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【Web版】異世界行ったら長野の神になりました  作者: 茨木野
第3章

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250/255

250.



 ……。

 …………。

 はぁ?


「お前が? 霊王?」


『うむ。いかにも』


「嘘つけ。霊王がそんな、ポテチの粉まみれで腹出して寝てるわけないだろ」


 俺はフェリの頬をむにゅっと摘む。


『あだだだだ! 痛い! やめるのじゃ! 不敬であるぞ!』


「だいたい、もしお前が霊王なら、今まで黙ってたのはなんでだ」


『言う必要がなかったからじゃ。それに、人間は肩書きに弱い。我の正体を知れば、お主のように態度を変える輩もおるじゃろうて』


「いや、俺の態度は変わってないぞ。むしろ悪化してるぞ」


 俺はさらに頬を引っ張る。

 餅のように伸びる白い頬。

 こいつ、本当に威厳のかけらもないな。


『わ、わかった! わかったから離せ! 証拠を見せる!』


 フェリが涙目になって訴えるので、俺は手を離した。

 フェリは前足で頬をさすりながら、ふんすと鼻を鳴らす。


『まったく……。よいか、始動キーの認可権限は、確かに我にある。お主にその力を使わせてやってもよいが、タダというわけにはいかぬ』


「金か? 世知辛い王様だな」


『違うわ。現物支給じゃ』


 フェリがキリッとした顔で、とある商品を要求した。


『「極上・厚切りベーコンジャーキー(黒胡椒味)」を献上せよ』


「……コンビニのかよ」


『あれ美味いんじゃよ。最近、お主が買ってこないから禁断症状が出ておる』


 霊王の威厳、数百円なり。

 俺は脱力しながらも、キッチンの棚から買い置きしていたジャーキーを取り出した。

 封を切ると、スパイシーな肉の香りが漂う。


『おおっ! それじゃ! 苦しゅうない、近う寄れ!』


 フェリが尻尾をプロペラのように回転させ、涎を垂らして飛びついてくる。

 俺はそれをひょいとかわし、ジャーキーを一枚、口に放り込んでやった。


『ふがふが……んっくん。うまい! やはりこれじゃのう!』


 フェリは至福の表情で咀嚼し、あっという間に完食した。

 そして、満足げに腹をさする。


『うむ。献上品の儀、しかと受け取った。よかろう、特別にお主に始動キーを与えてやろう』


「お、やっとか。頼むぜ」


 俺は期待に胸を膨らませる。

 これで魔法の暴発を防げる。

 どんなかっこいい詠唱なんだろうか。

 古の契約とか、汝の真名をとか、そういうやつか?


『では、心して復唱せよ。システムに音声を登録する』


「おう!」


『「フェリ様、大好きちゅっちゅ♡」』


「……は?」


 俺は耳を疑った。

 今、変なノイズが聞こえた気がする。


「ごめん、もう一回言ってくれ」


『だから、「フェリ様、大好きちゅっちゅ♡」じゃ』


 ……。

 …………。


「ふざけんな!」


 俺は思わず叫んだ。


「なんだその恥ずかしいセリフは! 罰ゲームかよ! 戦闘中にそんなこと言えるか!」


『なんじゃ、不満か? 愛の告白こそ、最も強い言霊となりうるんじゃぞ?』


「絶対嘘だ! お前、からかってるだろ!」


 俺が詰め寄ると、フェリはニヤリと口角を上げた。

 邪悪な笑みだ。


『うん』


「認めたなこの駄犬! 変えろ! もっとこう、かっこいいやつに!」


『もう登録してしまったからのう。変更には、追加料金として「特選・熟成サラミ」が必要じゃ』


「この守銭奴! ……くそっ、買ってくりゃいいんだろ!」


 結局、俺は霊王様の掌(肉球)の上で踊らされているだけのような気がしてならなかった。



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