アクマ
日が暮れすっかり暗くなった街
昼間も夜間も多くの人で賑わい
毎日毎日お祭りのようなところだ
しかし、今は全くそのような状況ではない
2体の怪物が街で暴れている
怪物が壊した建物からは火柱が起こり
そこら中で火事が起こっている
「こっちだ!!!怪物!!」
黒く染まった大剣を持ち叫ぶ少年
龍崎柊真
巨大な斧を持つ狂牛人に飛び込み対峙する
が未だダメージを与えられずにいた
狂牛人はただひたすらに斧を振り回しているだけ
しかし、こちらが攻撃を仕掛ける瞬間
しっかりと対応し斧を構えてくる
でかい図体の割には意外と隙がない
早く終わらせないと街の被害は大きくなる
「早く止めねぇと……」
龍崎はヒット&アウェイを繰り返しながらも
弱点を探っていた
時同じくして、
龍崎が対峙している場所から
少し離れた所
シェザリア=ロードはもう一体の狂牛人と闘っている
彼の血武器は〈吸収〉
〈倍加〉、〈放射〉
という3つの力を持っている
ロードは敵の攻撃のエネルギーを吸収、
それを体内で威力を倍にし、
敵に放出する という闘い方であるため、
敵の攻撃を吸収できない限り
彼に攻撃手段はない
ロードもまた狂牛人に近づけずにいた
(まずいですね……)
ロードは〈吸収〉の力を自由に使える訳ではなく、
ごく僅かな時間 コンマ何秒の間だけ〈吸収〉の力が使える
敵の攻撃とタイミングがズレると
まともにダメージを喰らってしまうため
迂闊に仕掛けることができない
故に龍崎もロードもジリ貧状態でいた
「くっそ!!!埒が明かねぇな!!」
龍崎は大剣を構え飛び込んだ
牛型の怪物はしっかりと斧で護る
その斧もまた強靭かつ強固
2m弱の剣で壊せる訳がない
「やっぱ無理か……ならこれでどうだ!!!」
龍崎は大剣から漆黒の力を解放する
龍崎自身この力に意味があるのかは分からない
しかし、こうするしか方法は無い
どうにかなってくれ
その想いが余計に剣を握る力を強くする
漆黒の力はどんどんと溢れ牛型の怪物と龍崎を
しっかりと包み込んだ
(なんだ…これは……)
作り出された空間には光は無い
なのに龍崎の体 牛型怪物の体はしっかりと見えた
狂牛人も混乱したのか
はたまた魂が抜けたのか
ただひたすらに 静かに立っている
(今なら……)
龍崎は ハッとして意識を剣に集中させ
牛型怪物の胸に斬り込みを入れようとする
が感触がない
斬っても斬っても空ぶるばかり
(一体なんの空間なんだ……?)
龍崎は意識を思考に集中させた
「柊真!!」
久しい誰かの声
「柊真!!!」
どこかで聞いたことのある声
「柊真!!!!!」
目を開くとそこには破滅の悪魔と呼ばれる少女がいた
「ここは……?」
辺りを見回す
どうせまた夢の中だ
久しぶりに来たな……と思ったがそれは
視界に映ったもので否定される
「!?狂牛人……」
目の前には巨大な体を持つ牛型怪物
と少女
「これ何?なんで暴れているの?」
少女は明るい口調で聞いてくる
知らない と答えた
「で?君達はこれと闘っている……と……」
少女はやや声のトーンを下げた
「どうした?」
と聞くも少女は俯いたままだ
「何かあったのか?話しなら聞いてや……」
申し訳ないと思いつつ心を覗こうと話をするも
遮られた
それどころか少女は泣いていた
「え!?ちょ!?どうした!?」
龍崎は慌てふためいた
「ひ、久しぶりに会えたのにぃ~
なんか怪物いるしぃ~二人きりじゃないしぃ~」
少女は目に沢山の涙を浮かべて言った
龍崎はどうしていいか分からないのでとりあえず
ハンカチを渡した
「あ、ありがとう~ お詫びに何かしてあげようか~?」
そんなつもりで渡して訳では無いが
お詫びに という少女の気持ちを無下にはできない
「何してくれるんだ?」
龍崎は聞いた
少女は答えた
「あの怪物を君のペットにする!ってのはどう?」
「……は?」
予想外の答えに間抜けな声が出た
何故ペットに……
という質問はできなかった
彼女が紡いだ言葉によって
「君はもうちょっとしたら
決定戦に出なければ行けないんだよ 悪魔界のね!」
俺は少女が何を言っているのか理解できなかった……