第十五話 復路
あ~(笑)シュミ全開の展開だな。
ラジオが悪いな~、書いてるときに流すから。
さて、散々飲み食いしてマリアの店を出た俺たちは、ベスの『かもめ亭』に戻って爆睡した。
やっぱ、ずっと歩いてきて、かなり疲れていたらしい。
考えてみたら、一泊は野宿だしな。
そりゃ疲れるわ。
あ、オークとの一戦はたいした力も体力も使ってねえから平気だ。
「雨かよ…」
『かもめ亭』の窓を開けると、しとしとと雨が降っている。
失敗したな、まあ金がない訳じゃないし、一日くらいのんびりしても大丈夫だろう。
階下に下りていくと、まだみんな爆睡の最中か。
「おはようございます。」
「おやまあ、おはようございます。よく眠れたみたいですね。」
ベスは、なかなか気の利いた女のようだし、しつけも悪くないみたいだ。
というか、どこかお屋敷で奉公でもしていたのかな、そこはかとない気品もある。
俺は、席に着くと朝食を待っていた。
「おはよう、ユフラテ。」
「やあ、おはようマルソー。」
マルソーは席に座る。
「夕べあれだけ食ったり飲んだりしたのに、朝になると腹が減る。」
「まったくだ、世の中便利にはできてないな。」
「そうだな、この雨だがどうする?」
「ああ、今日は一日のんびりしようかと思うんだがな。」
「賛成だ、無理してもロクなことはない。」
「じゃあ、今日は休みにして、明日出発で好いな。」
「ああ、オレに異議はない。」
出てきたスープを飲み、薄切りの肉の焼いたのを切る。
「ここの朝飯もうまいな。」
「ああ、レジオってのも、あながちなめたもんじゃないな。」
マカロニみたいなものに塩を振ったものと、葉っぱをまぜたサラダがうまい。
「しかし、マヨネーズがあればなあ。」
「なんだそれ?」
「ああうん、ソースの仲間なんだけど。」
「へえ。」
「まあいいや、材料くらいしかわからんし。」
「なんだそりゃあ。」
マヨネーズで儲けるなんて、俺にはできん。
まあ、めんどくさいしね。
ほかでやらかしてくれてるし。
マルソーは、また寝るらしい。
俺は、チグリスのお遣いに出かける。
こちらの鍛冶屋に届けるよういいつかったからだ。
「おう、チグリスの兄貴からだって?すまんな。」
しのつく雨のなか、マントを羽織って荷物を運んだ。
「いや、俺は運んだだけだよ。」
「安全に、無事に運ぶことが重要なんだよ。」
マソプは、ほほえんだ。
「これがチグリスと作った、新しい酒だ。」
「ほう!それはうれしいな。」
「よく味わってくれ、自信がある。」
「うむ、すまんな。」
「それから、この剣は試作品だが、新しい鍛冶のやり方で鍛えた。知りたければ習いに来い、とのことだ。」
「くはははは、おもしれえ!坊主、オレをマゼランに連れて行け。」
「わかった、明日出発する、いいか?」
「任せた。今夜じゅうに準備する。」
「ああ、俺たちは『かもめ亭』にいるから、朝になったら来てくれ。」
俺は、マソプの家を出た。
湿っぽかった街は、いつの間にか雨が上がり、洗われた街はこころなしかにおいが減っていた。
『かもめ亭』に戻ると、みんなまだ寝ていた。
「なにやってるんだか。」
朝、今日は休みと告げたら、全員が部屋に戻っていったのだ。
まったく、せっかく違う町に来たんだから、ナンパくらいしろってーのよ。
カイショナシどもめ。
おっと、子供たちは別だが。
オレが、宿で昼飯食ってると、のろのろとレミーが降りてきた。
「ひどい顔だな、。」
頭はぼさぼさで、よだれの跡までつけて、ふつうにしてればそこそこなのにね。
「顔洗ってくる。」
レミーは、裏の井戸に向かった。
入れ替わりに裏の井戸から、マレーネが戻ってきた。
「お師匠さま、起きてました?」
「ああ、俺は出かけていたからな。」
「あら、どちらへ?」
「ああ、鍛冶屋のマソプの店だ。言付けがあったのでな。」
「へえ~、なにかいいものありました?」
マレーネは、俺の向かいに座った。
「まあ、そこそこかな?櫛とかいいものがあったな。」
「ふい~、目が覚めたわ~。」
手櫛で髪を整えながら、レミーがいすに座る。
「雨も上がったみたいだし、ご飯食べたら少し街に出ようよ。」
「いいぞ、レジオは王都に近いだけあって、なかなかしゃれたものもある。」
マゼランで買ったマレーネの古着も、そんなにいいものじゃなかった。
ここらでいいものをあつらえるのもいいだろう。
年頃の娘が、あまり着るものに気を使わないのもよくない。
親父があんなだったから、貧乏だったしな。
ここで少しくらい贅沢してもバチはあたるまいよ。
まだぜんぜん使ってないから、金貨も残っているしな。
「へ~、けっこういいものがそろっているわね。」
レミーは、小間物屋をのぞいている。
髪飾りとか、きれいな銀細工が並ぶ。
まあ、俺の目的はここじゃない。
レミーがあちこち寄り道するもんだから、なかなか古着屋に届かなかったんだ。
やっと着いたころには、疲れてしまったよ。
「ほえ~、いいものがならんでますねえ。」
マレーネは、ため息をついた。
「うわ~、王都から流れてきたのかな?デザインも違うね。」
「ああ、そう言うことか。」
