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第二章「王都ヨキフ」 21.2話

本日1度目の投稿です。 今日もよろしくお願いします。

 翌週には第2学期が終了し冬期休暇が始まった。

休暇初日の夜にフルト侯爵館でマーカス王子とナタシア王女の歓迎パーティが開催される。

僕はジェリナ様に断りを入れてパーティの数時間前から伺(うかが)っていた。


「今日はどうしたの?」

 僕の大荷物を見てジェリナ様が尋ねる。

「まだ調理は始まっていませんよね」

「だと思うけれど」

「実はパンを焼きに来ました」

「はぁあ?」


 パーティの話を聞いてから大急ぎで材料を揃え天然酵母を仕込んだ。

朝からパン生地を準備したが招待人数に充分な生地を捏ねるのはなかなか大変だった。


「なのでパン窯を使えるように厨房の方に頼んでいただけますか」

「はいはい」

 ジェリナ様は呆れ顔で、メイドさんに厨房へ用件を伝えるよう頼んでくれた。

 これだけの数を自分で焼くのは初めてだが、姉さんがいつも焼いていたので段取りは熟知しているし元々は聡の記憶だ。

メイドさんから話が伝わった頃合いを見計らって厨房にお邪魔する。


     *


「あぁ仕上がりがご心配でしょうね。サンプルを持ってきたので試してください」


 僕は料理長にパンを差し出す。彼はパンを手にして『おっ』という顔をした。

「これは貴方が焼いたのですか?」

「ええ、生地から全て僕が作ったパンですよ」

僕とパンを交互に見やって一片千切って口に運び、しばらく咀嚼して呑み込んだ。

「本当にこのパンが全員の数だけ焼けるのですか?」

「これから一緒に焼きましょう、これで」


 僕が大荷物を開いてパン生地を取り出すと、彼は目を見開いて眺め匂いを嗅いだ後、

「おい、パン窯の準備だ。温度と時間はどれ位ですか?」

「いつものパンより温度は高めで時間を2分短く」

「おい、聞えたか。それと皆、今日のメニューを変えるぞ。メインの野牛はシチューからステーキにする。シチューに用意した野菜はスープと付け合わせに使う。前菜は……」

「あの、前菜にこれを使いませんか?」


 僕は荷物の中から猪のミートローフと山鳥のテリーヌを取り出した。

天然酵母の仕込みの合間に昨日数本ずつ作っておいた。

酵母液の世話しながらパーティのコース料理の事を考えていたら急にレシピを『聡』が思い出したから。


 料理長は一切れずつ切り取って口にして目を見開いた。

「貴方はいったい何者だ!他に何が作れるのですか?」

「僕は騎士爵家の次男。今はそれ以上でもそれ以下でもありませんよ。料理も思い付いた物しか作れない素人です」


 ちょうど焼きあがったパンが運ばれて来た。

「このパンとこの料理が作れる貴方が素人ですか……。ほら皆、このパンを戴いてみろ。少しずつだぞ」


 厨房の人達がパンを分け合ってミートローフとテリーヌの欠片を乗せて齧り、目を丸くしている。

次の投稿はお昼前後の予定です。

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