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その思いはまだ胸に


 戦いは終わった、間違いなく。

 それはルールに関して覚えている者ならば誰でも察している事であるが、納得したかどうかと言われれば話は異なってくる。


「み、認められるか! こんな…………こんな呆気ない終わりがあってたまるか!」


 そんな者達全員の総意を示すように声を荒げたのはこの戦いに挑んだ選手が一人。

 勝敗が決した事を示すアナウンスが鳴ってなお戦意を隠そうともしない天致勇美で、体中の傷を修復しながら、全身から漂わせていた怒気を練気に変換していく。


「第二回戦だ! 運営! 預けていた神器を返せ! もう一度! 全身全霊で勝負をするぞ!」

『いやちょっと待ってくれ大将! 流石にそれは許可できないぜ! 渡したらアンタ、死ぬまで戦い合うつもりだろうが!」

「黙れ! 貴様らに口出しされる筋合いはない!!」


 直後に園内全域に聞こえるような声で彼女は声を上げるが、聞いた運営側の反応は当然のもので、『ならば無理やり取り返す』という様子で彼女は踵を返す。


「…………マズイ事態だな。動くか?」

「落ち着けゼオス。こうなった場合の対処法とて彼らは十分に考えているはずだ。部外者が無闇に頭を突っ込むべきじゃない」


 その状況を観客席から見たゼオスが横にいるレオンに問いかければ、彼は至極冷静な態度でそう指摘。

 納得する理由であったゼオスは持ち上げかけていた腰を下ろし、この事態の行く末を見守る事を決め、


「待つんだ勇美君! なにも殺し合いにまで発展しなくてもいいじゃないか! 今回の負けをバネにして、次に戦う時に勝てばいいはずだ!」

「え? 貴方、は?」

「君と彼の素晴らしい戦いに心打たれた一観戦者だ! だから殺し合いなんて事はさせられないな!」


 そんな二人の視線の先。

 天致勇美の背後に見覚えのある巨体があった。

 ゆえに急いで視線を横に向ければ………………いないのだ。

 二人がこれからの動きを決めているあいだに既に、シュバルツ・シャークスは動いていたのだ。


「………………………………」

「部外者は、無闇に動くべきじゃないと思うなぁ………………」


 即断即決というべきであろう。

 あまりの早業にゼオスは鉄面皮を貫いたまま微動だにできず、レオンは腰に手を当てながら同じ言葉を繰り返す事しかできずにいた。


「い、いきなりやって来て何を言う! さっさと手をどけ………………いや力が強いな!?」

「一度冷静になるんだ勇美君。落ち度を認め、悪しき点を改善してこそ戦士というものは強くなれるのだ!」

「貴様ぁ………………話を聞かないタイプの人間だな!」


 そんな中で勇美とシュバルツの二人はそのような会話を繰り広げ、そのあいだに運営側は突然現れた不審者を前に、決めていた対処法を行おうと動き出し、


「いやそんなつもりはないんだが………………すまない興奮していた。君の落ち度に関しては………………私の友人に説明してもらおう!」


 彼らの動きを察知して、シュバルツが動く。


「このマイクは園内放送をすることができるかね?」

「あ、はい」

「すまないがちょっと借りるよ!」


 近くにいた運営の生徒から持っていたマイクを借り、囲まれるよりも早く跳躍。


「レオン君。解説役を頼めるかね」

「………………………………なぜ俺に?」


 多くの人らが突然の事態に加え、瞬く間に消え去った巨体に対し困惑する中、当の本人は観客席にまで瞬く間に帰還。

 持っていたマイクをレオンの前に差し出すと、彼は梅干しを一気に三つ食べた時のような渋い顔になった。


「こういう時に効果があるのは、有名人の顔じゃないか。となると君以上の適役はいないだろう」

「………………俺、観戦に来ただけの、部外者」

「ぬぅ。ダメか」

 

 次いで苛立ちを込めながら念押しするように言えば、流石のシュバルツも強く言う事が出来ず自身のこめかみを掻き、


『おおっとこれは意外や意外! まさかあの! レオン・マクドウェル様がいらっしゃるとは! よろしければぜひ! 今回の試合に関してお言葉をいただけませんか!」

「!?」


 しかし直後にこの場所まで飛んでやって来た少女。

 シェンジェンのファンであるアヤ・シンシャが念話で『お願いします! お願いします!』と涙ながらの懇願を行うとレオンとて折れるしかなく、


「………………彼らの勝敗を分けた要素は戦術面だけで言えば、視野の広さにある」


 マイクの電源を切り、放送を聞く人らに知られぬよう一度だけ特大のため息を吐く。

 それを終えるとマイクのスイッチを入れ直し、普段通りの凛々しい声でそう発言。

 自分のするべき事に取り掛かり始めた。


「と、おっしゃると?」

「天地勇美は途中から、ヌーベ・レイを倒す事に意識を集中させていた。言い換えれば他にも戦いが終わる条件があることを忘れていたんだ。だから負けたわけだが、これはヌーベ・レイが色々と努力した結果でもある」

「努力ですか? そこんところを詳しく教えていただいても?」

「彼がした努力は二つ。一つはルールに接触して天地勇美を負けさせるために、他の三か所の戦場に戦いながら近づいた事。もう一つは、その過程で色々な施設を壊したことだ。二つ目に関しては彼女に、周りの景色から自身の意図を悟られないためだと考えられる」

