おまけ2 ついに新婚生活の幕開けである!(ザカライア)
※以前活動報告に載せていたものです。
ザカライア一人称なので、とてもウザいです……ごめんなさい。
さて、ここで鼻血について語りたい。鼻血の正しい止め方を知っておるだろうか? 上を向いたり鼻の奥まで詰め物をするのはいかんぞ! よいか、絶対にやってはならん!!
私ほどの武人であれば、血管は大河のような太さ、そして血潮は激流となって常に体中を駆けめぐっておる! そんな私の鼻血は王都の広場にある噴水のごとき勢い。さすがはハーティア一の武人であると皆が感心して言葉を失うほどである。
それはさておき! 結婚式を問題なく終えた私とリアは、ついに初夜をむかえた。むっ、夫婦なら当然、初夜を迎えるに決まっておるだろう! だが、このときの私は鼻に詰め物をしてはならんという、当然のことすらわからなくなるほど舞い上がっていた。
式の最中、一度豪快に鼻血を出したため、さすがに二度も出ないと思っていた。おのれの限界と回復力のすさまじさを見誤ってたとは武人としてまことに情けない。
だから私は保険のような軽い気持ちで、両鼻にガーゼで作った鼻栓をして初夜に挑んだ! 我ながら素晴らしい作戦だと、その時は思っていたのだ。その時は!
なんと愚かな……。
「ごほっ、ぐはぁぁぁぁっ!!!!!」
少し気合いが入りすぎ、頭に血がのぼった私の鼻血は、大切な初夜の寝台の上でも容赦なくふき出す。我が手製の鼻栓と、我が体内のめぐる血潮とのいわば骨肉の争いは、鼻栓がみごとに勝利した。
結果、口からふき出したのだ!
「と、吐血……!?」
カーライル家の嫁にふさわしく、鼻血ごときでは動じぬリアも、さすがに真っ青になっておる。薄い絹の夜着はほんの少し透けておる。夜目の利くおのれの視力のよさを呪うしかない。これでは鼻血は止まらぬわ。
「大事ない! いつもの鼻血ゆえ……」
「そんな? 口から出ていますが?」
私のあごの下にたらいをあてながら、リアは不安そうに見つめてくる。いつもは強気の彼女が、そういう表情を向けてくることはめずらしいことだ。やはり鼻血はとまらぬわ。
「うむ。鼻血が出ないように鼻栓をしたら、逆流して口から出てきたようだ! 半分ほどは飲み込んだのだがな。……少々むせてしまった」
「……そうだったのですか! ならばよかったです。お病気かと思い心配いたしました」
リアよ。これは病である。恋という立派な病である。成就してもまだ我が体を蝕むのだから、どうしようもない病である。
「ザカライア様、鼻栓は危険ですからとってください」
「ふむ……」
リアに気づかれないように、鼻の奥のほうに突っ込んだのが失策であったのか。それとも水分を吸ったことによる膨張を考えずにぎちぎちに詰めこんだのが間違っていたのか、鼻栓は取れない。
リアがどこからか、ピンセットなるものを持ってきて、鼻栓救出作戦の実行部隊となる。しかしハーティア王国一の握力を誇る私が自らの手で作りあげた鼻栓はなかなかに手強い。
こうして、初めての共同作業をしながら新婚初夜は終わった! 終わってしまった!! なんたる不覚!!
(終)




