事件に発展したらどうするのって」

「いやまあ……」

 誠は溜め息をついた。

「で、今は? 入院してる人の方は?」

「さっき病室のなか覗いて挨拶しました。まだいます」

 花織が答える。

「とりあえず近づかないで」

「逃げないよう見張ってます」

「しなくていいから。危ないから」

 誠は顔を歪めた。

「入れ替わってるってのは、今のところお嬢ちゃんの観察眼からの推測だしな。そうだとして、目的なんだ」

 百目鬼が呟く。

「入れ替わる前の “佐藤 一郎(さとう いちろう)” は、勝手に整形されたって言ってたんでしたっけ。したのは今の “佐藤 一郎” ?」

 誠は(あご)に手を当てた。

「ふつうに考えたら、前の佐藤は、今の佐藤の顔にそっくりに整形された可能性が一番高いか……?」

「俺らが会ったのは今の佐藤ですよね。声が出ないふりをしていたのも、メモをさっさと捨てたのも、前の佐藤と違うと気づかれないため……」

人見(ひとみ)さんって、百目鬼さんと話すときは “俺”っていうんですねー」

 唐突に花織が背伸びして顔を覗きこむ。

「なんなの急に」

「べつに。使い分けてるんだなーと思って」

 「そりゃそうでしょ」と誠は返した。

「お友達に変なこと言わないようにね」

 誠が眉をよせると、花織はポンと手を叩きポケットからスマホを取り出した。

「人見さんは、百目鬼さんといるときだけ一人称が変わるの発覚。このちゃん、そういうの好きでしょ」

「なに書いてんの」

 誠は顔をしかめた。

「つかお前、なに腐女子にネタ提供してんの。ドM?」

 百目鬼が眉をよせる。

「人見さん、ドM疑惑」

 花織がさらに書く。

「やめなさい」

 誠は(ひたい)に手を当て(とが)めた。

「とりあえず司法解剖か何かで整形って分かるもんか? そこ確認してみるか」

 百目鬼が呟いた。





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