第191話:材料の受け渡しと国宝級の魔法鞄
商業ギルドに到着した楓たちは、すぐに受付嬢のエリンへ声を掛けて、セリシャへ取り次いでもらった。
セリシャからはすぐに許可が下りて、そのまま彼女の部屋へ移動する。
「おかえりなさい、みんな!」
部屋に入って早々、セリシャからはそう声を掛けられた。
「ただいまです、セリシャ様」
「大丈夫だったの? 怪我はしてない?」
「大丈夫です。ご心配をお掛けしました」
セリシャは楓たちが王都へ向かった理由を聞いていた。
そのため、無事な顔を見れたことで安堵し、何もなかったかと聞いてきたのだ。
「私たちがついているのよ? 大丈夫に決まっているじゃないのよ!」
「カエデさんの安全には、最大限の配慮をしていたつもりです」
「そう。それならよかったわ」
ティアナとヴィオンも無事だと分かり、セリシャは胸を撫で下ろす。
「……あら? ところで、アリスさんとスズネさんは?」
「二人は王都に残りました。やることができちゃいまして」
セリシャはアリスと鈴音が楓と同じで、勇者召喚されたことを知っている。
だが、道長のことは知らない。
そのため、彼のことを伝えていいのか迷い、アリスと鈴音の状況だけを伝えることにした。
「そうなのね。寂しくなるけれど、またこっちにも来てくれるのでしょう?」
「きっと来てくれると思います」
「うふふ。そうなのね。それなら嬉しいわ」
ずっと会えないわけじゃないと、セリシャは笑顔で頷いた。
その言葉や表情を見た楓は、なんとなく自分自身に言われているように感じて苦笑する。
(……そうだよね。二人とはまた、会えるんだよね)
どこかでもう会えないのではないかと、楓は勝手に考えていた。
だからこそ、自分の卑下するような思考に陥っていた。
だが、そうではない。
道長の問題が解決すれば、きっとまた会える。
そう考えると、ティアナとの会話で軽くなった気持ちが、さらに軽くなった気がした。
「それで? 今日はどうしたの? まさか、帰ってきた挨拶だけ、なんてことはないでしょう?」
セリシャがそう問い掛けると、楓は本題を思い出して顔を上げる。
「実は陛下から今回のお礼に魔法鞄を頂いたので、材料を引き取ろうと思ってきました!」
「……え? へ、陛下から、魔法鞄を、頂いたの?」
「はい!」
楓が材料の引き取りについて話をすると、セリシャは驚き過ぎて詰まりながら声を漏らす。
材料の引き取りに驚いたわけではない。エルデクスから直接褒美を頂いていたことに驚いたのだ。
「……それ、普通の魔法鞄なの?」
「えっと、陛下は容量無限で時間経過も止められるって言っていました」
「「「…………国宝級の魔法鞄!?」」」
「……え? こ、国宝級?」
セリシャだけではなく、魔法鞄の性能については初めて聞いたティアナとヴィオンも驚きの声を上げた。
確かにすごいものだとは楓も思っていた。
だが、それが国宝級の代物だとは思ってもいなかった。
「……あ。陛下が持っていた魔法鞄なんだから、国宝級なのは当然か!」
「「「そこに驚いているんじゃない!!」」」
「……で、ですよね~」
頬を掻きながら苦笑いを浮かべた楓だったが、話を進めようと口を開く。
「と、とにかく! 頂いちゃったものは仕方ないです! お返しする方が失礼になるんじゃないですか?」
「それはまあ、そうだけれど……」
「それに私は、ピースに頂いた褒美で新しい従魔具を作るって決めているんです! ねえ、ピース!」
「キュン!(うん!)」
困ったような表情をしていたセリシャに対して、楓は勢いで、ピースを巻き込み話を続ける。
「……ふふ。それもそうね。っというか、ピースも褒美を頂いたの?」
「あ、レクシアも頂きました」
「ライゴウもだな」
「……さすがは陛下ね。太っ腹だわ」
それからセリシャは、自分の魔法鞄に入っていた材料を楓の魔法鞄へ移した。
その後、楓がやり過ぎてしまわないかを確認するため、ピースの従魔具作成はセリシャの部屋で行うことになった。




