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白刃の女神  作者: 大吉
23/39

第五部 決戦 後編 第五部完

 なんとも気まずい雰囲気が漂い、それがさらに夫人の靴音

を際立たせた。

 夫人は彩香に歩み寄ると彩香の肩に手を添えて、ふたりと

もそのまま部屋を出て行ってしまった。

 呆然とその様子を眺めていると、主人が先ほどの言葉を続

けた。僕のそうとは知らずに開いていた口が一瞬にして閉じ

た。そのとき、僕は舌を噛んでしまった。

 「君は永想山に行ったことがあるかね?」

その言葉は今度はあまり強く心臓を打たなかった。それな

らば、先ほどのバチは彩香の机を叩いた音だったのであろう

か。

 いやいや、これはもしかしたら、初めて六段の跳び箱を跳

んだときと似ているのかもしれない。始めは跳び箱の高さに

畏怖の念があったが、いざ飛んで成功してみると、次に飛ぶ

頃には前のその感情がまるで他人のもののようになってしま

う。それと同じならば、永想山こそ真のバチだったのではな

いだろうか。

 さて、永想山は僕が川で流された場所だった。僕は短く、

あります、と答えた。

 主人が何を調べようとしているのかはわからないが、主人、

もしくは、主人の知り合いがあの災害に関わっているらしい

ことはなんとなくわかった。

 主人はまた口を開かなくなってしまった。

 僕はカップを手にして紅茶を口にした。ゼリーはいつのま

にか見えなくなっていた。

 紅茶はとても濃かった。僕はそれを口に含むと思わず顔を

しかめてしまった。これは、外国人が初めて抹茶を飲むとき

と同じ感覚なのだろうか。

 口にしたことのない異国(恐らく)の初めての味覚に僕の

心は独りでにどこかへと歩きだしてしまった。ソーサーの上

に戻ったカップの呼び鈴に、僕は言いようのない幸福感に包

まれていた。

 気がつけば、客間はずいぶんと過ごしやすかった。風がよ

く遊びにやってきては、天井のシーリングファンを無邪気に

揺らしている。世界がまるでここだけのように思える。

 先ほどまでの気分の悪さが嘘のように消えていった。口元

に残る甘さに僕は心地よい眠りさえ覚えた。まるで、一足先

に秋の夕べにたどり着いてしまったかのような感覚だった。

後から考え直すと実に不謹慎な心持ちだったが、僕は気詰まり

がすべて消えていることを肌で感じていたのだ。

 ふたりがいなかった。僕の座っている椅子はもう、ゆりか

ごのように優しかった。この心の不在に僕はすっかり自由を

満喫していた。

 「話せる範囲内でかまわないから、もう少し詳しく話して

くれないかね?」

 主人が僕に声をかけたときにも、僕の心はついに帰ってこ

なかった。僕はいま何を話していたのかすっかりと忘れてし

まっていた。

 「えっと……すみません、何をですか?」

 僕は自分の無礼を恥じた。だが、主人はそれを咎めずに、

さもありなんといった様子で、僕に会話の内容を思い出させ

てくれた。

 僕は自分でも信じられないほどにすらすらとすべてを話し

た。あれほど話すことを嫌っていたのに、まるで鼻歌でも歌

うかのように気分良く話した。

 心は僕にこの秋を残して、どうやら理性をも連れ出していっ

たようだ。僕はすっかりこの不在に満足していた。懐かしい

あの貧しくも無邪気な心が帰ってくる気配がしたのだ。

 僕はそんなことを感じながら、ステンドグラスから覗いた

庭先の自然な明かりに胸を躍らせていた。何年ぶりだろうか、

こんな思いは。

 主人は眼鏡をはずして、僕と同じように、庭先に遠い目を

向けていた。

 「どうだい? 少し散歩するかい?」

 眼鏡をはずした主人の表情も、まるで少年のようだった。

 玄関を開けると、ポチが遠くから飛んできた。僕はポチを

受け止めると、盛大に抱えあげた。

 「困ったね、その子もうちの大事な子なんだが」

 「僕、図体ばかり大きいですからね。きっと、勘違いして

いるんですよ」

 僕は含み笑いをしながら、ポチの顔を見た。ポチは可愛く

二度、ないた。足が忙しなく動いている。どうやら、おろし

てくれと言っているらしい。僕はポチをおろすと、肩を軽く

叩いた。

 僕と主人は芝の周りを歩いて池の方へ向かった。ポチもト

コトコとその後に続いた。

 「すまなかったね……つらい過去を思い出させてしまって」

 「いえ、それほど鮮明に覚えているわけでもないですから。

でも、どうしてこんな話を?」

 僕は主人が触れた内容を今更非難するつもりはなかったの

で、できる限り言葉を和ませて言った。

 「実はその災害に私の知り合いも巻き込まれてしまってね。

