異常者達の遊戯 二頁目
「無意味に恥の上乗りをするなんて何を考えている? もしくは考えなしの馬鹿という事か?」
「一国の主に対して酷い言いぐさじゃないか。寛大な心を持つアタシは許すけど、場所によっては絞首刑にされても文句は言えないよ」
「で、何がしたい? 君よりも寛大な心を持つ僕が一度だけ付き合ってあげるよ」
「凄いね! 聞いたうえで更なる無礼を重ねてくる! 最高だよアンタ!」
乱暴な足取りで来た道を戻り、ついさっきまで座っていた椅子にドスリと座り直すゴットエンド。
そんな彼と会話をしたアダメント=ラントは、これだけ非常識な態度を取られたにも関わらず楽しそうに笑う。
「あー笑った。こんなに笑ったのは久々だよお客さん!」
「殺して欲しければ葬式の方法も含めて遠慮せず言ってくれ。全部叶えて見せると約束しよう」
「いやいや! 自分の治める国で戦争しようとは思ってないよ! アタシがしたいのは、軽い余興さね」
「………………具体的には何をする?」
「そりゃお前、ここがどこだと思ってるんだよ。カジノだよカ・ジ・ノ。となりゃやる事なんて一つだけさね!」
「………………これだけ馬鹿みたいに勝った僕にギャンブルを挑むというのか。正気を疑うよ」
次いで語られる言葉の数々を耳にして、退屈そうにしていたゴットエンドは口にした通りアダメント=ラントの正気を疑うが、それを聞いた彼女はかぶりを振った。
「『ギャンブル』とさえ言えないもんさ」
「何?」
「荒稼ぎした客を相手に国の代表が出てきて勝つ。んで、奪われた物を奪い返す。しかも方法はギャンブル! おりゃ流石にダサすぎだろ。だからその金は持って帰ってくれていい。その上で『運試し』を一つ挑みたいって言ったんだよ」
「耳と頭を疑うな。そこまでする理由がどこにある?」
「あるさ。なにせアタシは実力だけじゃなく運も総動員してここまで上り詰めた女だ、とするなら、アンタとアタシ、どっちの方が優れた運を持っているか知りたいと思うのもおかしくないだろ」
「………………くだらないプライドだな。だが一度だけ付き合うと言ったからね。乗ってやるよ。で、何をする。ブラックジャックか? ポーカーか? それともスロットやルーレットの類か?」
「そこらへんは掛け金を使った駆け引きあってこそだろ。それ抜きで考えるとしても、目前に迫った閉店時間を考えれば短期決戦が望ましい」
「ならばくじ引きかコイントスでもするか? 一番単純な運試しだ」
「そりゃ流石に味気なさすぎるだろ!」
「ワガママな奴だな。なら………………」
直後に自身のやりたいことを明確に説明するとゴットエンドが案を出すが上手く決まらず、そんなタイミングでシャンデリアの光に照らされた彼の視線がこの場に残った二人の観戦者。
すなわち後ろに居たシェンジェンとイレの方に向けられ、
「そこの君達、何かいい案はないかい?」
「………………いきなりでびっくりしたよ。特にないです」
単刀直入にそう尋ねるが、残念ながらシェンジェンはいい案を思いつかず、これを聞いたゴットエンドは少し離れた位置にいる本人の耳に聞こえるほど大きな音で舌打ちをした。
「じゃあババ抜き一発勝負とかどうです! コイントスとかよりは勝負要素がありますし、運要素もマシマシですよ!」
ただ隣にいたイレはシェンジェンとは異なり自身の意見を言い、
「いいじゃないかそれにしよう!」
それを聞いたところでゴットエンドはため息を吐くのだが、向かい合って座っているアダメント=ラントは嬉々とした声をあげ、
「………………下らないな」
吐き捨てるような勢いでゴットエンドは言葉を付け足すが、それ以上否定の言葉を口にすることはなく、これを同意と見た事で二人が戦う競技は決まった。
「でだよ。こうやってカードを配りながら言うのもちょっと卑怯な気もするけどさ、勝った時に貰える物は何がいいと思う?」
「ただの運試しじゃなかったのか?」
「そうは言ったけど、流石に何もなしじゃつまらないじゃないか!」
「好きにしたらいいが、軽いものをオススメしよう。でなければ負ける君が辛いだけだぞ」
直後に審判役になったイレが嬉々とした様子でバニー服に着替え、新品のトランプをアダメント=ラントから受け取り耳を揺らしながらシャッフルしていると、机の上に頬杖をついた彼女が楽しそうに笑いながらそう提案。
腕を組んだままのゴットエンドは変わらず退屈そうな様子で返事を行い、そんな彼を前にしても彼女は態度を崩さない。
