第六拾七話「クリスマス・クルシミマス?」後編
アリスと恵理子が中心となって、クリスマスケーキの制作に入ったのは、十二月二十三日の早朝。
生クリームのホイップなど、一晩おいたらまずくなるんじゃ…
「準備に時間をかけて、一気にやっつけるのよ!」
「はい、がんばりましょう!」
ベスおばさん、マリアおばさんを中心に、近所のおばちゃんたち、娘たちも総動員でオシリスマスケーキを盛大に作るのだ。
本日は、集中してスポンジづくりを行う。
「孤児院の子供たちの分も、教会に来る年よりにも、いっぱいふるまうからね!」
「「「「「おおー!!!」」」
「はあ、みんな元気だねえ。」
「なに言ってるのお屋形さま、ドードー鳥が足りないわ、獲ってきてくださる?」
チコに詰め寄られて、やることのないカズマは森に行くことになった。
「ちょうどいい、新しいメイスの試しをしてくれ、不具合があったらなおす。」
あれからずっと滞在しているチグリスは、退屈なので着いてきた。
ラルもいっしょだ。
ちんからりんと、パリカールの馬車が行く。
今度は、北側の森に来た。
「おお、なんか林檎とかブドウとか、いっぱいできてるな。」
「ほんとだ、お屋形さま取ってきてもいい?」
「ああ、ほらこれに入れてこい。」
カズマは、革袋を渡した。
ラルは、嬉しそうにそれを受け取り、馬車から飛び降りる。
カズマ馬車を下りて、周囲を警戒する。
幸い、周りには魔物の姿はないようだな。
ラルは、果物の木に駆けより、よさげなものから袋にしまう。
後刻、これはケーキの飾りになるのだろうか?
それとも、ラルがこっそり食べるのか?
チグリスは、無茶苦茶濃いカルヴァドスを、瓶ごと持ってきてぐいぐい開けている。
あれで、酔わないとは思えないんだけどな。
カズマなど、匂いだけで酔いそうだ。
アルコール度数にして五十五度。
普通の人間は、むせて呑みこめないだろうな。
それでいて、顔が赤くなるとかは少ないのがドワーフと言う人種なのだ。
まさに、酒を飲むために生まれてきたと言っても過言ではあるまい。
それでいて、動作に乱れたところが見られないのは流石といえるものだ。
がさりと音がして、ホーンラビットが顔を出した。
いつものウサギより一回り大きい、一.五メートルはある。
「ウサギだ。」
カズマの声に、チグリスは納谷悟郎のような声で答える。
「ふん、ウサギだな。」
チグリスは、馬車から下りようともしない。
カズマは、油断なくメイスを構えて、ウサギの次の行動を探る。
ラルは、ハサミしか持っていないしな。
わざわざ、木剣しか持たせていない。
だっと地面を蹴って、低い体勢でダッシュをかけたウサギは、いちばん弱い個体のラルに向かう。
「させるか!」
俺は、自分の右後ろからメイスを回して、ウサギの眉間めがけて先端を打ち込む。
ウサギは、それを短い(十五センチくらい)角ではじき返し、さらに足を出す。
そのままの体勢から、ウサギの腹に向けてけり上げると、ウサギは垂直に飛びあがった。
もちろん自分の意志で飛びあがったわけではない。
好むと好まざるにかかわらず、上空に舞い上がったのだ。
空中で身動き取れないうちに、その頭にメイスを叩き込むと、湯気を出して地面にめり込んだ。
「よし!」
「どうだ、使い勝手は。」
チグリスは、一連のカズマの動きに注視していた。
使い勝手も何も、すべて見えていることだろう。
カズマだって、それくらいはわかっている。
「うん、前のと同じくらい動ける、先が少し軽いけど、バランスはいい。」
「そうか。」
開けたところで火をおこして、チグリスはどっかりと座った。
まあ、気にするだけ無駄だ、イノシシごときでチグリスがやられるわけがない。
カズマは、腰の袋から同じ酒を出して、チグリスの横に置いた。
チグリスは、黙って頷く。
「ラル、モモがないか探そう、イチゴもほしい。」
カズマは、森の木々を透かして、木の実を探している。
「わかった。」
