↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
静寂な太刀は椿の如し  作者: 東風
第五章 情とは
PR
14/14

モフモフ桃源郷 番外編

 近頃は世間や周りがよく話題に上がっている動物カフェ。


 昔は犬や猫と言った愛玩動物を飼いながらカフェを経営していたものも最近は色んな動物のカフェが増えている。


「ねぇ今日ここに行こうよ!!」

「いいね!行こ行こ!!」


 例に漏れず若者の人気が高い。学校帰りの学生が癒やしを求めて歩き出す。


 小動物や動物は元々興味はあった。たまには息抜きとして動物カフェに行ってみるのも悪くはないと思う。


 最近、高校の近くの駅に動物カフェができたらしい。確かサモエドカフェだった記憶がある。早速向かってみるとしよう。


 歩くこと五分、駅が見える場所に辿り着く。レトロを感じる店の外観とは裏腹に看板は可愛く模様が描かれていてる。入店すると今日は人が空いているようで人が少ない。


 ここの店は食事もできるらしい。飲食の間と触れ合いの場で区分されている。メニュー表を見るとサモエドをモチーフとしたスイーツやらご飯が揃っている。


「いらっしゃいませぇ。ご注文お決まりでしたら伺います」

「えぇ、サモエドのチーズスフレとチーズハムサンドとカフェラテを一つお願いします」

「サモエドのチーズは食後にいたしましょうか?」

「えぇ、食後で」

「かしこまりましたぁ〜ごゆっくり」


 窓越しにサモエド達がウロウロと回っている。なんとも……


「お待たせいたしました。チーズハムサンド、カフェラテでございます」

「ありがとうございます」


 

 チーズハムサンドの焼き目はサモエドの焼き目がついていて片方は顔があしらっており、泡でサモエドの描かれたカフェラテは少し揺らすとぷるんと動く。


 なんとも。


 食べると味はマヨネーズにブラックペッパーが塗られたパンにチーズハムの味が重なって美味い。カフェラテは最後に頂こうとしよう。


「すいません。チーズスフレを頂けますか」 

「承知しました」


 チーズスフレなんていつぶりだろうか。久しぶりに楽しみという感情が湧いた。


「お待たせしましたぁ〜サモエドのチーズスフレです」

「ありがとうございます」


 サモエドの形が残ったチーズスフレ。フォークで切り口内へ運ぶ。柔らか口解け、ひんやりしていて想像を絶する美味しさに声が出そうだ。


 カフェラテもスフレに合う。ほどよい苦さで珈琲の味がスフレの美味しさに拍車をかける。口内では黄金の三角形ができ上がっている。


 満足感のある完食に至った。だが今回は食事が目的ではない。


「すいません。ドッグ用のお菓子を頂けますか?」

「はい。少々お待ちください」


 ほどなくしてお菓子を渡されいざサモエドの触れ合いの場に入る。


 入るや否や俺に数匹のサモエド達が寄ってくる。俺は座り上のサモエド達の名前を見る。首輪の色で分かるようにしているらしい。


 だが名前が全部ロシアの酒の名前だ。青い首輪のクワス、赤い首輪がウォッカ、緑の首輪がスタリカ、黄色の首輪のサマゴン他諸々といる。


「クワス、お座り」


 クワスは俺の元へもっと近づきそこにお座りした。お手をさせて頭を撫でる。そうして――


「よくできた」


 犬用のクッキーを食べさせる。


クゥン


 唸り嬉しいそうにお菓子を食べる。他のサモエドにも同じことを繰り返すと甘えてくるようになった。


 なんとも、なんとも……愛くるしいのだろう。


 壁の端に追いやられるとその柔らかな毛並みが俺にのしかかってくる。その中では俺を舐める子もいた。


「……やめろ」


 そんな問いかけも虚しくこの温かくモフモフとした生物に心を許してしまう。俺にまたがってがっつき顔を舐められたり、俺の手を求めて撫でられに行く子。


 これが人が求める癒やしというものなのだろう。愛くるしく人懐っこいその一面に人は弱い。それは俺も例外ではなかったようだ。


 そろそろ帰宅せねばならない。なぜだかもう心細い。だが躊躇ってしまうのも剣士として不甲斐ない。会計をし店を後にする。


 その帰りにぬいぐるみ屋に寄る。そこには小さく手に収まるサイズの物がズラリと並んでいる。そこには……


「……サモエド」


 デカく顔もデフォルメされた等身大サモエドぬいぐるみがそこには置かれていた。毛並みはどうだろうか。その考えに突き動かされ撫でてみる。


「同じだ」


 思わず声が出たぐらい精巧に作られていた。値段も申し分なく、貯金を見ると余裕で買える価格だ。


 だが柊裕朔がぬいぐるみを買っていたというのが世間に露呈でもしたら理解できない憶測が飛ぶだろう。


 ならば――


 こういう時のために変装道具は持ってきた。前に姉さんが買ってくれた丸いサングラスだ。これは彩度が暗く相手から見ると身元が見えない。


 俺は腹を括りレジへと向かう。そこには試合と同じ冷えた緊張感が張り詰めた。少し声を作り店員に喋る。


「すみません、等身大サモエドぬいぐるみを頂けますか?」


 平常心を保とうとするが心臓の高鳴りは抑えきれない。


「はい三千二百円となります」

「キャッシュカードで」

「お買い上げありがとうございます」


 すんなり買えた。さっきまで緊張感は何だったんだろうか、だが満足だ。少々値が張ったがこのぬいぐるみは必要経費だ。


 デカいぬいぐるみを背負い早々と帰らなければ姉さんが帰ってきてしまう。小走りで帰っていき何事もなくその日は終わった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。