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異世界従魔具店へようこそ!〜私の外れスキルはモフモフと共にあり〜  作者: 渡琉兎


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第178話:虚ろな瞳

「ケイル! どうしたんだ、ケイル!」

「ギギグギ、ゲガガ……グギガアアアアッ!!」


 ひっ迫した表情でレイスが声を荒らげるも、ケイルは奇声を発しながら襲い掛かってくる。

 クロウがケイルの攻撃を防いでいるものの、彼は皇太子であるアッシュの護衛騎士に任命されるほどの騎士である。

 明らかに様子はおかしいものの、その動きは鋭さを持っており、クロウの必死さが主であるレイスにも伝わってくる。


「ピース! クロウを助けてあげて!」


 そこへ楓がピースに指示を出す。


「キュキッ!?(えぇっ!?)」

「あのままじゃ、クロウが……レイス様が!」


 ピースとしては万が一に備えて楓の側から離れたくなかった。

 だが、その楓がクロウとレイスを助けてほしいと指示を出した。

 当然、ピースは葛藤してしまう。


「……ギュギュ(……でも)」

「お願い、ピース!」

「……キュキュイ!(……分かった!)」


 最後は楓の想いを汲み、ピースはクロウの援護に入る。

 しかし、楓の側を離れたくないという自分の意志も大事にしたい。

 故にピースは魔法でクロウを援護することにした。


「キュギッ!(えいッ!)」


 ケイルの足元に水たまりを作ったピース。

 どれだけ技術に長けた騎士であっても、足元がしっかりしていなければその実力を発揮するのは難しい。

 それがただの水たまりであれば、ケイルほどの騎士なら踏み込みに問題は生じないだろう。

 しかしピースは、水たまりの温度を一気に下げることで、水たまりを凍らせていた。


「ゴア?」


 そうとは知らないケイルが踏み込むと同時に、その右足がツルンと滑った。


「クロウ!」

「フジュジュウウウウッ!」


 この隙を見逃してはいけないと、レイスが声を張り上げ、クロウも気合いのこもった声で鳴いた。

 右のかぎ爪を拳に変えて、一気に振り下ろす。


 ――ドゴオオオオンッ!


「ゴガアッ!?」


 苦悶の声がケイルから漏れると、その身体から力が抜ける。

 完全に気絶したところで、レイスは大きく息を吐く。


「……はあぁぁぁぁ。助かったよ、クロウ。ピースもありがとう」

「フシュシュ!」

「キュッキュン!(えっへん!)」


 クロウとピースに労いの声を掛けると、二匹は満足気に鳴いた。


「レイス様! ご無事ですか!」

「カエデ! 大丈夫なの!」


 そこへミリアとティアナ、レクシアが慌てた様子でやってきた。

 その背後にはアリスと鈴音、そして他の騎士たちもいて、騒動に気づき集まってくれていた。


「ミリア様、ティアナさん!」

「ケイルを見つけたんだが、正気を失っていたのか、襲われてね。なんとか制圧したところだよ」

「お下がりください! クロウ、そのまま押さえつけておいてくれ!」

「フシュジュ!」


 すぐにミリアと騎士たちが動き出し、レイスを守るように下がらせる。

 気絶しているとはいえ、いつ目を覚ますかは分からない。

 クロウが押さえつけている間に縛り上げたのを見て、楓とレイスはひとまず胸を撫で下ろす。


「レイス様、よかったです」

「カエデ様もね。それに、お手柄だったよ、ピース!」

「キュッキュン!(えっへん!)」


 小さな胸を張りながら鳴いたピースを見て、先ほどまでの緊張が一気に和らいでいく。


「もう! 無茶をするんだから!」

「あはは。ごめんなさい、ティアナさん」

「でも……うん。よく頑張ったね、カエデ」


 安堵の表情でそう口にしたティアナは、楓の頭を優しく撫でる。


「……っと! 年下の私がカエデの頭を撫でるのは、嫌だったかしら?」

「そんなことありません! ……とっても嬉しいです。えへへ」


 手をどかそうとしたティアナだったが、楓が彼女の胸に顔をうずめたことで、そのまま撫で続けることにした。


「……ぅ……ぅぅん」


 するとここで、気絶していたケイルから呻き声が聞こえてきた。

 一瞬にしてこの場にいる全員に緊張が走る。

 ティアナは楓を守るように自らの背中の方へ移動させた。


「……私は……これは、どういうことだ?」

「……ケイル。もしかして、何も覚えていないのか?」


 困惑しているケイルに対して、レイスが代表して声を掛けた。


「覚えていない、ですか? ……わ、分かりません。どうして私は縛られているのか……記憶が…………ア、アッシュ様は? 皇太子殿下は、どちらに?」


 視線を泳がせているケイルを見て、彼が嘘をついていないとレイスは判断する。


「……スズネ様。ケイルに完全回復をお願いできますか?」


 そして、鈴音に回復魔法をお願いした。


「か、構いませんが、いいんですか?」

「はい。先ほどのケイルは普通ではありませんでした。もしも操られていたなら、完全回復で癒すこともできるでしょうから」


 そこまで言われた鈴音は、ケイルを警戒しながらも完全回復を発動させた。


「……ありがとうございます、レイス様」

「構わないよ。ただ、情報提供には協力してほしい。知っていることを全部話してもらうよ、ケイル?」

「はっ!」


 こうしてケイルを見つけることはできたが、いまだアッシュの行方は分からない。


(何か手がかりがあればいいんだけどな)


 楓は強く、そう願うのだった。

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