森の中は、どこも木の実がいっぱいだ。
「これは、またワインづくりをしたほうがいいな。」
「お屋形さま、みんな呼んでくる?」
「まあ、それは明日でもいいさ。今日は、ドードー鳥が目的だからな。」
「はーい。」
森の中にはドードー鳥だけじゃなく、イノシシも森オオカミもいる。
ジャイアントディアーなんかに出会った日には、こっちの命もあぶない。
草食動物のくせに、気が荒くて大きな角でもって刺し殺される。
ラルは、半年ほど近衛兵たちや陸軍歩兵隊などにまじって修行を重ねてきたので、かなり使えるようになってきた。
まあ、なんだかんだ言っても一〇歳のガキだからな、そこまで体力もないから長時間は戦えない。
それでも、陸軍歩兵であったらそこそこ三本に一本くらいは取るようになった。
「あと三年もしたら、独り立ちできるな。」
「そうなん?」
「もっと体力がついて、陸軍から二本先取できるようになったらな。」
「遠い~!」
「あはは、ラルが使えるようになったら、ティリスの赤ん坊の守役だ。」
「ははっ!かしこまって候!」
俺は、ほほえんでラルの頼もしい背中を見ていた。
「さて、パッシブソナーで調べると、こっちにドードー鳥がいる。その向こうにジャイアントディアー、熊と続く。」
「ほえ~。」
「ラルの魔法も伸びてきたので、これから探査の魔法を教える。」
「はい。」
俺は、ラルの手をとった。
魔力を循環させる。
「うわ、また来た。」
「今度は手を離すなよ、複雑な術式だから手を離すとアホになるぞ。」
「は、はい…」
ラルは、かしこまって肩に力を入れる。
まあいい…ふふふ、これを覚えると事前に敵を発見しやすくなる。
「ああ、なにかが体の中にたまっていく。」
ラルは、いや~んな感じを覚えていた。
「それでいい、俺の持っている魔術が蓄積しているのだ。ついでに、お前の魔力も底上げしている。」
すっかり移し終えて(コピー)ラルの訓練をする。
「どうだ、自分の感覚が広がる感じで、弱い魔力の網を広げるんだ。」
「うん…こうだな。」
ラルの微弱な魔力の網が、森の奥まで広がっていく。
「あ、見つけた。ドードー鳥かどうかはわからないけど、大きな影が見える。」
「それだな。どっちだ?」
「あっちだ。」
「よし、正解。」
「あ、お屋形さまの後ろに小さい影が見える、ウサギかな?」
「おお!正解だ!」
後ろから、普通の肉食ウサギが飛んで出てきた。
すっかりこちらを狙っている。
「うら!」
かきいん!
俺のメイスが、ウサギの凶悪な顔面をとらえ、眉間を粉砕する。
「やっぱお屋形さまはすげえなあ、ウサギなんか一撃だもんな。」
「これも、経験だな。」
俺は、ウサギをそのまま皮袋に収納した。
「皮袋の作り方を教えて。」
「まあ、そのうちな。お前の魔力が上がってきたら教えてやる。」
「絶対だよ。」
皮袋の製法は、魔力量によっては簡単なんだ。
でも、これを多用すると、値崩れを起こしたり、身代<みのしろ>を狙われたりする。
危険なものでもあるので、あまりおおっぴらにしていない。
今の俺の地位なら、狙ってくるやつもいないだろう。
「それより、マジックアローを試してみろ、今日のドードー鳥は家用だから、どこに当たってもいいぞ。」
「わかった、試してみる。」
森の木々の間を見澄まして、ソナーで見つけた鳥を狙うのは、けっこう大変だ。
基本的に、マジックアローはまっすぐしか飛ばない。
魔力の込め方で、威力は変わるが。
「見えた、飛ばす!」
きゅいん!
軽い音がして、ラルのマジックアローははじき出された。
あーあ、たぶん魔力が足りない。
「あたった!あれ?」
ドードー鳥は、マジックアローで挑発されて、こちらに向かって怒り狂っている。
「おいおい、魔力のこめ方が足らん。もう一回やる時間はあるぞ。」
「わかった!もう一回。」
う~っとうなりながら、魔力をこめる。
今度は、鳥との時間競争なので、かなりあせっている。
「うら!」
きょい!