その子は救出されたんだが、そばにいた子は結局救出されな

かったらしい。当時、その子は小さな子供で首に怪我をして

いたらしくて。それで、もしかしたらと君に重ねてしまった

んだ。だが……」

 主人はため息混じりに言葉をきった。そのため息がまるで

僕を非難しているようだった。

 ――君だったらよかったのに、と幻聴さえ聞こえた。僕は

その声のない非難に答えた。

 ――災害に遭ったのは同じなんですけど、と。いじらしく

言おうかと思ったのだが、僕もそれは声のない応酬にとどめ

た。

 それよりも、僕の意識はだが……の先に向かっていた。で

も、それも言葉にはしなかった。好奇心で傷跡を撫でるのは

僕の好かない行為だ。

 ところで、主人は大股で、さらに、とても速歩きだった。

ポチが遅れまいとついてくるが、もう、それは徒歩の速度で

はないように思われた。

 「でも、多少なりともトラウマになっているだろ?」

 主人はかまわず歩みを進めている。僕もそれに続いたが、

頭の中で主人の質問の答えを探る僕の歩みはむしろ、これと

逆行していた。

 「……「守護神」(15)っていう映画があるんですけど、

それを自宅で観たときは確かに……たぶん、それを思い出し

て一度吐きました。でも、それだけです。あれ以来もう山へ

行ったり川に入ったりはしてないですけど、これといって困

ることはいまのところないです。風呂にもちゃんと入れます

し」

 僕は語尾に笑みを込めた。

 「そうか……」

 ところが、主人の表情は僕の思惑より、一歩、また一歩そ

れていた。僕はこのせっかくの日差しのなかに陰を落とすの

は嫌だったので、せめて、その理由を埋めようと木を植える

ことにした。

 「「守護神」という映画、ご存じですか?」

 「あぁ、確か、沿岸警備隊を扱った映画だったね?」

 「えぇ。そのなかで、教官が水泳の得意な生徒に言うんで

す。おまえのコースに入ってくる奴はいなかったか? 邪魔

するものはいなかったか? 僕が吐いた場面はまさにそこだっ

たんです。普通なら、笑うとこですよね?」

 僕は同意を求めたが、主人の表情はまだ曇っていた。

 「本当にその通りだったんです。僕も水泳は得意なつもり

でしたが、そんなものは何の役にも立たなかったんです。川

に飛び込んで僕が知ったのはプールの快適さでした」

 「……でも、ずいぶんと氾濫していただろ? 怖くなかっ

たのかい?」

 「いま思うと、怖いですよ。でも、そのときは、恐らく、

見過ごす方がよっぽど勇気が必要だったんです。それに、僕

はそれでも、流された子のとこまですぐに泳いでいける気で

いましたから」

 「勇ましい子だったんだね」

 「そういうのじゃないですよ。僕を支えたのは勇気なんて

たいそうなものじゃなくて、単なる思い込みですから」

 このとき主人は僕を謙虚な人間にみたかもわからないが、

事実はただ誤解されたくないだけだった。

 「思い込みでもたいしたものじゃないか? 濁流のなかで

疑わないなんて、そうできるものじゃない。むしろ、逆だ。

泳げないと思うのが自然だろ?そう思い込ませたのはやっ

ぱり勇気じゃないのかい?」

 どうしても、主人は僕を勇敢な男にみたいらしかった。で

も、僕は実に不器用な人間だった。誤解されるのをやはり嫌っ

たし、否定するにもただの無知だとか無謀だとか言えば、そ

れこそ謙虚で終わったはずだ。でも、僕はそのどちらもでき

なかった。

 「僕は床が抜けるように山から転げ落ちて、岸辺についた

わけですけど、そのときはもう木やら石やらに身体を打ちつ

けて、とても動ける気がしなかったんですよ。でも、地面に

ついてからまもなく川に流される子をみて、僕の身体は自分

でも驚くほどにまた動き出したんです。その奇跡にたぶん僕

は酔っていたんです。……僕が溺れるのも必然だったわけで

すよ」

 「でも、君はその子を救ったのだろう?」

 「救ったのは自衛隊ですよ。僕は何もできませんでしたか

ら」

 「彼らが来るまでその子のこと支えていたんじゃないのか

い?」

 「えぇ。でも、それも偶然です。ほんとに偶然にも、一瞬、

彼女の背後に寄れたんです。僕の意志というよりかは……こ

う考えるのも変ですけど、波の方で近づけてくれたような。

それからも、何かできたわけじゃないんです。一緒に流され

てくる大木やらに彼女が接触しないようにとか、彼女を水面

から少しでも高い位置に支えようとかそんなことばかり……

頭のなかであれこれ考えているだけでした。ほんとに何もで

きなかった。だから、僕があの災害で思うことがあるなら、

それは圧倒的な無力感……ですかね」

 ポチがどこから持ってきたのか、ボールをくわえて息を荒

