250.
……。
…………。
はぁ?
「お前が? 霊王?」
『うむ。いかにも』
「嘘つけ。霊王がそんな、ポテチの粉まみれで腹出して寝てるわけないだろ」
俺はフェリの頬をむにゅっと摘む。
『あだだだだ! 痛い! やめるのじゃ! 不敬であるぞ!』
「だいたい、もしお前が霊王なら、今まで黙ってたのはなんでだ」
『言う必要がなかったからじゃ。それに、人間は肩書きに弱い。我の正体を知れば、お主のように態度を変える輩もおるじゃろうて』
「いや、俺の態度は変わってないぞ。むしろ悪化してるぞ」
俺はさらに頬を引っ張る。
餅のように伸びる白い頬。
こいつ、本当に威厳のかけらもないな。
『わ、わかった! わかったから離せ! 証拠を見せる!』
フェリが涙目になって訴えるので、俺は手を離した。
フェリは前足で頬をさすりながら、ふんすと鼻を鳴らす。
『まったく……。よいか、始動キーの認可権限は、確かに我にある。お主にその力を使わせてやってもよいが、タダというわけにはいかぬ』
「金か? 世知辛い王様だな」
『違うわ。現物支給じゃ』
フェリがキリッとした顔で、とある商品を要求した。
『「極上・厚切りベーコンジャーキー(黒胡椒味)」を献上せよ』
「……コンビニのかよ」
『あれ美味いんじゃよ。最近、お主が買ってこないから禁断症状が出ておる』
霊王の威厳、数百円なり。
俺は脱力しながらも、キッチンの棚から買い置きしていたジャーキーを取り出した。
封を切ると、スパイシーな肉の香りが漂う。
『おおっ! それじゃ! 苦しゅうない、近う寄れ!』
フェリが尻尾をプロペラのように回転させ、涎を垂らして飛びついてくる。
俺はそれをひょいとかわし、ジャーキーを一枚、口に放り込んでやった。
『ふがふが……んっくん。うまい! やはりこれじゃのう!』
フェリは至福の表情で咀嚼し、あっという間に完食した。
そして、満足げに腹をさする。
『うむ。献上品の儀、しかと受け取った。よかろう、特別にお主に始動キーを与えてやろう』
「お、やっとか。頼むぜ」
俺は期待に胸を膨らませる。
これで魔法の暴発を防げる。
どんなかっこいい詠唱なんだろうか。
古の契約とか、汝の真名をとか、そういうやつか?
『では、心して復唱せよ。システムに音声を登録する』
「おう!」
『「フェリ様、大好きちゅっちゅ♡」』
「……は?」
俺は耳を疑った。
今、変なノイズが聞こえた気がする。
「ごめん、もう一回言ってくれ」
『だから、「フェリ様、大好きちゅっちゅ♡」じゃ』
……。
…………。
「ふざけんな!」
俺は思わず叫んだ。
「なんだその恥ずかしいセリフは! 罰ゲームかよ! 戦闘中にそんなこと言えるか!」
『なんじゃ、不満か? 愛の告白こそ、最も強い言霊となりうるんじゃぞ?』
「絶対嘘だ! お前、からかってるだろ!」
俺が詰め寄ると、フェリはニヤリと口角を上げた。
邪悪な笑みだ。
『うん』
「認めたなこの駄犬! 変えろ! もっとこう、かっこいいやつに!」
『もう登録してしまったからのう。変更には、追加料金として「特選・熟成サラミ」が必要じゃ』
「この守銭奴! ……くそっ、買ってくりゃいいんだろ!」
結局、俺は霊王様の掌(肉球)の上で踊らされているだけのような気がしてならなかった。
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※1/30(金)
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