第16話「リーブルの街」
翌朝ユウト達は食事を終えて、出発の挨拶をするためにギルド長の元へ行った。
「ユウト様、冒険者ランクをまだ決めていないのですが、どのランクに致しましょう。」
ギルド長がユウトに尋ねた。
「アリーナ、冒険者ランクって何?」
ユウトは良くわからないのでアリーナに聞いた。
「冒険者ランクは、冒険者の強さに応じて与えられるものです。」
「下から、アイロン、ブロンド、シルバー、ゴールド、プラチナとなっています。またそれぞれにプラスとマイナスがあり3段階になっていて、全部で15ランクとなっています。」
「ユウト様達は、当然プラチナプラスとなりますが、それで宜しいですか?」
ギルド長がユウトに尋ねた。
「プラチナプラスはほとんど居ないので、少し目立ちすぎます。ランクを競うつもりもないので、シルバーくらいで良いと思います。」
アリーナがそう言うと、アークが「ランクはそれくらいで良いんじゃないか。」と言うので、シルバーにしてもらった。
ギルド長の話では冒険者ランクによって、受けることの出来る仕事の難易度が変わると言うことだった。
ユウト達は報告をして報酬を受け取る予定はないので、依頼だけ確認できれば良く、無理に高ランクにする必要はなかった。
ただ、何もしていないと思われてもいけないので、時々は依頼を受けて報告はした方が良いとギルド長がアドバイスしてくれた。
「ところでユウト様、ミナレ国ではタナンの街に滞在されるのですよね。」
「はい、その予定です。」
「宿泊はギルドをお使いになるのですか?」
「アリーナ、どうする予定なの?」
「ギルドの宿泊施設を使う予定です。」
「タナンのギルドはランクによる差別が激しいと聞いております。シルバーランクだとあまり居心地は宜しくないかもしれません。」
その話を聞くと、アグネスやマリヤが「えーやだぁー。」と言って騒ぎ出した。
「実は、タナンのギルドの近くに、最近イーデル国の国民が商館を開きました。そちらには宿もありますので、そちらをご利用になれば綺麗なお部屋をご用意できると思います。」
「じゃ、そこを使おうか。」
ユウトが商館を使いたいと言うと、ギルド長が紹介状を書いてくれることになった。
「で、ご身分はどう伝えれば宜しいですか。」
アリーナは少し考えると「イーデル国民には隠すこともありませんので、次期魔王と書いてもらって構いません。ただし、イデール国民以外には秘密にするように書いておいて下さい。あと、ミナレ国にいるイーデル国民にユウトが身分を隠していることを告げておくことは出来ますか。」
「はい。では、各地に伝令を送り、その旨告げておきます。」
「有り難うございます。では、宜しくお願いいたします。」
紹介状は通行証と一緒に出発前にもらうことにして、ユウト達は出発の準備のために各自の部屋に戻った。
荷物をまとめるとユウトは、ギルドの入り口へと向かった。
しばらく待っていると、皆準備を終えて集まってきた。
全員がそろうとギルド長がやってきて、アリーナに通行証と紹介状を渡した。
「どうもお世話になりました。」
「こちらこそ、魔物を退治していただき有り難うぞざいました。道中お気をつけて。」
ギルド長に挨拶するとユウト達は2台の馬車に分かれて、街に東門を目指した。
東門を出ると周囲に人が居ないのを確認して移動門を開き、ミナレ国との国境近くまで移動した。
国境にはイーデル国の検問所が有り、アリーナが皆に手を振ってあげてと言うので、ユウトは御者をしているカルマの横に座って検問所へ入った。
検問所では兵士達が小さな国旗とユウトの旗を振って歓迎してくれた。
(あ、もう、これが私に旗になってしまうのかな・・・))
ユウトは複雑な気持ちになったが、それでも立ち上がって兵士達にお辞儀をすると、手を振りながら進んだ。
馬車の中でヨシマサとアグネスが「よ、ユウト、人気者」とはやし立てたが、聞かないふりをして検問所を通り抜けた。
イーデル国の検問所を抜けて少し進むと、国境を示す旗が立ててあり、更にその先にはミナレ国の検問所があった。
検問所に入るとユウト達は一旦馬車を降りて、検問官の元へ向かい、通行証を見せた。
「イーデル国の冒険者の方々ですね。ようこそミナレ国へ。一応規則なので、馬車を調べさせていただきます。しばらくお待ち下さい。」
検問官達が数分で馬車を調べ終わると、ユウト達は再び馬車に乗り込み、タナンの街へと向かった。
