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失顔探偵 ᒐᘄがƕ たƕてい 〜失顔症のJKと所轄刑事の捜査チーム〜  作者: 路明(ロア)
第3話 汝の隣人を愛せない

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余目家近く コンビニエンスストア 1

 ワゴン車のドアを開け、(まこと)百目鬼(どうめき)はそれぞれに周囲を見渡した。

 県道沿いの住宅街。ぐるりと見回しても歩いている人間は数人ほどだ。

「どこ?! どの人?」

「いまの! ヒジャブみたいなの(かぶ)った人!」

「ヒジャブ?」

 誠は百目鬼と顔を見合わせた。 

 私服の女子高生とおぼしき年齢の子だけをさがしていた。

「軽に乗って行きませんでした?」

 花織(かおり)が道路の方に駆けより周囲を見る。

「さっきのシンガポールだかマレーシアっぽい人?」

「少なくとも日本人だと思いますよ。歩き方が日本人の女の人特有のものでしたから」

 花織が言う。

 そんなに特徴あんのか、という目で百目鬼がこちらを見る。

 誠は首をふった。可愛い歩き方と感じたことはあるが、それほど意識したことはない。

「ちょっと内股っていうか。欧米の人は、着物を着たときの歩き方を連想するみたいですけど」

 軽自動車が行った先の方を見渡している花織に、誠は近づいた。

「肌の色、全然違ってなかった?」

「なにか塗ってたんじゃないですか? めっちゃ濃いオークル系のファンデとか、もしかしてドーランとか」

「なるほど」

 誠は呟いた。通りすぎる車を目で追う。

「わたしは絶対に濃いオークル系ファンデの方だと思いますけど。しかも調剤薬局系の国内メーカーと断定」

「それも特徴に現れてるの?!」

 誠は驚いた。

 「ぜんぜん」と花織が答える。

「見た目じゃそこまで分かんないですけど、同じ女の子なら絶対にそうです。ドーランなんて肌に悪いから死んでも使いたくないもん。国産で調剤薬局系のメーカー一択」

 花織が力をこめて言い切る。

 これは参考として頭に入れておくべきなんだろうか。それとも花織の個人的な見解と受けとるべきだろうか。

「そのままで充分きれいなのに、そこまで気にするんだ」

「何おまえドサマギで口説いてんの?」

 いつの間にか歩みよっていた百目鬼が顔を歪める。

「い……いえ。口説いてませんけど」

 あわてて反論する誠に構わず、百目鬼が店内に向けて(あご)をしゃくった。

「店内のカメラ。いちおう確認しとくか」

 



 百目鬼が店内から出てくる。

「どうですか?」

 誠は問いかけた。

「令状ないからな。店内でチェックぐらいならいいってよ。お嬢ちゃんはダメだけど」

「ええー!」

 花織が声を上げる。

「そこまで聞いたんですか?」

「聞くまでもねえよ。ふつうダメだろ」

 誠の問いに、百目鬼がそう答える。

「大親友うさぎちゃんの捜索にどうしても協力したいんですって言ってもダメ?!」

「学年違うからどの子かも分からなかったんでしょ?」

 誠は眉をよせた。

「わたし泣き真似できますよ?」

「……やらなくていいから」

 誠は口元を歪ませた。

「まあ個人にまで見せるなんてのは、よほどいい加減なところくらいだから、しゃあねえ」

 百目鬼が頭を掻く。

「僕らだって令状なしだと断られることもあるんだからね」

 言いながら誠はスマホを取りだした。

 花織に送信してもらった澪緒(みお)の動画をチェックする。

「これでぜんぶ?」

「ぜんぶ」

 花織が唇を尖らせる。

「ありがとう。照らし合わせてみる」

「どんなだったか、あとで教えて。でないと二人がうさぎちゃんのこと捜査してるって学園内でめっちゃバラしちゃうから」

 花織がぷっと頬をふくらます。

「まあ……捜査に支障のない範囲なら」

 誠は顔をしかめた。

 花織がこちらの顔を見上げる。ニッと口の両端を上げて、勝ち誇ったように笑った。

「わたしの言ったとおりでしょ。買い物に来てるってことは、うさぎちゃん自主的に家から出たってことじゃないですか?」

「分かんないよ。誰かに脅されて行動を指示されてるのかもしれないし」

 誠はスマホを操作した。

「きっと親が大富豪のキモヲタとの見合い持ちこんで、うさぎちゃんイヤがって逃げたとかですよ」

「……勝手にストーリー作らないで」

 誠は眉をよせた。

 いくつかの動画に映る宇佐美 澪緒(うさみ みお)を眺める。

「ん……」

 澪緒の口元に違和感を覚えて、誠は画面を拡大した。

 二、三度ほどだが、口元が不自然に引きつっている気がする。

「たまたまかな」

「おい、行くぞ」

 百目鬼が店の入口扉を開けて声を張り上げる。

「あっ、はい」

 誠は返事をしてスマホをポケットにしまった。

「あとは一人で帰って。ここからならすぐでしょ。気をつけて」

 そう花織に告げ、誠は店内に向かった。





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