「今度は良さそうだな。」
矢は、鳥の首に吸い込まれていく。
「うぎいいいい!」
痛みでさらに怒り狂っている。
「うわー!怒ってるよ!」
「ほら、木剣構えろ、眉間をはずすなよ。」
「あんなに高いところにあるじゃないか!」
「工夫して、カチ割ってやれ!」
「うう!フォローよろしく!」
ラルは、一歩前に出る。
どどど!っと、盛大に足音を響かせてドードー鳥が駆け出してきた。
「どわ~!」
たしかに眉間に一発当てたんだけど、気合がすべって踏み込みが甘い。
鳥は、ラルの横を走りすぎていく。
くるりと向き直り、もう一度ラルに突っ込んでくる。
「どちくしょう!」
ラルは、思いっきり踏み込んで、鳥のコメカミに木剣を叩き込んだ。
ぐらりとよろけるのは、きっと脳みそが揺さぶられたからだな。
「効いてるぞ!もう一発だ!」
「はい!」
ラルは駆け出して、飛び上がると眉間に木剣をたたきつけた。
「!」
ドードー鳥は、こんどこそ沈黙した。
「はあはあ!」
肩で息をしているが、なんとか仕留めたようだ。
「袋に入るか?」
「はあはあ、しゅ、収納。」
無事皮袋に入ったようだ。
「よしよし、一人でやれるじゃん。
「見事だぞ、ラル!」
後ろから、チグリスが声をかけてきた。
その手には、森イノシシの足が見える。
「おっちゃん!それ獲ったのか?」
「ああ、さっき出てきたのでな。」
「うひゃ~!みんなすげえなあ。」
「そのトシで、ドードー鳥を仕留めるお前のほうがすげえぞ。」
チグリスは笑って、酒びんをぐいっとあおった。
いちいちやることがワイルドで、決まっている。
役者やのう。
そうそう、役者で言えば役所広司の横幅をつけた感じ。
「そう?」
ラルは、カズマを見上げて聞く。
カズマは、ゆっくり頷いて見せた。
ラルは、顔を赤くして手を振り上げた。
「うひゃう!」
「これ、入れてくれ。」
チグリスは、イノシシの足を引っ張って言う。
「なんだ、皮袋忘れたのか?」
カズマは、呆れた顔で聞いた。
「いや、どうせ向こうで解体するだろう?一緒のほうがいい。」
「わかった。」
「兄ちゃん、ジャイアントディアーはどうする?熊も。」
「獲りすぎても面倒だ、そろそろ上がろう。チグリスのメイスもテストできた。」
「そうだな、いい暇つぶしができた。」
「イノシシが暇つぶしかよ!」
チグリスは、ぐいっと酒をあけた。
「帰ったぞー。」
城門から戻ると、厨房は戦場だった。
俺たちは、厨房のすみにドードー鳥などを降ろして、そそくさと逃げ出した。
テーブルに並べた果物は好評だった。
居間に落ち着くと、チコがお茶と酒を持ってきた。
「お屋形さま、お疲れさま。とうちゃんも、ほらリンゴ酒だよ。」
湯気の立つカップと、五合ビンぐらいの貧乏徳利。
「おお、こりゃありがたい、チコもここに来て気が付くようになったなあ。」
チグリスは相好を崩す。
なんだかんだ言っても、娘も十三、番茶も出鼻ってとこか?