「色々と考えていたんですね~」

「だろうな。ただそういう細工をされたからと言って彼女の失態がなくなるわけじゃない。これは決してやってはいけない敗因だった」


 途中で行われる合いの手に応えながらレオンは解説を続けていくが、その語気が強まる。


「それはつまり…………戦士として失格という事ですか?」

「いやそうじゃない。むしろ完璧である必要はないと俺は思ってる。そういう心構えに関して学ぶことが学校の意義だからな」


 不意の変化に驚いたアヤ・シンシャがすぐにそう尋ねるがレオンは否定。彼が指摘したのはまた別。


「彼女が意識しなくちゃいけなかったのは、この最終戦に至るまでに多くの人の協力があったという事だ。それを覚えていたとするなら、周りが見えなって失格負けなんて失態を犯す事はなかったはずだ。そしてその場合、残っていた体力の差で君は勝っていたはずだ」


 すなわち『おのれが大将である自覚を持て』という事で、聞いていた勇美は反論する事ができず、唇を噛んで俯く事しかできなかった。


「さて次はヌーベ・レイに関する評価だが」

「すごいな。様になってる。やはり私の判断は間違っては…………いやなんでもない! 忘れてくれ!」


 続けてヌーベに対する品評まで始めたところでシュバルツは己が判断の正しさを知り胸を張りかけるが、直後に強烈な敵意を注がれればそれ以上の言葉は発せず体を小さくして、


「………………接戦を制した勝者にケチをつけるのもどうかと思うし、本人も気づいているはずだ。よってこの場で指摘する事は控えさせてもらう。以上だ」


 その姿を見届けたレオンが解説を続行しようとするが中止。

 そんな彼に対し不信感を覚える者もいたが、喝采の拍手がそれらを上回った。




 それから数分後、午前中に実施する要諦の全ての試合が終わり昼休憩の時間が訪れる。

 このタイミングでシェンジェンとエラッタは治療を受けているヌーベの元に急ぎ、我龍はレオンとゼオスの二人に修行を付けてもらいたいと懇願。

 これを二人は拒んだのだが、この際にシュバルツが乗っかり、レオンとゼオスの二人が『徒手空拳ならば自分達より遥かに強い』と言った事で我龍はシュバルツと昼時間一杯修行を開始。

 後にシェンジェンが聞いた感想は『なんだありゃ、ホントに人間か?』というもので、口では誤魔化したものの内心では激しく同意した。


「ずいぶんと優しいじゃないか。お前ならばあの小僧の失態にも気づいているはずだろう?」

「なんのことだ?」

「とぼけるな。ヌーベ・レイは鞘を壊したが、タイミングが悪すぎた。自己再生以外のタイミングで壊していれば、場外になぞ持ち込む必要はなかったんだ」


 となると観客席に残ったのはレオンとゼオス、エヴァとアイリーンに鉄子の五人で、まず最初に鉄子が倭都の面々と合流。ゼオスは仕事に向かって行き、そのタイミングでベンチに座り足をブラブラとさせていたエヴァがそう質問。レオンが短く返事をすると嬉々とした様子で語り、


「意地悪ねエヴァ。貴方ならその理由だってわかってるはずでしょ?」

「………………ふん。年長者として指摘しておいたまでだ」


 けれどアイリーンがため息交じりにそう告げると、鼻を鳴らしながらそっぽを向いた。




「タイミング悪すぎ。もうちょっと考えなよ」


 一方の医療用テントでは、シェンジェンが同じ質問をベットで寝ていたヌーベに語っていた。


「そうだな。僕のミスだ。すまないね」


 するとヌーベはベットの上に横たわったまま素直にそう謝り、物足りなさを感じていたシェンジェンは口を尖らせながら唸り声をあげ、


「なんにせよ物足りないなー。結局一回も戦えてないし。後半もこんな感じだったら不貞腐れるよ僕は」


 頭の後ろで両腕を重ねながら愚痴を一つ。


「いやそうはならないだろう」

「なんでさ?」

「忘れたのかい。僕たちは――――――」


 そうならない理由をヌーベが説明すると、鼻歌を歌いながら軽快な足取りで午後の部で動き回るため食事を求め外に出ていき、エラッタも一言いいながら会釈すると外へ。


「悪いなシェンジェン。そこだけは譲れなかったんだ」


 周りに誰もいない事を確認すると息を吐き、天井代わりの屋台骨と白い布を見つめ、


「好きな子にもしもの事があったら、一生後悔しちゃうからな」


 子供の頃に絶対に負けたくないと思い努力し続けた理由にして、高校で再開してから一度も戦わなかった理由を一人ごちた。

ここまでご閲覧いただきありがとうございます。

作者の宮田幸司です。


おかしい、今回は二千字ちょっとで終わるはずだったのです。

ですがいざ書いてみたら倍になってる罠。

ただまぁ、満足いくエピローグになったので自分で自分を許しています。

長文が苦手な方はすいません。お許しください。


という事で本編は渋々ながら見事仕事を果たしたマクドウェル卿の解説。

そしてヌーベが胸中に秘めていた思いを口にする回です。


彼の思いがいつ、どのような形で結実するかは、またどこかで。


次回からは後半戦。といってもメインのバトルは前半戦に固まってるので、後半は短めです。


それではまた次回、ぜひご覧ください!

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