げていた。遊んで、遊んでとしっぽを揺らせている。僕は口

元を撫でて、ボールを取ると、力の限りそれを投げた。ポチ

の元気な声が芝を撫でていった。

 「君はその自衛隊の人を恨んだことはないのかい?」

 僕の背中に主人の言葉が突き刺さった。でも、これは言葉

通りだ。胸に刺さったわけではない。

 「まさか。いまでもほんとに感謝していますよ。あの人が

豪雨のなか空から降りてきたときには僕は本当に……。僕は

降りてくるひとに向かってこの子、この子って必死に叫んだ

んですよ。聞こえていたかは怪しいんですけど」

 恐らく、隊員には聞こえていなかっただろう。あそこでは

ありとあらゆる音が水に支配されていたから。そうでなくと

も、僕は口を開けるたびに水を飲んでいた気がするから、ちゃ

んと声になっていたかも怪しい。

 「でも、彼は君の望み通り真っ先にその子を救い上げたん

だね?」

 「えぇ。本当に嬉しかったです。抱えられて空に上がって

いく姿を見て、僕は彼女がまるで天国にでも連れていっても

らえるんじゃないかと思っていたくらいですからね。自衛隊

のひとがあたかも天使のように映ったんです。変な話かもし

れないですけど」

 「いやいや、そんなことはないよ。でも、君はそのまま流

されてしまった」

 「……だと、思います。そこから記憶がないんです。願い

がようやく叶って安心したのか、それとも、ただ疲れ果てた

のか、何かが僕の頭をこずいたのか、なんなのかはわかりま

せん。ただ、その後目が覚めたときにはその子はいませんで

したし、周りの人たちもその子のことを誰も知りませんでし

た」

 「違う天使が君の手を引っ張ってくれたんだろうね」

 「恐らくは……でも、言葉に慎重を欠くようですけど、そ

こが天国じゃなかったのは覚えていますよ」

 「どうしてだい? 助かったのだろ?」

 「……えぇ。ただ、目が覚めたときに自分がまるで安置所

にでも寝かされてるかのような感覚を受けたんです。テント

からもの凄い雨音が聞こえていたんですけど、でも、僕がそ

こで確かに聞いたのは誰かの悲鳴だったんです。周りで僕と

同じように寝ている人が綺麗に……。僕は生きているのだろ

うか、なんてぼんやりと呟いてみたんですけど、声にはなり

ませんでした。そのとき、初めて怖いと思ったんです。世界

がまるで違いました」

 「世界……が、かい?」

 「えぇ。僕が見渡す限り、生きている人たちのほうがよほ

ど傷ついて見えたんです、肉体的にも」

 「……君はどうだったんだい?」

 「僕は寝かされているほうでしたけど、でも、幸というべ

きか、無事ではなかったんですよ。僕はなんとか声を絞り出

して、近くにいた泥まみれの作業着を着た自衛隊員に聞いた

んです。みんなは無事なのですか、と。でも、その人は少し

笑って、君の方が心配だって言ったんですね。僕は傷だらけ

だったんです。包帯人間でしたよ」

 僕はおどけてみせたが、主人はあまりこの手の冗談が好き

でないらしかった。

 続いた無言にポチが帰ってきた。主人が視線を逸らしたと

きに、僕は主人が会話を変えたがっていることに気がついた。

 「ところで、君はお父さんのことをどう思っているんだい?」

 僕はこういった質問にはいつも嫌いだと答えていた。実際

にこの前ここへ来たときにも僕は相当、父親のことを恨んだ。

でも、そんなものは僻みで本当の気持ちじゃないことぐらい

はわかっていた。真の根はもっと深いところにある。

 「好きですよ」

 僕はこのとき初めてひとに父親のことを好きだと言った。

初めて、本音を語ったのだ。主人はとても驚いた顔をしてい

た。

 確かに爽香のことを考えれば、いつだって僕は父親を嫌い

だと答えるだろう。主人の壊れた表情を戻そうと僕は続けた。

 「確かに父親の行動は常軌を逸してますけど、でも、親の

役目がもし、この広い世界にこどもを飛び込ませるまでの手

引きだとしたら、僕はもう十分引っ張ってもらいましたから」

 「ずいぶんと大人びたことを言うんだね、君は。どうして、

そう思うんだい?」

 「もう、いまの僕には飛び込みたい世界があるからですよ。

ご存じかはわかりませんが、父は放浪癖のある人で、フラン

スやアメリカに住んでいたことがあるんです。よくそのとき

のことを父は僕に話してくれました。それで、僕は特にフラ

ンスが好きになったんです。フランス人にさえなりたいと思っ

たことがあるくらいですから」

 主人はあからさまに僕の髪を見た。これはそういう意味で

はないのだが、否定するのはよした。

 「そうだね、確かにあの方はフランスがお好きのようだっ

た。きっと、喜ばれるんじゃないかい?」

