第十二章 萩原リーダーの息子、誘拐される
一目瞭然:(いちもくりょうぜん)ものごとの有様が、一目見ただけではっきりとわかるさま。
咥える:(くわえる)口に軽くはさんでささえ持つ。口にはむ。
眩しい:(まぶしい)光が強くて目をあけていられない。明るく輝いていてまともに見られない。
所謂:(いわゆる)世間一般にいわれている。また、一般にそうたとえられている。俗にいう。
隈なく:(くまなく)行き届かない所がなく。余すところなく。すみずみまで。
夜が明けると警視庁から萩原リーダーに緊急連絡が入った。
「君の息子が誘拐されました。誘拐犯からの要求は、君が松田長官の護衛を解除する事です。誘拐犯には、“現在連絡中ですが、任務中の為に連絡が取れない。もうしばらく待って頂きたい。”と伝えています。犯人は盗難した携帯を使用している為に、どこのアンテナを使用しているのか迄しか特定できませんでした。再度連絡があれば君の通信機にも接続します。」との緊急連絡で萩原リーダーの顔色が変わった。
通信を確認したサクラが松田長官に伝えると逆探知の指示をした為に、サクラは次回連絡時に逆探知する事にした。
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萩原リーダーが困っていると犯人から連絡があった。
「時間稼ぎをしているようなので時間を指定します。一時間後に萩原の息子を処刑します。処刑中止の条件は、先程説明した通りだ!」と一方的に喋り電話を切った。
萩原リーダーは対応する時間もなく困っていると松田長官が、「サクラが今、逆探知しました。サクラに救出させましょうか?考えておいて下さい。」と協力を申し出た。
萩原リーダーはしばらく考えて、護衛を解除しても息子が無事に戻って来る保証はないと判断した。
以前サクラから、“私の事が解れば声を掛けて下さい。“と言われていたので思い切って松田長官が連れている女性の所へ行き、「あなたがサクラさんですね。」と確認した。
松田長官は、「どうやら、あなたがサクラの正体に気付いたらしいとサクラから先日聞きました。さすがですね。」と感心していた。
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萩原リーダーは、「救出するという事は、私の息子がどこに監禁されているのか判明したのですか?犯人は携帯を使用しています。今の短い会話で逆探知できたのは、このクルーザーには電波探知機のようなものが搭載されているのですか?」と携帯の発信源をどうやって確認したのか納得できない様子でした。
サクラは近くを飛行しているセスナ機を指差して、「携帯はあのセスナ機から発信されていました。ここでは携帯のアンテナは立ちませんが、一旦陸地に戻り、燃料補給して発信していました。萩原さんの息子かどうか解りませんが、あのセスナ機に子供を確認しました。クルーザーの外に警備員達がいる為に護衛している事が一目瞭然に解ったのだと思います。」と返答した。
萩原リーダーは、「何故そこまで解るのですか?ただの電波探知機ではないようですね。」とこのクルーザーは、ただのクルーザーでないと気付いて双眼鏡で確認した。
萩原リーダーは、「私の息子に間違いありません。救出お願いできませんか?」とこのクルーザーの性能に期待した。
サクラは、「私は松田長官の指示で動いています。松田長官の指示があれば救出します。」と返答した。
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松田長官が救出の指示を出すとサクラは、「セスナ機に横付けします。」と今から救出する事を告げた。
萩原リーダーは、「えっ!?横付け?」とサクラが何を考えているのか理解できませんでした。
クルーザーは一度潜り、上昇してあっという間にセスナ機の横に行き、サクラがドアから外へ出た。
萩原リーダーが松田長官に、「サクラさんが落ちた!」と慌てていた。
松田長官は、「落ちたのではなく飛んだのですよ。」とセスナ機の後方を指差した。
萩原リーダーが確認すると、雲の中にサクラが飛んでいる姿が見え隠れしていた。
萩原リーダーは自分の目を疑い、「えっ!?」と何がどうなっているのか解らずにいると、サクラは首の長い空飛ぶ怪獣に変身してセスナ機に接近した。
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とりあえず警備員達を心配させないように、「クルーザーには潜水艇の機能もあり、潜水テストをしているだけです。すぐに浮上します。」と無線連絡して安心させた。
海坊主のメンバーもサクラに気付き、「うわっ、怪獣だ!」と慌てて逃げようとしていた。
サクラは首をセスナ機に突っ込んだ。
海坊主のメンバーは慌てて、「来るな!化け物!」と叫びながら銃を発砲したが、サクラには歯が立たなかった。
サクラは、萩原リーダーの息子を口に咥えてUFOに戻った。
