第十話 結果オーライ
あ~‼️
行き当たりバッタリやな‼️
と思いましたが、行っちゃいます❤️
マゼランの衛兵隊に拘束されたギルドマスターは、そのまま連行された。
まあ、殺人未遂ときては、逃げられないだろう。
そのうえ、地位を利用して、ちょこちょこ悪事を働いているのは明白だ。
探せば証拠はぼろぼろ出るだろう。
ま、この世界では、確実な証拠なんてなくても、殿様の裁量で罪は動く。
利用価値のないやつなんざ、そんなに優遇はされないだろう。
幸いにして、ここの殿さまは、それほどバカではないらしいからな。
マスターが決まるまでの代理は、マルコと言う俺に盗賊の顛末を教えてくれたやつがするらしい。
あいつはまじめなヤツだから、安心していいだろう。
ほかの冒険者からも信頼が厚い。
「クリーン」
俺は、生活魔法の『クリーン』を使った。
腕の血まみれなどが、きれいに拭い去られて、気持ちいい。
「この前から気になってたんだけど、ユフラテっていつ詠唱しているの?」
マリエが聞いてきた。
「詠唱?」
「ええ、いつも魔法を使うとき、呪文を詠唱していないわよね。」
「そんなもんいるのか?」
「え?詠唱してないの?」
「…してない、と言うか知らないよ。」
「ええ!本当に?それで魔法を使っているの?」
「まあ、できるからかな?」
「できるからって、それだけ?」
「それだけ。」
「なんとまあ。」
「だいたい、魔法なんて個人差だろうが。俺の着火なんて、最初こうだぞ。」
ぼおおおおお
全長二メートルの放火。
「なによこれ!」
「だから、着火の魔法。魔力ダダ漏れ。」
「あはははははは!」
「やっとマリエの笑い声が聞けたな。」
「あら、そうかしら?」
「できる女もいいけど、女は愛嬌だよな。」
「なによおっさんくさい。」
「そうか?」
「そうよ。」
レミーが飛びついてきた。
「ユフラテ~、治った?」
「お~、すっかりよくなった。」
「よかった~、心配したよ。」
「レミーは大げさなのよ。」
「そんなことないよ、心配するじゃん。」
「そりゃすまなかったな、心配してくれてありがとうな。」
レミーは嬉しそうに肩をゆらした。
むっとするマリエ。
「ユフラテ、腕は治ったか。」
ジャックが手を上げた。
「おう、もうこのとおり。」
「しかしまあ、お固いギルドの受付嬢が、そんな顔するなんてなあ。」
「はあ?」
「ジャック、それはどう言うことですか?」
マリエが首をかしげた。
「そりゃ恋する女の顔だぜ、鉄のマリエさんがねえ。」
「そそ、そんなわけありませんよ。」
「あ~、はいはい。わかったよ。」
「なんですかその、さもしょうがねえなあと言う顔は。」
「しょうがねえなあと思ってるからさ。」
「こここれは、ギルド内部で起こったことに対するですね…」
「もういいからさ、年上でも心配したもんじゃないさ。」
「年上?」
俺が疑問に思うと、ジャックが答えた。
「まあ、十六~七のユフラテから見たら、二十歳のマリエは十分年上だろうが。」
「十六…俺って、そんなトシなのか。」
「成人したてのガキにしか見えんがな。」
ジャックも遠慮がない。
「マルソー、どう思う?」
「おれにもそう見えるがね。」
「俺はずっと自分がもっとトシ行ってると思ってた。」
「まあ、しゃべり方がジジくさいからな。」
「マルソーもそう思ったか?なんかオッサンくさいんだよな。」
二十歳そこそこのジャックから言われるとがっくりくる。
「まあ、ユフラテ、は忘れ病なんだから、自分の歳もわからなくてあたりまえだ。」
「そう言うことだ、気にするな。」
気にするわい。
自分の歳も、生まれもわからんのは、不安材料でしかない。
いくら日々の生活で、飯が食えるからと言って、それは変わらん。
「あ~、ギルドの風通しも少しは良くなるかねえ?」
マルソーが肩をすくめた。
「まあな、マルコがマスター代理だってんなら、少しはマシになるさ。」