(日本では十八ですが…)
「なに言ってんのよ、とうちゃんは。あたしは、ずっと気の利いた娘でしょ。」
「わはははは!ちげえねえ。」
「ちぇっ、あ、お屋形さま、お風呂わいてますよ、すぐにお入りになりますか?」
「ああそうだな、みんなが厨房に集中しているから、今のうちに入ってくるよ。」
「わかりました、トラちゃんにお願いしますね。」
「ああ、わかった。」
俺は、チグリスに手を上げると、ソファから起き上がった。
「メリーオシリスマス!」
なんだか訳の分からない行事が、レジオ男爵領で始まった。
正確には二十四日、オシリスマスイブだな。
(イブは、イブニングのイブだそうです。昔は、夜になるとすでに二十五日の扱いだそうで、二十五日の夜と言う意味だそうです。諸説ございます。)
カズマたちは、ウォルフをはじめ、ゲオルグ=ベルンなど、家臣たちと盃をあげた。
「しかしお屋形さま、奥方のおなかも大きくなりましたな。」
ユリウス=ゴルテスが、すでに顔を赤くしながら、俺のグラスに酒を注ぐ。
男爵亭では、カズマの作ったガラスのコップが常備されている。
ほかのところにはない。
王宮ですら、こんなうすくて透き通ったグラスはないのだ。
「おいおい、最初からとばすなよ、このあと舞踏会もあるんだぜ。」
「ま、付き合ってくれるおなごもいてませんからな、のんびりしたものです。」
「なんとまあ、マリウス=ロフノールはうまくやってるみたいだぞ?」
「あいつはナンパ師ですからな、王都でも浮名を流したもんです。」
「なにを言う、肝心のいいところはみんなお主に持っていかれたわい。」
「なんじゃそれは。」
「おぬしの、亡くなった奥方は、当時の騎士たちのあこがれの的、舞踏会でも華の中の華。可憐で、清楚で、かぐわしき一輪の薔薇。」
「ほめずぎじゃ。」
「いや、俺も聞きたいぞ、マリウス。」
カズマは、ロフノールに話を振った。
「はは、お聞きくだされ、お屋形さま。かのマリーオルクス男爵家の、オルタンス嬢と言えば、当時社交界の三美姫と言われ、オルレアン公爵の二の姫、ロワール伯爵の三の姫と並んで美貌を競った方々でござる。」
「ほうほう。」
「そのオルタンス殿は、歌の上手で、天上の歌声と誉めそやされたものでござる。」
「それはまた、なんとも。」
「そのオルタンス殿が、こともあろうに武骨で有名なユリウス=ゴルテスに一目ぼれ。」
「ほえ~。」
「ユリウス=ゴルテスと添い遂げられないなら、ソンヌ川に身を投げて死ぬと、お父上に訴えたそうでござる。」
「それは、ものすごいな。」
「当時のマリーオルクス男爵は、ユリウス=ゴルテスの役宅に日参し、口説き落としたそうでござる。」
「おい、どうなんだ?ユリウス。」
「さよう、まちがってはござらんよ。」
「なんとまあ、ただのおっさんじゃねぇと思ってたが、やるもんだね。」
「ちゃかしてはいけませんな。」
「すまん。」
「それから三年、甘い新婚生活は、せまい役宅で過ごされたものでありますが、当時王都の五分の一が死んだという、はやり病がありましてな、もともと体の弱かったオルタンス嬢もこれを得ましてな。」
「なんと!ユリウス!すまん、気の毒なことを聞いた。」
俺は、あわてて頭を下げた。
「なんのお屋形、過ぎたことでござる。」
「いや、すまぬユリウス。わしも、茶化したわけではないのだ。そう言う、大本命はお主のもとに行ったと言う話だ。雑魚はしょせんザコであろうよ。」
ロフノールは、分別臭く話した。
「せっかくお主のようなものを好きと言ってくれるおなごじゃ、感謝せいよ。」
ゴルテスは、浮名を流すロフノールを茶化して言う。
「おい、その【ようなもの】とはなんじゃ!」
「わははははは!」
ユリウス=ゴルテスは大笑いをした。
「それがのうお屋形さま、話には続きがござってな。」
「なんだよ、まだあるのか?」
「なんとオルレアン公爵の二の姫も、ユリウスにご執心じゃったのじゃ、これは身分が違いすぎて結実せんかったのじゃが。」
俺は、目をみひらいて、ユリウスを見直した。
「それを聞いた騎士たちの怒ろうことか怒らまいことか。」
「そりゃそうだよな。」
「みんな過ぎ去った話でござるよ。」
彼らの青春も、輝いていたんだなあ。
「いやいや、まだまだこれからでござるよ。」
確かにその通りなんだよな、みんなそれぞれに持っているものが違うが、ひとつはレジオの復興と発展を目指している。
一つの目標に集まった者たちだ。
いや、あえて仲間たちと言うべきか。
だから、俺はおれのもてるすべてをもって、彼らを守ろうと思う。
それが、お屋形さまと呼ばれる、おれの生き方ではないだろうか。
「「「な、なんだとー!」」」
突然上がった、声にみんなが振り向いた。
マルス=リョービが指差した先にいたのは、マルノ=マキタである、しかも二人連れ。
二人連れ?
