32.夏休み 街(カミラ・パティ編)(Ⅱ)
何とかして別行動をとりたいものの、相手はいかんせん公爵令嬢。しかもこちらに興味深々ときたのだからもうお手上げだ。パティは渋々カミラと共に目的の手芸店に向かった。
多くの手芸店がこぢんまりとしているのに反し、クラフトキルトはそこそこ大きな店舗を構えていた。この国の手芸店の中ではなかなか名の通った店で、全国に数十店舗を構えている店なので、品揃えもなかなか良い。店に着くとカミラは色とりどりの布達に早速魅入られていた。
「まあ、すごい…ここら辺じゃ見かけないようなものも多いのね。異国のものかしら?」
「ああ、それは隣国キルヴァインのだね。あそこはうちと違って鮮やかで色とりどりな装飾を好むんだよ。うちの国でも国境辺りの地域だとインテリアとかで結構見かけるんだけど、ここからは結構離れてるから珍しいよね。…面白いのが、こんなにカラフルなのに、なぜか下品にはならないんだよね、あの国の色合わせ。まあ、あたしはもうちょい派手な方が好きだけどね~。」
「へえ…キルヴァイン、行ってみたくなりますわね。あ、あの棚、糸がたくさん並んでますわ。」
「えーと、右から順に手芸用、洋裁用、ミシン専用糸に、最後の太いのは編み物用の毛糸だよ。今は夏だから毛糸は品薄だね。あーやっぱミシン糸はちょい高めかあ…」
「あら、こっちにはビーズ。キラキラしてきれいですわね。それに、天然石と金具…?れ、レジン…?」
「おおー!!やっぱ夏はアクセだよね~!!ハンドメイドだと自分好みにカスタマイズできちゃって最高!ちゃちな感じにならないようにするのが大変だけど、その分腕の見せどころだよね!」
「……随分詳しいんですのね。」
カミラが少し驚いた様子でこちらを見る。その言葉ではっと我に返ったパティは急いで言葉をつけ足した。
「ぜ、全部ばーばの受け売りだから!!あたしは正直あんまりわっかんないんだけどねえ~!!」
店に入って浮かれてしまった己を猛省する。隣のカミラが何かと興味津々に尋ねてくるので、ついぺらぺらと説明してしまった。これでうっかり自分の趣味がバレでもしたら、きっと馬鹿にされるに違いない。下手すれば学校中に言いふらされて、休み明けから肩身の狭い思いをするかもしれないのだ。アンジェやカーティスはどう思うだろう。派手好きの二人だ、きっと侮蔑のまなざしを向けてくるに違いない。想像しただけで思わず身震いが止まらない。
「……そう、貴方のお祖母様って、本当に手芸が好きなのね。私はこれといった趣味がないから少し羨ましいわ。」
「そりゃあ、カミラ様は何でも出来るからでしょう。」
「え?」
「あー、なんて言うんだっけ?きよーびんぼーってやつ?あんま覚えてないんだけど、昔習った熟語でさあ、なんでも器用にこなせちゃう分、何か一つに執着できない、みたいな。…あれ、悪い意味の言葉だっけ?…怒んないでね、あたし馬鹿だからさあ。」
パティが急いでカミラの顔色を伺う。
「器用貧乏、ね。まあ確かに、あまりいい意味の言葉ではないけれど、気にしなくてよ。」
「あ、ありがと。やっぱ悪い意味なのかー…でもあたし、あの言葉習った時、それってすごくいいじゃん!って思ったんだけどね。だって、執着できないっていうか、する必要ないんでしょ?何でも出来るんだもん。逆に何も出来ないヤツは、それだからこそ少しでも出来ることにすがりたいワケで。」
自分はいったい何を言っているのだろうか。そう思うのに、会話の締め方がうまく見つからず言葉がそのまま続いてしまう。
「あたし不器用だから、勉強とかからきしだし、運動も得意なわけじゃないし。何教わるにしても人より時間がかかるんだよね。おまけに努力するのも嫌い。…だから、カミラ様みたいになんでも出来る人って本当に尊敬するよ。」
「……わたくしはお家柄、周りがうるさくて仕方なく、ですわ。……それに、なんでも出来る訳じゃないわ。」
「へ?」
「まあ、この話はまた今度。…それより、貴方のお祖母様のお土産を選ばなくちゃ。」
「あ、ああ、そうだよね!あんまり遅くなるとアンジェ達に迷惑かけちゃうし!!」
カミラの言葉をきっかけに、パティは祖母へのお土産を吟味し始めた。カミラはしばらくの間、その様子を後ろで伺っていたが、あまり気を遣わせては悪いと思ったのか、やがて自分の興味のある方に一人で回っていった。
三十分もすると、パティはすっかり買い物を終えていた。ちゃっかり自分の欲しかったものも購入できたのでご満悦である。
「あら、買い物、終わったのね。」
「うん。待たせてごめんね。さ、次はカミラ様の欲しいものを見に行こうよ!」
「わたくしはいいわよ。そこまで本気で行きたかったわけでもないし…」
「え~、それだとかえってあたしが心苦しいんだよなあ…」
「そう、じゃあお言葉に甘えて向かいましょうか。」
そこから十数分も歩くとカミラの目的地に着いた。目の前の店を見て、パティが思わず目を丸くする。カミラの言っていたアクセサリーショップとは、巷で有名な超一流高級ブランド店のことであった。
この話で十万字突破です!せっかくめでたい(?)回なのに、いつもより短めですみません^^;
器用貧乏の話は、作者自身が昔思った気持ちをそのまま書いてます。私はどちらかというと不器用な方なので、なんでもさらっとこなす人に昔から憧れてるんですよね苦笑 まあ今は、不器用だったからこそ創作活動に情熱を持ち続けられているのかな〜?これはこれで結果オーライ?なーんて思ったりもしてます笑
うーん、でもやっぱり器用貧乏ってかっこいいと思うんだよなあ〜!




