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友人の彼女と手作り弁当

「うわっ、涼しいっ!」


 建物の中に入ると冷気が肌をうつ。

 ものすごく温度が低いわけではないのだが、表の気温と比較すると冷たく感じた。


「あっちのテーブルでいいよね?」


 白石さんはご機嫌な様子で前を歩いていく。俺はそんな彼女についていきながら周囲を見渡した。


 周囲のテーブルでは来客が丼やラーメンにうどんなどのしっかりとした食事をしている。

 表のフードコートではフライ系などつまみが多かったのに対し、こっちは普通のメニューを取り扱っているようだ。


「とりあえず、ここにしよっ!」


 4人掛けのテーブルにバスケットを置いた白石さんは、早速蓋を開けると中身を取り出し始める。

 そんな様子を見ていて俺は一つ気付いてしまう。


「もしかして……手作りだったりする?」


「えへへへへ、頑張って作ってきちゃいました」


 俺の質問に妙に可愛らしい仕草で答えてくる。


「いや、悪いよそんな……」


 ここの入場チケットも出してもらっているのだ。お昼代ぐらいは俺が出すべきだと考えていたのだが、これでは世話になりっぱなしになってしまう。


「いいの。私が裕二君に食べてもらいたくて作ったんだし」


 いつの間にか裕二君と呼んでいる白石さん。親戚の演技は野村さんの前だけで充分なんだけど……。


「それよりせっかく作ったんだから食べてみてよ」


 目の前にはおにぎりやサンドイッチに唐揚げ、タコさんウインナーなど。バラエティー豊かな料理が広がっている。それらは俺が好きなメニューばかりだった。


「じゃあいただきます」


 白石さんに促されて俺はサンドイッチに手を伸ばす。中に赤い肉のようなものを挟み込んでいるそれを俺は食べると……。


「美味しいよ」


「本当っ!?」


 見守っていた白石さんが嬉しそうな顔をする。

 肉は柔らかく噛みきれて、旨味が口いっぱいに広がる。


 ニンニクとスパイスが効いているのか満足できるボリューム感がある。


「これはね、コンビーフを炒めてシーズニングスパイスと刻みニンニクを混ぜたものなんだよ」


 俺が美味しそうに食べていると、白石さんがこのサンドイッチを作った時の話をしてくれる。どうやらスパイスに拘ったみたいで、以前食べた繊細なカニチャーハンと比べると味付けが濃い。


「もしかして、この前俺が濃いめの味付けが好きっていったから作ってくれたの?」


 ふと考え付いたままに聞いてみる。


「う、うん。裕二君はそっちの方が喜んでくれるかなと思って」


 その言葉に心臓が跳ね上がる。確かに「次に料理をする時は」と言っていたのでその通りに実行したのだろう。


「そ、そか。ありがとうな」


 俺は勘違いしないように自分を戒めながらそう言った。

 もっとも身体は熱くなっているし、心臓の鼓動はますます激しくなっているのでそれにどれ程の効果があるかは疑問だが……。


「し、白石さんも食べなよ。これ一人じゃ食べきれないし」


「う、うん。そうだね」


 何故か二人揃って顔を赤くした俺たちは、白石さんが作ってくれた弁当を頑張って平らげていくのだった。






「ふぅ。流石にお腹いっぱいだ」


 しばらくして、テーブルに広げられていた弁当を片付けた俺たちは食後の休憩をしていた。

 途中で飲み物が欲しくなり、俺は二人分の飲み物を買ってきた。

 白石さんはストローで飲み物に口をつけると笑顔で俺を見ている。


「いい食べっぷりだったね。やっぱり裕二君も男の子なんだね」


「ちょっと量が多かったけどね」


 どうやら食べっぷりを気に入ってくれたらしい。以前に、たくさん食べる人が好みだと言っていたからな。誠二も細身の割には良く食うので、普段はこうして料理を振舞っているのだろう。


「そうだ、弁当代払わないと」


 俺は慌てて財布を取り出すのだが……。


「えっ、良いよ別に。家の冷蔵庫にある食材使って作っただけだもん」


 だが、白石さんは受け取る気がないのかストローを指で弄っている。


「そんなわけにはいかないだろ。お世話になりっぱなしなのは落ち着かないんだよ」


 俺がそう言うと、白石さんは口をすぼめて不満そうな顔をする。


「それだよ裕二君!」


「えっ? 何が?」


 突然勢いよく指を差されて俺は困惑する。


「これまで散々お礼をさせて欲しいってRIMEしたのに全部スルーしたでしょう? 私だってお礼ができなくてずっともやもやしていたのっ!」


 彼女にシャワーを貸したことや家に泊めた時のことを持ち出してきた。


「いや、だって……。あれはそんな大したことじゃないだろ?」


 特に金銭的負担があったわけでもないし、何より善意によるものなのだからそれを押し付けるつもりはなかった。

 俺がそう言い訳すると……。


「だったらこれだってそうだよ。このリゾート施設も私がきてみたかったからだし、弁当も私が食べて欲しかったの。全部自分の為にやったんだから裕二君が気にする必要はないんだよ」


「そうは言っても……」


 頭の中で計算した限り彼女の方が損をしているのは間違いない。気持ちというのなら相手より多く返さないと気が済まないのだが……。


「だったらちょうど裕二君にお願いしたいことがあるんだけど」


 そんな俺の心境を察してか、白石さんは手をパンと叩くと笑顔を見せた。


「ああ、俺でできることなら別に構わないけど……」


 気圧されながらもなんとかそう返す。


「うん、これは裕二君にしかできないことだからね。是非聞いて欲しいな」


 俺にしかできないことなんてあるのか?

 そんな疑問を浮かべていると、白石さんは形の良い唇を開くと言った。


「これからは私のことは愛華って呼ぶんだよ」

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