御曹司1
しかし、最近の夏華の会話は、解らない言葉が多くなって来た。
「インスタってやっぱり良いよね、FBより良いかも知れない……。
でも、ギャップ萌えって有るよね。あいつのあんな所みたらクラっと来るかも……???」
「……萌え~か……萌え~ね……」
僕はそう言う言葉が出る度に、「そうか、そうだね。ふん、ふん」と、まるでお爺さん見たいな口調になって行ったが、それでも二人で話すときは、ずいぶん夏華が言葉を選んでくれているのは感じていた。だって、同期の仲間と話している時の夏華の会話はまるで火星語だったし、知らない言葉がいっぱいあった。
そんな時なにかの会話から、夏華が毎晩あの御曹司と話しをしているのが解った。話しているのはゲーム上。夏華はお姫様で御曹司は王子様みたいなのだが、あの時御曹司から貰ったのは、そのゲーム上のかなり貴重なアイテムらしい。なかなか手に入れるのは難しいもので、夏華は今そのゲームに夢中になっているのが解った。
古い記憶なのだが、僕が夢中になったのは一時期流行ったゾンビ―のゲームくらい。それ以外のゲームで興味を感じたものはないが、夏華達がやっている様なゲームは、きっと『萌え~』が解らないと駄目なんだろう。
画面上に繰り広げられる、どんどんスクロールする会話は、見ただけで気持ちが悪くなる。ここまで来ると本当にお爺さんだが、いくら誘われてもオンラインゲームなど参加する気はしないのだから仕方がないだろう。だいいち御曹司に主導権を握られているゲームの世界など、よしてくれと言いたくなる。やっぱし僕は御曹司にヤキモチを妬いているのか。俺と夏華の間に入って来るな。本音はそこだったが、悟られるのも癪で極力知らないふりをしていた。
それからも夏華は御曹司の事は普通に話すし、携帯にも毎日の様に電話があった。僕の前でも悪びれる事もないし、そんな御曹司の存在は、いつしか僕公認のボーイフレンドになっていた。
身内は誰も入院していないのに、御曹司は電話だけでなく毎日の様に病院に来る。いったい何をしに来るのか。何を話しているのか。夏華がどんな対応をしているのか。仕事が忙しかったので、あんまり彼らの話に参加する事はなかったが、やっかいな奴と知り会ったのは間違いなかった。