 「そう……ですかね、僕が行きたいといっても、いつもな

にも返してくれませんでしたけど。でも、ともかく、父は僕

に行きたい世界をたくさん見せてくれたので、思えば、それ

以上の手引きは必要なかったんです。そこへ行くためにはど

うしようかとか、そこで何をしようかとか、その世界が実際

はあまり好ましくないものだったときにそこから新しい世界

を今度は自分で見いだせるかとか、そういった課題はこども

の宿題ですからね」

 僕は半ば自虐的に語った。主人はそんな僕の様子を見て、

いたずら心に火がついたらしかった。

 「そうか、面白いことを言うね、君は。じゃぁ、どうだい?

私にその課題の進み具合を少し見せてくれないか?」

 主人は僕の教師にでもなったかのように安っぽい演技をし

てみせた。僕はそれに本気で答えた。

 「まずはどうやって行くかですけど、フランス政府にお金

を出させるんです。求められてそこに行きたいですから。で

すので、フランス政府給費留学制度に合格して学生として求

められてそこに行くんです」

 主人の口は始終開いたままだった。

 「またずいぶんなことを考えたね。聞かせてくれ、それか

ら、そこで何をするんだい?」

 「まず、しっかりとした論文をそこで書き上げることです。

フランスで認められたなら、それはもう本当に凄いことだと

思います。実際にその留学制度を活用していってもちゃんと

書けるひとはごく僅かのようですし。それを成し遂げたら、

きっと父も腰を抜かしますよ」

 「あぁ、そうだろうね。あの方も君をきっと認めないわけ

にもいかないだろう。でも、驚いたな。給費留学制度なんて、

どこで知ったんだい? それもあの方から?」

 「あ、いえ、調べていたらとんでもないのがみつかったん

です。驚きましたよ。まさか、外国政府がお金を出してくれ

るなんて」

 「そこでしてみたいことはないのかい? 学業以外で」

 「太陽……ですかね。地中海から見える太陽を見に行くん

です」

 「あぁ、そうだね。ずいぶんと綺麗らしいね。あの方も好

きでいらした」

 「えぇ。それに、カミュ(16)も愛していたんです。僕

は彼が好きだから、一度それをどうしても見てみたいんです」

 「ハハハ、ほんとに君には驚かされっぱなしだ。アルベー

ル・カミュか。いまの子たちはそういうのほとんど読まない

だろ?」

 「えぇ、実際父がよこさなかったら、僕もそういった本は

読んでいなかったと思います。もっとも、読んだからといっ

て、理解はそれに及びませんけど」

 「まだまだ君は若い。焦ることないはないさ」

 「でも、ラディゲ(17)なんて読んだ日には……」

 「ハハハ、まったく、机上の君の様相とはずいぶんと違う

ものだね」

 「PTAのことですか?」

 「あぁ、あそこでの君は道徳が欠けていて、理性がないこ

とになっている。まるで、君は放し飼いのビーストだ」

この主人の発言に僕の腹がよじれた。

 「確かにそうみられるでしょうね。いままでずっと規範に

ずれていましたから。でも、ロボットの性能を図るような教

育に興味なんてわかないですよ? ただのインプットとアウ

トプットの試験を三年もかけてやるんですよ。誰かがそうし

たように小舟に乗って、一年に200冊の良書を読んだり、

恋人と過ごしたりした方がよっぽど精神にはいいですよ」

 「ハハハ、まぁ、君みたいな子にはとてもつまらないこと

だろうね? でも、最低限覚えないといけないことはあるか

らね」

 「えぇ、わかりますよ。理科系や語学とかそうだろうと思

うんですけど、社会とか文学は酷いですよ。永遠と用語を覚

えるだけですよ? それで何を学んだと言うんですかね。僕

にはまるでわからない」

 「意地悪を言うつもりじゃないが、君は今からでもフラン

スへ行ったらどうだい? あちらは君が嫌うようなロボッ

ト教育ではなくて、もっと人間味のある教育だと思うが」

 「爽香を置いて行けないですよ。それに、この国のあるシ

ステムは大嫌いですけど、それ以上に大好きで、見てみたい

ものもたくさんあるんです。……なので、給費留学制度とい

う選択肢にたどり着いたんです」

 「そうかい、なるほどね。でも、それなら、君はまず、そ

れまでに優秀なロボットにならないとね?」

 「えぇ……ほんとに」

 僕は寝ころんでいるポチの頭をなでた。

 「僕はこの子のような子を連れて、いつの日かフランスに

本当に住んでみたいと思うんです」

 僕は待ってましたとばかりに起きあがったポチの口元をこ

しょぐった。ポチのしっぽが世話しなく左右に揺れている。

 「おいおい、間違ってもポチを連れていかないでおくれよ?