海坊主のメンバーは、怪獣がUFOに入った為に、宇宙人が地球人の体を研究する為に、怪獣を使って子供を拉致したと判断して、自分達も拉致されないように、「解剖される!」と慌てて逃げた。
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萩原リーダーは息子を抱き締めて、「あなたは体の形状を変形させる事ができるのですか?」とサクラが人間でないと気付いた。
サクラは怪獣から女性の姿に戻り、「ええ、自由に変形させられます。小百合さんが拉致されていた時は猫に変身して近くにいました。」と返答した。
萩原リーダーは、「あの猫がサクラさんだったのですか。でも今回は何故怪獣なのですか?」と怪獣に変身した理由が理解できない様子でした。
サクラは、「この姿で救出に行けば、海坊主のメンバーは銃をあなたの息子に向けて脅迫するでしょう?まさか怪獣相手にそんな事はしないと思ったのでね。」と怪獣に変身した理由を説明した。
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萩原リーダーは、「しかし、先程長官が、ここから空を飛んでいるサクラさんを指差しました。海坊主に気付かれていたのではないですか?」と確認した。
サクラは、「地球人には光シールドも有効なので、バリアよりエネルギー消費の少ない光シールドを、先程一度海に潜った時に張りました。地球人には、眩しく輝く円盤にしか見えません。内部は見えませんので大丈夫ですよ。光シールドはバリア程強くない為に、核兵器は防げなくても銃弾程度程でしたら防げます。」と説明した。
萩原リーダーは、「それでは、この乗り物はクルーザーではなく、所謂空飛ぶ円盤すなわちUFOですか?あなたは宇宙人なのですか?」とサクラが特殊部隊の秘密兵器でない事を確認した。
サクラは、「私はアンドロメダ星雲から来たテレジア星人です。このクルーザーがUFOだと気付かれないように、一度海に潜り、光シールドを張りました。」と返答した。
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萩原リーダーは、「それでサクラさんは、私達が確認不可能な事を簡単に確認できるのですね。観光旅行の時は、あなたが護衛していますが、業務中あなたはどこから護衛しているのですか?近くにいるのは、あのコチコチ頭の・・・・」と確認しようとしているとサクラが秘書に変身した。
萩原リーダーは、「えっ?!」と自分の目を疑い言葉を失った。
サクラは、「コチコチ頭で悪かったですね。今、体の形状を変えられると説明したでしょう?詳しくは松田長官に聞いて下さい。」と返答した。
松田長官は、「これは極秘事項ですので、これ以上詳しい説明はできません。モーターボートに乗っている警備員達に説明するかどうかはあなたの判断に任せますが、宇宙人だなんて信じますかね?」と指示系統が異なる為に命令できないので、それとなく口止めした。
再び海に着水して一度潜り、光シールドを解除して浮上した。
萩原リーダーは全てを理解したが、大型モーターボートに乗っていた警備員達は、松田長官が乗っているクルーザーが、海の中から出現したUFOだとは気付かず、誘拐事件があった事も気付かなかった為に、萩原リーダーは息子に別の部屋で隠れているように指示した。
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目的地に到着すると松田長官は、「今から潜りますが、モーターボートの警備員達はどうされますか?警備員達には、このクルーザーには潜水艇の機能もあり、先ほど潜ったのはそのテストだと説明していましたよね。」と警備員達をそのまま放置できないのでどうするのか確認した。
萩原リーダーが警備員達に説明すると、サクラと一緒に仕事したくない小百合は猛反対していた。
萩原リーダーは、「モーターボートは海に潜れない。」などと説得して、小百合も仕方なく了承した。
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サクラは警備員達とモーターボートをクルーザーに乗せて透明シールドを張り潜った。
矢張り目的は沈没した豪華客船でした。不安定な場所に沈没していて、上には岩石が乗っていた。接近すると、また大きな岩石が上から落ちて来た。
萩原リーダーは宇宙にも飛び出せるUFOだから大丈夫だと判断したが小百合は、豪華客船は潜水艇でも潜れない深海に沈んでいると聞いていた為に不安で、「危険ですから引き返しましょう!」と不安で一刻も早く安全な場所に避難しようと助言した。
松田長官は、「小百合さん、怖くなったのですか?だから最初に帰るように忠告したでしょう。」と忠告した。
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松田長官はサクラに、「岩石を排除して目的の物を捜して下さい。」と警備員達に気付かれないように、通信機で指示した。