ミナレ国では冒険者が不足しているようで、検問所はほぼ素通りのような感じだった。
検問所を出てしばらく進むと馬車を止めて今日の予定を話し合うことにした。
「地図によると、このまま進むと一時間ほどでリーブルという小さな街があるようです。そこで昼食を食べようと思っています。そこからタナンまでのんびり進んで四時間ぐらいだと思います。」
アリーナがそう言うと、「めしー」とケインが大声で叫んだ。
「一応、リーブルを出たらカルマとマルカに周辺を調べてもらい、魔物どもが居れば討伐しながら進んではと思っています。」
「この道は交易商達も利用しているようなので、通行の安全を確保するという意味でも討伐しておいた方が良いね。」
ユウトがそう言うと、皆も同意した。
「じゃ、リーブルへ行って飯を食おうぜ。」
ヨシマサに急かされて、皆は馬車に乗り込んでリーブルを目指した。
リーブルを目指す間、多くの商隊とすれ違った。
商隊には冒険者が同行していたが、ほとんどはブロンズ以下の冒険者だった。
「アリーナ、ブロンズだとどの程度まで対処できるの?」
ユウトはアリーナに聞いてみた。
「そうですね、小さな魔獣と小鬼くらいならなんとかなるでしょうか。オークだとよほどよい武器を持ってないと難しいでしょうね。」
「じゃ、シルバーはオークくらいまでって事なのかな。」
「はい、そうなりますね。」
そんなことを話していると、リーブルの街に着いた。
リーブルは小さな街だったが、ハーフェンに近いこともあって街は賑わっていた。
リーブルはハーフェンとタナンの中継地で、多くの商隊が昼食をここで食べているようだった。
街の大通りを進んでいくとケインが「あそこー」と指さすので、見てみると食堂があった。
ヨシマサも「めしー、めしー。」と騒ぐので、その食堂で昼食を食べることにした。
屋外にもテーブルと椅子が並べられていたので、ユウト達は外で食べることにした。
料理はほとんどハーフェンで食べたことがある物で、ケインとヨシマサは少しがっかりしていたが、結局「うまい、うまい。」と沢山食べていた。
ユウトは食事を終えると、近くで食べていた冒険者に声をかけてみた。
その冒険者はブロンズマイナスのプレートをつけたミナレ国の冒険者で、この街を拠点に活動していた。
リーブルは交通の要所と言うこともあって、小さなギルドがあるらしく、ここの冒険者達は魔獣や小鬼の討伐をやっているようだった。
更に話を聞いてみると、たまにオークを見かけるが、この街の冒険者では手が出せないので、時々タナンから冒険者が来て討伐していると言うことだった。
亜人の奴隷についても聞いてみると、この街にはイーデル国の商人も多く立ち寄り、奴隷を使っているとイーデル国の商人が取引してくれないし、店も使ってもらえないので、奴隷は使っていないと言っていた。
(とりあえず亜人の保護はここでは必要なさそうだ。)
話を聞き終わるとアリーナが皆を集めた。
「この街には、ブロンズランクの冒険者がいて、小鬼や小さな魔獣はまかせても良さそうなので、タナンまではオークやオーガが居たら討伐することにします。」
「あと、大きな群れ以外は、2人で討伐に向かうことにします。」
街を出ると、カルマとマルカが偵察に出て、馬車は連結してユウトが御者をすることになった。
(どうやら、今日は出番無しだな・・・)
しばらく行くと、オークを数カ所で見つけたと報告が有り、2人でペアを組んで討伐へ向かった。
その後もオークを見つける度に討伐に向かいっていたが、街まで一時間ほどの森にオーガが5体居るという報告が入った。
昨日武器に属性を付与したこともあって皆行きたがったが、アーク、ケイン、マリア、ヨシマサ、セナの5人が向かうことになった。
現地に着くと、まずヨシマサが弓に魔力を込めた。
弓の色が緑に変わると、「強弓」と言って、矢を放った。
矢は風を切り裂きながら進んでいき、見事にオーガの頭を吹き飛ばした。
残りの4人も武器に魔力を注ぎ込んでオーガに向かって駆けていった。
アークの槍先は水色の光を放ちオーガの頭を貫き、ケインが大剣を振り下ろすと何の抵抗もないようにオーガを真っ二つに切り裂いた。
マリアとセナもあっさりオーガを倒し、あっという間に5体のオーガを倒してしまった。
その後もオークを見つけると討伐しながら進み、タナンの街に着く頃には日も沈んで暗くなっていた。