それに、君の連れていきたい子はもっと他にいるのだろ?」

 主人のいたずらっぽい笑みに僕は思わず笑ってしまった。

 「えぇ……ただ、そこに彼女のやりたいことがあるといい

のですが」

 彩香はどんな町が好きなのだろう。僕は遠い彼方の空を見

た。僕の暮らしたい街は僕が見つける。ふいに父親に言った

あの文句が空に澄み渡っていった。

 「そろそろ、彼女たちのもとへ帰るとしよう」

 意地の悪い性格は、なるほど、父親譲りなのだろう。僕は

改めてそれを確認したところで、自らの実に不謹慎な心持ち

にやっと気がついた。彼女たちのことをすっかりと忘れてい

たのだ。

 僕は彩香の取り乱した様子をこのときまで気にかけていな

かった。僕は苦笑いを浮かべて、主人の申し出に首を縦に振っ

た。

 僕は本当にこどもだった。主人が教えてくれたのに、僕は

その主人の足取りの遅さを心の中で非難していた。僕は走り

出したかった。でも、ここで走ってしまっては今まで彼女の

ことを気にかけていなかったことが主人に逆に露呈してしま

うのではないかと懼れて、まるで、地団駄を踏むかのように

歩いていた。そばで歩くポチの足取りが僕を少し平静にして

くれていた。

 重い足かせを引きずってようやく玄関にたどり着くと、僕

はポチにお礼を言ってしばしの別れを告げた。主人が玄関を

開いたら、僕は我が物顔で一目散に彩香を捜し出しそうだっ

た。

 ところで、玄関を開けると、彩香が待っていた。僕はその

姿を見て、失神した。彼女がペンダントトップのように古ぼ

けた縦笛を身につけていたのだ。

 それは、僕があの山で災害に遭うまでずっと身につけてい

たものと、恐らくは、同じものだった。

 目が覚めると、僕はベッドに寝かされていた。

 「愁!? ……大丈夫か?」

 首を左に向けると、心配そうに彩香がこちらを見ていた。

 「……ここは?」

 「親父の部屋だ。一緒に運んできた」

 僕は天井を見て、息をついた。

 ――まさか、本当に気を失うなんて。しかも、彩香の前で。

 僕は空手の組み手のときに何度か足で顔をかられて倒れた

ことはあったが、それを覚えているからだろうか、どういう

わけか悔しさと恥ずかしさがこみ上げてきて、それが可笑し

かった。

 でも、今は耳元に甲高い音は響いていなかった。響いてい

るのはもっとやっかいなものだった。

 僕は上半身を起こそうとしたが、目眩がしてまたすぐにベッ

ドへ倒れてしまった。

 彩香が僕に慌てて近づいた。そのとき、例のものがいまは

手にしっかりと握られていることに気がついた。僕は少し笑っ

て、彩香を非難した。

 「その笛、おれのだろ?」

 「……何を言う……いまは私のものだ」

 僕は彩香の頭を胸にぐっと引き寄せた。それから、そっと

彼女の髪を撫でた。彼女はもう恐らく知っているのだろう。

まもなく、彼女の声にもならない声が僕の心臓に直接流れ

込んできた。それに刺激されて、僕が押さえつけていたあの

やっかいな感情が全身に響きだした。

 彩香と僕は初めて、二人して泣いた。

 それからどれくらいの時間が経ったであろうか、扉がそっ

と開いた。夫人だった。こんなときに限って、僕と夫人の視

線は合った。心臓をつかまれてしまった気分だ。

だが、夫人は僕らを撫でるように見ると、笑みを残して、

そっと出ていった。

 「……誰か、来たのか?」

 彩香はまだ僕の胸から起きあがろうとしなかった。主人が

入ってきてもどかないつもりだろうか。

 「あぁ、彩香のお母さん。すぐに出ていったよ」

 「そうか……おまえは、ほんとに大バカ野郎だな」

 彩香が唐突に僕のことを責めだした。

 「なんでだよ?」

 でも、なぜだか、彼女の責め文句が可愛らしくて僕は思わ

ず笑ってしまった。それにつられて僕の胸に伏せている彼女

の頭が何度も上下した。

 「二年後に会っているのだぞ? どうして気がつかないん

だ……バカか?」

 「あ~あ~、そうだな。でも、あのころはもうショートヘ

アだったぞ? おれがそのときに見たのはロングだったし、

髪に隠れて顔もよく見えなかった……てか、そもそも、そん

な見てる暇なんてなかった。彩香こそ、気がつかなかったの

かよ?」

 僕らはお互いに酷いことを言っている。でも、知っている

んだ。こんなじゃれあいでもしないと、僕らはまたきっとあ

のやっかいな感情に流されてしまう。僕らは互いにそれを見

せるのが嫌な性質だった。

