第二章「王都ヨキフ」 21.1話
本日最後の投稿です。20.3話20.4話をお読みで無い方はそちらからどうぞ。
「フィンリー君は居るかなぁ」
午前中の講義が終わって昼を何にしようかヨーザイルと話していると、後ろの出入口から声が掛かった。振り返ると見覚えのある人が扉から中を覗き込んでいる。
「フィンリー、呼ばれてるみたいだけど。誰なんだい?」
「うん、ご指名みたいだから行ってくるよ。昼は別になりそうだから皆と済ませてね」
覗き込んだ上半身の後ろにジェリナ様の姿が見える。
これは休み時間いっぱい拉致されるパターンだろう。
ヨーザイルも様子を察したようで『じゃあ、後で』と、あっさりと離れてくれた。
「お呼びですか、マーカス様」
「元気だったかい?ご無沙汰でも無いけどね。今日からこちらにお世話になるので挨拶に来たよ」
「フィンリー、マーカス様が君と食事したいそうです。外の店に席を取ってあるから一緒に行きましょう」
ジェリナ様が少なからず窶れて見えるのは気のせいだろうか。
「帝国の動静がはっきりするまでの間、一旦一族を分散させようと云う事になってね」
ジェリナ様が気を利かせて個室を頼んでくれたので込み入った事も話しやすい。
「父上と母上は国を離れる訳にはいかないが、叔父と姉上は使節の名目で既にトケアに入ってそのまま公館に留まる予定でね。僕は留学、妹は来春入学と云う事でヨキフで一緒にお世話になる事になったのさ」
「その登校初日の昼食の相手が騎士爵の次男と云うのは少し悪ふざけが過ぎるのではありませんか」
「何を言ってるんだい、四王国武闘会の優勝チームリーダーが。しかも公爵家や辺境伯家の子息と友人だって聞いたよ。僕にとって君はこの学院の最重要人物だよ」
「『あのベルナールだし』って聞えた気がするのですけれど」
「あっはは。良く判ってるね。でもね、僕は真剣なんだよ」
「はあ」
「正直言うとね、僕自身の事はどうだって良いんだ。僕は留学だし何時までこちらに居るかも分からないからね。でも入学する妹はこちらで卒業する予定だから、僕が居なくなっても彼女を託せる相手を探さないといけないんだよ」
「ごめんなさい!僕には無理です」
「即答かあ。まぁそうだろうね。知らない相手の面倒を見ろって言われても、僕だって無理と思うし」
「ご理解ありがとうございます」
「そう云えばもうすぐ冬期休暇に入るんだよね。フィンリー君は休みには予定があるのかい?」
「ジブリス、辺境伯領都で過ごす予定です」
「そうか……。ジェリナさん、学期末とか年末のパーティの予定は有りませんか?」
「心当たりはございませんが、お二人の歓迎パーティの事は考えていましたので、バロマッド様と相談して早目に開催いたしましょう」
「それはそれは、ありがとうございます。フィンリー君、招待客第一号として是非とも出席してくれたまえ」
「承知いたしました」
王子さまは何か思惑あり気だけれど、考えてもしようがない事なんだと自分に言い聞かせるしか無かった。
あぁあ……。
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