すると松田長官と一緒にいた女性が、「トイレに行く。」と席を外した。
しばらくすると地震が発生して大量の岩石が上から落ちて来た。
沈没船は更に深い海溝へと沈み、クルーザーもその場所で、岩石に埋まった。
警備員達が焦っている中、松田長官は通信機でサクラに、「サクラ、大丈夫ですか?」と確認した。
サクラは、「はい、大丈夫です。客船内部に侵入成功しました。今からそちらに立体映像を送信します。どうすれば良いのかご指示願います。」と返答した。
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小百合は、“このクルーザーが岩石の重みで潰れて死ぬ前に、任務を遂行して本部に報告するのかしら?私なんか、おしっこちびっちゃったのに、特殊部隊の長官ともなれば私達とは違うわね。”と感心して死を覚悟していた。
警備員達は、沈没船の中はどうなっているのだろうか?と思いながら待っていると、皆のいる場所に、小百合が拉致されていた時の立体映像が映し出された。
警備員達が、「おっ、凄い小百合が素っ裸だぜ。開脚させられていて女性器を広げられ丸見えだぜ。」と喜びながら立体映像の近くに集まった。
小百合は慌てて、「何しているのよ!」と警備員達を突き飛ばして、立体映像の前に立ち塞がり、「何よ!これ。皆見ないで!サクラさん、何考えているのよ!酷いじゃないの!リーダーも笑ってないで何とか言ってよ!」とぶち切れた。
萩原リーダーは、「申し訳ない。予想外の映像だった為に思わず噴き出してしまいました。」と小百合に謝っていた。
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サクラは、「あっ、失礼間違えました。」と切り替えた。
皆のいる場所が、丸で豪華客船内部のように、部屋全体に立体映像が映し出された。
松田長官の指示で客船の設計図を捜して、サクラの透視力もフルに使い内部を隈なく捜していた。
結局保存状態が悪く発見できず、念の為に、それらしいものを回収した。
捜索終了後サクラが、「それではクルーザーをリモートで操舵します。」と捜索終了を宣言した。
小百合は、“どうやってこの岩石の中から脱出するのかしら?サクラさん、こちらの状況を全く把握していないようだわ。最後にサクラの焦っている様子を見て死ぬか。”と脱出を諦めて死を覚悟していた。
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次の瞬間、クルーザーは岩石を押し退けて沈没船の所まで移動した。
小百合達警備員は、クルーザーの威力に驚いていると、サクラがクルーザーに戻ってきた。
松田長官は警備員達に聞こえないように小さな声で、「サクラ、戻るのが少し遅かったようですが、何かあったのですか?」と確認した。
サクラは、「いえ、別に何もありませんでした。海の臭いがすれば警備員達に気付かれる可能性がある為にシャワーを浴びていただけです。」と返答した。
その後、回収した資料を調べると違う事が判明した。
結論として最初から存在しなかったのか、保存状態が悪く跡形もなくなっていたかのどちらかだと判断され、松田長官の極秘任務の為の休暇旅行は終わった。
しかし松田長官は最高機密資料を発見していてサクラに指示してその資料だけ抜き取っていた。したがってそれ以外の資料を調べても資料は発見できずに最初からなかった事にした。
後日松田長官は総理大臣を訪問して、この資料が他の職員の目に触れる事を防ぐためにこのような事をしたと直接報告していた。
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萩原リーダーはサクラの正体を知り、サクラには敵わないと判断してサクラと張り合う事は諦めた。
警備員達は、「立体映像は迫力が違うな。それも拡大されていたようですし良い目の保養をさせて頂きました。」と小百合をからかっていた。
小百合は、“先日といい今回といいサクラの奴、覚えていろよ!いつか仕返ししてやる!”とサクラにリベンジする事を決意していた。
サクラは海に潜った時、体全体に激痛があり痺れたが、呪縛中の為に松田長官には逆らえず、大丈夫だと報告して死ぬ思いをしていた。
シャワーを浴びたのはその為でしたが、命の恩人を心配させる為に、その理由については報告しませんでした。
テレジア星人の弱点が塩だとは、テレジア星に塩が存在しない為にサクラも知りませんでした。しかし何かあると判断して、呪縛から開放されればテレジア星に報告して、秘密調査官だったら、必ず原因究明してくれると信じて調査依頼しようと考えていた。
サクラは、“お陰で立体映像を間違えましたが、小百合さん怒っているだろうな。悪い事したな。でも、それで死を覚悟した暗い雰囲気を解消できたのだからいいか。”と思っていた。
次回投稿予定日は、5月13日です。