「マルノ、だれだそのご令嬢は。」
カズマは、なかなか整った顔の、ほっそりした美人を見て、驚いた。
「は、お屋形さま、幼馴染の許嫁であります。」
「はあ?カンナバ伯爵はそんなこと言ってなかったぞ。」
「いやまあ、カンナバの伯父貴には、話していなかったので…ウチの名主の娘で、アルメニアと申します。」
「へえ、やるもんだね、マルス。筒井筒で許嫁とは。お嬢さん、レジオ男爵カズマです、よろしく。」
アルメニアは、あわてて膝を折った。
「アルメニア=オルフでございます、男爵さま。今日はずうずうしくお邪魔いたしまして。」
「なんの、マルノ=マキタのお連れであれば、なんの遠慮もいりませんよ。ゆっくり楽しんでください…って、マルス=リョービ、どうしたんだ?」
マルス=リョービは、こぶしを握り締めて棒立ち。
絞り出すように口を開いた。
「お屋形さま!こいつは、女っ気なんかないと、さんざん言っていたのに、急に許嫁なんぞと…う、裏切り者め!」
マルス=リョービは、血の涙を流している。
カズマは、とりなすようにマルスに語りかける。
「おいおい、裏切り者はないだろう。単に恥ずかしかっただけさ、なあマルノ。」
「は、はい。」
「おまえも、やっかむんじゃないよ、マルス=リョービ。友人としてちゃんと祝福しないか。それとも、お前にも嫁さん世話してやろうか?」
「いやあの、お・おめでとうマルノ。」
「うん、ありがとう。」
マルノは、顔を赤らめてマルスに礼を言った。
「じゃあさあ、聖女のとりもちで結婚式やろうぜ、ちょうど教会もきれいになったところだし。」
ホルスト=ヒターチが、大声で話す、こいつはいつも声がでかい。
「おいおい、まだマキタ男爵に許可も得てないんだ、俺から手紙を出すよ、それまで待て。」
「「ははっ!」」
新年からおめでたいことになりそうだ。
「ひゃ~!終わりました~、明日の最終公演で、今年の分はおわりですー。」
恵理子が、公演を終えて屋敷に入ってきた。
歌劇団の少女たちも一緒である。
「スタッフたちは、後片付けの後イッパイ呑むそうです。」
「そうか、みんなゆっくりしておいで。」
あとでスタッフに、酒でも届けてやろう。
カズマは、トラに合図した。
「「「は~い」」」
歌劇団の十五名が入って、場は一気に華やかになった。
「まあ、あの子たちは?」
アルメニアは、マルノに尋ねる。
「ああ、レジオ歌劇団のメンバーだ、みな今回の災害孤児でね、あの恵理子さまが中心になって指導している。」
「まあ!すばらしいですね。」
「恵理子、お疲れのところ悪いが、一曲頼めるか?」
「ああ、そうですね、明日のミサで披露する、オシリスさまの讃美歌でいいですか?」
「ああ、いいよ。」
「わかりました、ちょうどお屋形さまに見てもらいたかったんですよ。」
恵理子に集められた団員は、普段着で整列して、オシリスの讃美歌を歌い始めた。
「おお!すばらしい出来じゃないか!トラ!トラ!」
「はい、お屋形さま!」
「子供たちに大入り袋を持って来てくれ。」
「かしこまりました。」
ほどなく、赤い大入り袋が運ばれ、カズマの手から子供たちに渡された。
「みんな、よくがんばったね。この調子で、明日も頼むよ。」
「「「はい!」」」