俺にも理解できた。
襟の形とかが、ちょっとずつ違うんだ。
濃い緑色の、なかなかいい感じのローブを見つけた。
「マレーネ、当ててみろ。」
マレーネに渡すと、少し長いが、肩などはちょうどいい。
「よし、これにしよう。お姉さん、これ。」
「はい、ありがとうございます。」
「すそは自分でなおせ。」
「お師匠さま!」
「がんばってきた褒美だ。」
「そんな、高すぎます。」
「いいんだ、俺の弟子なら少しはいい格好しろ。」
レミーは、横目で見ながら肩をすくめた。
「ユフラテ、これもいいものだよ。」
レミーが何枚かもってきた。
「ああ?ドロワーズ?ああ、わかった。」
きっと下着も擦り切れているんだろう。
「全部くれ。」
お姉さんは目を見張った。
着るものはけっこう値が張る。
銀貨が何枚か飛んでいったが、マレーネの喜ぶ顔が見られるならそれでいい。
「ユフラテ、これもいい?」
「ああ?なんだそのブラウスは、マレーネには胸ぶかぶ…わかった、お礼だ。」
マレーネが涙目だ。
悪い。
レミーにも、一枚買って服屋を出た。
「お師匠さま、お金が。」
「気にするな、俺は金持ちだ。イノシシ獲ったしな。」
服屋のお姉さんが持たせてくれた布の袋にいっぱい詰めて、それを抱きしめて歩いている。
なんだか俺は満足だ。
しっかり草を食って、塩もなめて、ロバは元気まんまん。
俺たちは、合流したマソプと連れ立って、『かもめ亭』を後にした。
「こいつを乗せていってくれ。」
マソプは、自分の打った剣を三本、馬車に乗せた。
旅の食い物などもズックの袋に入れて、馬車の荷台に乗せる。
草で編んだムシロは乗ったままだ。
帰りにも獲物が獲れたら、こいつでくるんで帰る。
「もっしもっしかめよ、かめさんよ~」
カポカポという、ロバの足音のリズムに合わせて歌が出た。
「ナニその歌。」
レミーが聞いた。
「知らん、口から勝手に出てきた。」
「なんで亀なのよ。」
「ああ?これはウサギと亀と言う昔話から来ているんだ。」
日本むかし話である
俺は、知っているむかし話を聞かせてやった。
「なにその間抜けなウサギは。寝てちゃだめでしょ。」
「油断すると何があるかわからんと言う話しと、コツコツやってるといいことがあると言う教訓だ。」
「なるほどねえ。」
「俺たちドワーフのためにあるような話だな。」
「なるほど、コツコツ鍛冶仕事してるな。」
「急いでもいい仕事はできん。」
「そりゃそうだな。」
つぎに、世界むかし話・グリグリム童話~。
「眠り姫。」
「うわ、その王子さま、変態じゃないの、寝てる女に口付けするなんて!」
「しらん、趣味なんだろう。」
「うげげ、いくらいい男でも、願い下げだな。」
レミーは、いちいち文句をつけてくる。
「そりゃまあ、エルフじゃないけど一〇〇歳も年上なんだからなあ。」
「うげげ」
「でも、茨を切って進む王子様、かっこいいです。」
マレーネが、はにかんで言うと、ジャックもよろこんだ。
「おお、ドラゴンに挑むなんて、まるで勇者みたいじゃないか。」
「勇者って、今もいるのか?」
俺が聞くと、マルソーが答えた。
「いや、五〇〇年前に魔王を倒して以降は、勇者は出てないそうだ。」
「そうか~、ま、魔王なんていないほうが好いに決まってる。」
「お師匠さまなら、ぶった切るんじゃないッスかあ?」
「ミシェル、それはむずかしいだろう。魔剣ももっていない、トンカチ頼みでは。」
「トンカチで、魔王の眉間を割るんッスよ。」
「あはは、そりゃいい。」
ごちゃごちゃ話していると、いつのまにか昼も過ぎ、日も傾いて野営地に着いた。
「むかしばなし聞いているうちに、野営地に着いちまったな。」
マルソーが、にやりと笑う。
「おお、おもしろかった。」
ジャックも明るく笑っている。
「ユフラテは、話がうまい。」
マソプも、ドワーフらしくボソッと言った。
「よし、野営準備。当番決めるぞ。」
「「「おう。」」」
俺は、土ボコの練習で、三方壁を立てる。
だいたい三メートル四方の大きさで、壁が三枚しかないからバス停みたいなんだ。
高さも二メートルくらいしかない。
屋根がないから、その辺から木を切ってきて上に乗っける。
斜めに枝を並べて、縄で縛り、草を載せたら夜露に濡れずにすむ。
ジャックが、屋根を手伝いながら言う。
「こりゃあすげえ、よく魔力がもつなあ。」
「なに、初期魔法の土ボコをやってるだけだ、それほど魔力はいらんよ。」
「つ、土ボコ~?」
「そだよー、だから魔力の消費がちょっぴりなんだ。」
「すげー。」
夕飯は、獲物がないから、乾し肉と固いパンを水で流し込むようなもので、味気ない。
こんなときに歌ってもいいものかわからんが、夜空がきれいだったので少し歌う。
「i will aiways love you ~」
マルソーが頭を抱える。
「どこの国の言葉かわからんが、なんだこの歌は。」
「聞いたことねえぞ。」
ジャックもぼそぼそ言ってる。
「お師匠さま、すごい。」
「お師匠、芸が細かいなあ。」
「なんか知らんが、勝手に出てきた。」
なんか乗合馬車の御者の話だったかな?