 「私だって、そんな暇あるもんか。だいたい、おまえがこ

の子、この子って叫んでたことぐらいしか……覚えていない

のだ」

 ――良かった。僕はちゃんと叫べていたんだ。

 僕はもう過去のことであまり感傷的になりたくなかったの

で、さらに、わざとらしくおどけようと思った。

 「そんなこと言ってないって。言ってない」

 「ふん、そうだな。おまえは人のこと散々つかんでいただ

けだったな」

 「あぁ、すがるものがほしかったんだ、悪かった」

 「……・とんだ嘘つきだ」

 僕は首もとにかかる彼女の髪をそっと撫でると、おどける

のはもうやめにした。

 僕は彩香の肩を軽く叩いた。彼女は起きあがって、酷い顔

を見せた。

 「……怪我、残ってないか?」

 彩香は僕の心臓に激しく頭突きをした。そのまま左手で素

早く布団を頭からかぶると彼女はその殻から出てこなくなっ

た。

 二度目にやってきた夫人は、今度は無遠慮に僕らのとこま

でやってきた。布団を無邪気に引っ張ると夫人はそのなかに

隠れていた彩香を抱きしめた。とても仲が良いことはすぐに

わかった。目の前で繰り広げられるじゃれあいがとても優し

かったから。

 夫人が何か彩香の耳元で囁くと、彼女は跳ね上がるように

ベッドから飛び降りて、僕めがけて布団を投げつけた。

 次に彼女が部屋に入ってくると、冬でもないのにニット帽

を被って、大きな黒縁のサングラスをかけていた。

 僕はその姿を見て、転げ回った。飛びかかろうとする彩香

を夫人はよく抑えてくれた。

 部屋から出ると、僕らは主人のいる客間へ向かった。主人

はあのときのように窓辺で遠い目をしていた。

 「おやおや、もうパリジェンヌに仕立てたのかい?」

 僕らが入っていくと、主人は彩香を見て僕に笑いかけた。

 僕はそんな主人に思わずクッションを投げつけてやろうかと

思った。僕の方でも、そのくらい陽気だったのだ。まったく、

主人の知り合いというものはとんだくわせものだ。

 ――まさか、自分の娘だったとは。

 主人は僕のことはこれから判断するにして、ともかく、彩

香と僕がつき合うことに口は挟まないと言った。

 僕らは顔を見合わせて、主人の前で互いに笑顔の出来映え

を競った。


―――――――――――――――――――――――――――


 アラームの音と母さんの声とが、私の両耳を引っ張った。

大人しく降参してベッドから起き上がると、カーテンを開け

た。家の中に差し込む光がいつも以上に明るく見える。

 ――愁。そうだ、親父がいようがいまいが、この言葉をも

う自由に使える。家の中がとても広くなった。

 朝ご飯を食べて玄関を出ると、柵越しにポチと遊んでいる

奴が見えた。初め、愁かと思ったが、違った。柊……でもな

いな。とにかく、あのバカ犬め。主人以外に懐くとは番犬失

格だ。叱ってやらないとな。

 門に近づいていくと、それまでポチと戯れていた男が立ち

上がった。私は思わず、ぎょっとした。身長が私より遙かに

あったのだ。

 「よぉ、おはよ?」

 見知らぬ男は飾り気のない笑顔で私を迎えた。

 「誰だ、おまえ。私はおまえのことなど知らないぞ?」

 「えっと……一応、彩香さんの彼氏だと思うんだけど」

 その男は図体に似合わず照れながらそんなことを言った。

 「そうか? 可笑しいな。私の彼氏はそんな爽やか少年じゃ

なかったはずだぞ? 長髪のパーマ頭で、まるで、チャラ男

だ」

 私はもう気づいていた。その男の仕草や声色はまさしく愁

だ。でも、私はそんな冗談を止められなかった。やっぱり、

 愁の照れるところはいつ見てもかわいいのだ。

 「……ひっどい言われようだな。そんなふうに思ってたん

だ?」

 「ふふ、冗談だ」

 私は愁に近寄ると、柵越しに抱きしめてやった。

 「ん……ちょっと、柵が邪魔だな?」

 「そ……そうだな」

 私は柵を開けると、愁を迎え入れた。ポチは足下でガード

した。愁に飛びつけないようにしてやったのだ。

 ――くぅん。

 少しかわいそうだったが、私より先に愁にじゃれた罰だ。

 「おまえ……どうしたんだ、その髪?」

 昨日まで隠れていたはずの耳が、いまはとてもよく見える。

それくらい短く切られていた。

 「あぁ、なんか、このこと知ったら、急にみんなに見せつ

けてやりたくなって」

 愁は首筋に流れる痣を手でたどってそんなことを言った。

 ――良かった。私は昨日ようやく初恋の相手がわかったの

だ。

