第二章「王都ヨキフ」 12.4話
本日最後の投稿です。12.2話、12.3話がまだの方はそちらからお読みください。
「ねえ、君。君!本当にこんな杖で武闘会に出るのかい?」
「は、はい。それでお願いします」
周囲の出来事に気を取られて武具を預ける途中だった事をすっかり忘れていた。
「分っているんだろうね。本番で皆が持ち込む武具は試合用や訓練用じゃなくて本物なんだよ。こんな杖一つで楯も無しで本当に大丈夫なのかね」
「えぇ、大丈夫だと思います。それが無いと困るので是非お願いします」
こんなところで仗を取り上げられてはかなわない。
まあ、職員さんが心配するのも無理は無い。
武闘会等で使われる武具や闘技衣それに貴族が持つ戦闘用の武具には補助の陣図効果が付与されている。
魔具士なら誰でもペタっと付与できる簡便なものと思われているが、『陣図鑑定』で調べて驚いてしまった。
恐ろしく緻密な魔陣図で構成されていて周囲の魔力を使用者に供して当人には何の負担も掛からないようになっているようだ。
おそらく此れも遺失魔法を訳も分からずに複製して使っている物の一つなのだろう。
僕の仗はそんなありがたい効果があるように見えないからこそ心配してくれている訳だ。
「まぁ、訓練用の武具も貸出し出来るから、困った時はすぐ借りに来なさい」
係の人は憐れむような口調で締めくくった。
きっと武具も買えない食い詰め貴族だと思われたのだと思う。
その時、高位貴族たちの後ろの集団から一番前にいた男子がスーっと近寄ってきた。
「ほう。パノンでは棍棒の殴り合いが流行っているんですか」
ジェリナ様達の挨拶に一区切り付いたのを見計らったとしたら絶妙のタイミングだ。
高位貴族たちの耳目を集めたのは大成功だね。
ジェリナ様の険しい視線に『大丈夫ですよ』と頷いておく。
ヤルツーク男爵と云い、ヨキフでは終ぞ見掛ける事の無い異才が集まるのですねぇ、こちらの王都には。
「何でもパノンでは公爵家と辺境伯家を含めた高位貴族のチームが騎士爵家と平民落ちのチームに負けたそうではないか。マジャンでは考えも及ばない事が海の向こうでは起こるらしい。いやぁ全く驚いたよ」
彼は右手を額に当てて俯き加減に首を振った後、大袈裟に両手を広げて天を仰いで見せる。
「ありがたい事にね、そのチームと一回戦で当たるのは僕達なのだよ。パノンの高位貴族より優れた所を見せるチャンスを得るとは、僕等はなんて幸運なのだろう」
ほほう、わざわざ嫌味を言いに来てくださったのですか、それはそれはご丁寧な事で……。
神様、ようやくテンプレの出番です。
やっと、やぁっと、『ざまあ』が出来そうな予感がします!
最後までお読みいただきありがとうございます。明日からもまたよろしくお願いします。
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