「そうそう、少なくとも買いたたきはなくなるだろうしな。」
「…」
マリエは、ギルドのピンハネを少なからず知っていたので黙っている。
「えっと~、ユフラテから見たらあたしもお姉さん?」
レミーが横から聞いてきた。」
「あ~わからんが、同じくらいなのか?」
「今年十八になりますが~。」
「そうか、それほど離れていないんだな。」
「そうよね~。」
マルコが指揮をとるようになって、レミーもジャックもみんながEクラスに上がった。
「おれもかYO」
ヨールも驚いている。
「ウサギがふたりで狩れるようになったんだから、安心して上がれ。」
マルコに説明されて、ヨールも喜んだ。
少しは実力がついたってことさ。
いままで積んできたことが、無駄にならなくてよかった。
ヨールもやればできる子なんだけど、要領が悪くて損をしていたんだ。
マルソーも、御同様で力の強さが災いして、無駄な動きが多かった。
二人で補い合うと、なかなかいい攻撃ができる。
ヨールの器用貧乏のくせが、貧乏におおきく傾いていたからな。
天秤をもどして、器用の方に触れるようにしたんだ。
「ユフラテに教えてもらったからだYO」
ヨールはやけに感謝していた。
パーティのリーダーがDクラスなら、護衛任務もこなせるようになり、実入りがよくなるのだ。
「マリエ!マリちゃん!こんなところにいたのか。」
日に焼けた、ガタイのいいアンちゃんが声をかけてきた。
「あら、ブンちゃん、どうしたの?」
え?キャラがちゃうやん。
「いや、ギルドに行ったら教会に行ったと言うからさ。」
「ええまあ、怪我した人がいたから。」
マリエは俺をさして言う。
「ああ、このひとかい?」
「ええ、冒険者のユフラテさんよ。こちらは、ブンロクさん。」
「へい、でぇくのブンロクともうしやす。」
腰の低い人だ。
「こりゃあご丁寧に、ユフラテでござんす。」
「マリエがお世話になったそうで。」
「いや、言うほどのことは。」
「そうでやすか。おいマリちゃん。」
「なんだい?」
いなせだねえ。
「やっと親方から許しが出たんだ、で、おめぇを迎えに来たんだよ。」
「迎え?」
「おう、おめえを嫁にするためにむけぇにきた。」
「ブンちゃん!あたいは、弟たちを一人前ェにするまでは、嫁に行かないって決めてるんだよ。」
「一人前になる前に、おめえが嫁き送れっちまうじゃねえか。」
「それでもいいんだよ、あの子達が立派になりゃあ、死んだおとっつぁんやおっかさんが…」
「ばかやろうが、弟たちも親方が面倒見てくださるよう話がついた、おめえは安心していいんだよ。」
「ブンちゃん。」
「惚れたはれたの話じゃねえ、おめぇは生まれたときから俺の女房になるって決まってるんだよ。」
「ブンちゃん。」
「十歳から奉公に出て、いままでがんばってきたんだ、それもこれもおめえと一緒になるためだよ。」
「え~っと、俺たちお邪魔じゃねぇか?」
盛り上がる二人を背に、俺は、レミーとマルソーたちにこっそり声をかけた。
「んじゃまあ、そういうことでえ、話がまとまったら教えてくんな~。」
関西人が、むりやり江戸弁で話すようなへんなイントネーションになってしまった。
メインストリートのカフェに避難して、みんなで顔を合わせた。
ジャックがつぶやいた。
「あの鉄のマリエが、『ブンちゃん』だぜ~。」
マルソーも目をむいた。
「びっくりした~。あ・オレ、エールね。」
「あ~あたしもエール。」
ジャックは渋い顔だ。
「レミー、昼間っから。」
「エールなんて水といっしょじゃん。」
「まあまあ、オレ、おごるよ。いろいろ心配させたし。」
オレが言うと、みんなこっちを見た。
「じゃあ、マリエの結婚がうまくいきますように。」
「「「かんぱーい。」」」
「か~!昼酒はうまいYO~!」
「ユフラテはふられちゃったYO~」
レミーがヨールのまねをする。 あ~あ。