 「ん?」

 私が顔をじっと見すぎていたのか、愁が戸惑っている。

 「……愁でよかった」

 「本当?」

 「なっ!? 疑うのか!? 私だって……ずっと心苦しかっ

たのだぞ。痛かったのだ」

 よくある話、愁とは以前に初恋の相手についてお互いに話

したことがあった。愁は私だと言ってくれたのだが、私は違

う奴を口にしていた。初等部三年のときで、相手は名前も知

らない奴だ、と。バカみたいに素直に答えた。でも、愁に嘘

はつけない。

 「……ごめん。良かったよ?」

 「もう遅い、バカもの」

 愁を見上げすぎて、首が疲れた。文句とともに、愁の胸に

頬をぶつけた。

 「ごめん、それと……実はおれも昨日、初恋の相手がわかっ

たんだ」

 「な、なんだ? 私じゃなかったのか?」

 せっかく近づいたはずの鼓動が、一瞬にして遠くに離れて

いった。

 「ごめん」

 「……誰なのだ?」

 臆病にも怖くて、愁の胸で方耳を塞いだ。

 「……そうだな、口が悪くていじっぱりで、ほんとに困っ

たひとだよ?」

 「おまえ、それ……」

 愁の陽気な声が塞いだはずの方耳に鼓動とともに流れ始め

た。

 「それでいてさ、とってもバスケが上手でかっこよくて、

そうかと思ったら凄く可愛くて、おまけに綺麗で面白くてお

茶目で凄く優しくて……愛しくてたまんなくて、ん、やっぱ

り、困ったひとだ」

 ――なんてやつだ。お世辞ばっか並べやがって……。まる

で、別人じゃないか。

 「愁……そいつ、なんて奴だ?」

 「国嶋彩香、おれの目の前にいる子だよ?」

 やっぱり、こいつは酷いいじめっ子だ。いつも私を泣かせ

るようなことをする。

 「……ごめん、おれもずっと気になってたんだ。あのとき

の豪雨の子。神社に行くたびにプレートにあの子が幸せであ

りますようにって書いてたんだ。本当はあの子が初恋の相手

だった」

 この嘘つきめ。と言って、本当は引っぱたいてやってもよ

かった。でも、不思議と気分は穏やかだ。

あぁ、なんていうことなんだ。私が幸せを願った相手も愁

が密かに願った幸せの相手も、結局はお互いに向かっていた

のだ。二人以外のどこにもいかずに。でも、私は愁の言うと

おりいじっぱりで、とてもその嬉しさを表すことができなかっ

た。

 「……とんだ、嘘つきだな、おまえは。初恋は私だって言っ

たのに」

 「それで、距離ができるのが嫌だったんだ。彩香の初恋も

おれの初恋の相手も違ったら、なんか、それだけで、その場

の空気が冷めてしまいそうで、嫌だった。そこに溝ができる

くらいなら、黙っていたかったんだ」

 「愁……」

 「嘘をついてでも、彩香とは一緒にいたかった。許してく

れ」

 そんなことを恥ずかしげもなく愁は言った。

 「ふん」

 「ごめん、彩香?」

 「溝なんてできるわけがないだろう。その場の空気が悪く

なったって、二人はいつだって一緒だ。知るか。悪かったな、

おまえの初恋の相手が口が悪くていじっぱりな奴で。たいそ

う幻滅したろ?」

 愁の黙っていた理由が少し頭にきて、そんな意地悪を言っ

てやった。

 「おれは安心してるよ?」

 「おまえ……」

 「ハハ、そう睨まないでくれよ?……あ、そうだ。しばら

く、爽香には会わない方がいいよ?」

 愁はそう言って、私の足下からすり抜けてきたポチを撫で

だした。まったく、おまえの彼女はこっちだろ。私はもうあ

きらめて、愁と同じようにしゃがんでポチをいじった。

 ――くぅん。

 「なぁ、どうしてだ? 爽香の意地悪はいまに始まったこ

とじゃないだろ?」

 愁もそれを知っているはずなのに、どうしてこいつはそん

なことを言い出すのだ。

 「この前、神社にお参りに行ったんだけど、いつも通りに

プレートに書かなかったら、あいつ感づいちゃって。それで、

初恋まで奪うなんて信じられないって凄い顔してたから」

 「ふふ……そうか。私は奪えてよかったと思っているがな?」

 愁は笑って、でも、視線はポチに投げかけていた。相変わ

らず、ポチにかまけている。なんてやつだ。

 私はそんな愁を突き飛ばしてやった。愁は見事に芝の上に

転がった。


―――――――――――――――――――――――――――


 今日こそ私の初登校日だ。ようやく、こうして、愁と並ん

で登校ができるのだから。でも、そんな肝心なときに限って、

邪魔者が入るものだ。

 正門にたどり着くと、計ったかのように爽香と出くわした。