「ならありきたりだけど『相手に好きな事を一つ命令できる』なんてことにしよう。『死ね』とかみたいな極端な奴はなしでね」
「君、僕の話を聞いてたのか? 自分の首をそこまで絞める意味がどこにある?」
最後の一枚まで配られたところでアダメント=ラントは提案を行い、ゴットエンドが再びため息を吐きながら自分の前に置かれたトランプの山に触れ持ち上げると、同じ数字のカードを捨て札に置いていき、残ったカードを使って勝負を始めるという段階にまで進んでいく。
「まぁいい。ならその権利をありがたく使わせてもらうとしよう」
そんな当たり前の未来を『果て越え』は否定する。
シェンジェンにイレ。それに真正面にいるアダメント=ラントが見ている前で手札を減らしていくのだが、それは途中で止まることなく最後まで行われる。
つまり勝負を始める以前の段階で、ゴットエンド・フォーカスは自身の手札を使い切ったのだ。
「………………………………………………………………なるほどね。アンタ、想像以上だよ」
さしものアダメント=ラントもその結果には驚いた様子で、何も言えない様子のシェンジェンとイレが見守る中、これまでとは異なる色の声を上げながら降伏した事を示すように両手をあげ、
「何でも一つ願いを叶える権利に関してだが、質問するから正直に答えてもらおうかな」
「スリーサイズに抱いて来た男の数。武勇伝に国を上手く動かす方法まで、好きな事を聞いてくれ。嘘偽りのない答えを教えてやるよ!」
笑いながら豪快に言い切るが、目の前にいる男はこの状況でもなおも態度を崩さず、
「君、何者だい? 『突然現れた超新星』なんて呼ばれてるけどさ、本当に突然過ぎるだろ。十年前までこの星のどこにもいなかったはずなのに、どこから現れたんだい?」
淡々と事務的に、聞きたかった事を尋ねる。
『お前はこの星にいるはずのない異分子である』と突きつける。
すると両手をあげたままのアダメント=ラントは一瞬虚を突かれ神妙な表情になるが、すぐに先ほどまでと同じ豪快な笑い声をあげ、
「そりゃ命に関わる問い掛けだね。だから残念ながら答えられない!」
「………………いいさ。最初に言った通りこれは余興だ。『僕の方が優れた運命力を持っている』。それを証明できた時点で問題ない」
「けどまぁ、近いうちに知ることができるよ。『神の子』ゴットエンド・フォーカス」
鼻で笑いながら自身の勝利を誇示する男を前にして告げるのだ。
ごくごく一部の者しか知らないはずの彼の素性を知っていると。
「………………貴様」
とすれば呼ばれた本人もこれまでとは異なる態度を示すがそこまでだ。
「………………………………次に会う時を楽しみにしてるよ」
なぜならこれは余興なのだ。
両者の内心にどのような思惑や真意があるにせよ、最初に言った通り戦争を起こすような事はなく、
「じゃあね! 楽しかったよ世界最強!」
負けたアダメント=ラントは上機嫌に。
「帰る」
「あ、この硬貨の山は?」
「そんなものはいらん。君たちが好きに使え」
「えぇ………………」
勝ったゴットエンド・フォーカスは不快げに舌打ちをしながら、その場を去った。
と同時に場を支配していた異様な空気も掻き消えていき、シェンジェンとイレの全身からは大量の汗が零れだす。
「おうお前ら! こんなところで何してやがる! つか少しコインを分けてくれねぇか。全部なくなって飯が食えねぇ!」
そんな二人を修学旅行の空気に戻してくれたのは十枚のコラントを全て使い切った我龍で、彼等はゴットエンドが置いていった大量の金貨の内の一部を持って帰ると、夜通し遊びつくした。
そしてゴットエンドが稼いだ金貨の半分以上を一夜で失った。
ここまでご閲覧いただきありがとうございます。
作者の宮田幸司です。
夜無き国『ハンティプン』のお話はこれにて終了。
久々にシェンジェン以外視点、というより初のゴットエンド視点のお話ですが、書いてて思いますが理不尽ですねコイツ。
欲しかった情報やら自己満足感をほとんど手に入れて帰ってますよ。
逆に言えばそんな彼でもアダメント=ラントの持つ一番重要な部分だけは手に入っておらず、最後に機嫌が悪いのはそれが原因ですね。
『格下が僕の目的を阻むんじゃない』という感じです。理不尽だ。
次回はもう少しだけハンティプンの話をして次の場所へ。
四大勢力巡りに戻ります。
それではまた次回、ぜひご覧ください!