 「爽香か。 おはよ」

 爽香は立ち止まって、視線だけ返してきた。

 「なんだ? 挨拶ぐらい返したっていいだろ?」

 「なによぉ~この泥棒猫」

 本当に小姑みたいな奴だ。爽香のジト目にははっきりと不

快の文字が浮かんで見えた。

 「……鳴いてやろうか?」

 「っ!? 兄さん!!」

 愁はにじり寄って来た爽香に苦笑いを浮かべて、視線を泳

がせた。

 「おわっ。誰や自分!?」

 そんなときの助け舟は、決まって柊だ。こいつもタイミン

グよく、いや、悪くかは知らないが、私たちの後方からやっ

てきた。目元には涙を浮かべている。きっと、大欠伸でもし

たあとなのだろう。

 「おれだよ、おれ」

 「あぁ、あの詐欺師の手口の」

 「ふふ、柊もいいかげん切ったら?」

 「やかましい奴やなぁ~、自分こそその長ったらしい髪、

切ってみぃ?」

 「サイッテ~……女の子に髪切れとか、どこまでドバカな

の?」

 「なんやとぉ!?」

 「なによぉ?」

 それにしても、この二人はいつ見ても喧嘩ばかりしている

な。愁も愁で、この二人の喧嘩はいつも止めようとしない。

私が止めてやってもよかったのだが、それよりもいまは遠く

から聞こえてくる声の方が気になってしょうがなかった。

 「えっ、あれ誰? やだ、彩香、浮気?」

 「違う違う、あれ、愁君じゃない?」

 「嘘!?」

 「だって、あそこにいるの……」

 なんて薄情な奴らなんだ。愁の冷眼視が和らいだ途端にこ

れだ。頭にくる。

 「っ……愁」

 「ん? どうした?」

 「おまえ、明日から帽子被れ」

 「え、なんで?」

 「いいから、しろ。良い子ぶるな」

 「ふふ、あらあら、不思議~。泥棒猫さんはおんなじ猫さ

んが怖いのねぇ~?」

 まったく、大人しく柊と言い合っていればいいものを。

 「おまえ、嚙み付くぞ?」

 「兄さん、このひと怖ぃ~」

 爽香はおどけて、愁の腕をつかんだ。

 ――あぁ、愁に近づく奴が現れたなら、そのときは誰にだっ

て噛み付いてやる。

 顔を上げると、首筋に流れる傷跡の先で、愁の優しい笑み

が待っていた。おまえがいなかったら、私はどうなっていた

のだろうな?――なぁ、愁。

 初等部でおまえと出会ってからの、私もそうだ。どんどん

私はおまえに壊されていく。たとえば、いまだってそうだ。

愁に身体を寄せて、私は額を胸もとに当てている。こんな恥

ずかしいこと、なんでしなくちゃならないんだ。

 「あ、おい、彩香!? 大丈夫か!?」

 愁はそんな私の肩を引き離すと、そんなことを言いやがっ

た。そこまで身体が弱いものか。空気を読め、愁。

 でも、そういう思いは読み取られたくない相手にこそ伝わ

るらしい。

 「ちょっとぉ!? 何してるのよ!こんのハレン・チネコ!」

 「なんなのだ、その名前は!?」

 爽香は有無を言わせずに私の首根っこを引っ張って、その

まま構内に連れ出した。

 門を通る、愁との最初の一歩はまたお預けらしい。どんど

ん離れていく愁がやっとさっきの経緯に感ずいたのか、妙に

照れてこっちを見ている。ちょっとは助けにきたらどうなん

だ、おまえ。

 でも、私もやっといま仕出かした行為に気がついて恥ずか

しくなった。そっぽを向くと、友達が妙ににやけて私を見て

いるのがわかった。

 愁に崩されていく。腹立たしいのに、なぜだか嬉しくなる。

でも、やっぱり、憎らしい。私の壁だけあいつに崩されてた

まるものか。見ていろ。おまえ以上の速さで、私はおまえの

壁を崩してみせる。

 お互いの壁が崩れて平地になって、そこで初めて、私はお

まえに会えるんだ。あの日のおまえも、きっとそこにいるの

だろ?



(15)2006年に公開された、アンドリュー・デイヴィ

    ス監督の映画作品。

(16)アルベール・カミュ(1913-1960)のこと。

    アルジェリアのモンドヴィ生まれ。主な作品に、

    『異邦人』『ペスト』『転落』等がある。

    1957年、ノーベル文学賞受賞。

(17)レイモン・ラディゲ(1903-1923)のこと。

    パリ近郊のサン=モール生まれ。主な作品に、

    『ドルジェル伯の舞踏会』『肉体の悪魔』等がある。

    なお、『肉体の悪魔』は16~18歳の間に執筆され

    ている。

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