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模範解答は網羅済みです  作者: 米と麦
第一章(二年次・夏)

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15.遠足 サントミモザ(Ⅲ) ★

 「ハワード!!貴方いったいなんでこんなところにおりますの?」

 「おやクラリスか、また会ったな。実は妹弟達へのお土産を探していてね。べサニーの分だけまだ買えていないんだよ。女心は僕には分からないから困っているんだ。」


 そう言うとハワードはいくつか手に持っていたアクセサリーをこちらに見せた。


 「この中だったらどれがいいだろうか。一応、僕の感性で選んでみたのだけれども…」


 差し出されたものを見てクラリスは顔を引きつらせた。ハワードが見せてきたのは三種類。たくさんのオタマジャクシモチーフがついたネックレスに、苔のような深緑の巨大パールブレスレット(中央にオレンジの毒々しい花飾り付き)、そしてカエルが巻き付いているような形状の指輪である。


 「一応、レシーヌ湖も意識してみたんだ。せっかくのお土産だからその地をイメージ出来るものがいいと思ってね。」


 にこにこと笑顔で答えるハワードにクラリスは返事をつまらせる。カミラに助け船を求めたいが、生憎彼女は他の棚を熱心に見ておりこちらに気がついていない。


 「は、ハワード…貴方の感性も個性的でいいと思うけど、もう少し無難で万人受けしそうなモチーフの方が、使い勝手がいいと思うわ。」


 顔は引きつったままだがなんとか質問に答える。ハワードも案外すんなり受け入れてくれた。


 「なるほど確かにな。しかし僕はその無難とやらがよく分からないし…悪いがクラリス、一緒に選んでもらえないだろうか。」


 眉を八の字にして助けを求めてくる彼はなんともかわいらしい。いつもは自分が助けられてばかりなので、それはもう喜んで承諾した。

 ベサニーは数年前に一度会ったことがある。確かハワードと同じ髪の色で、彼同様しっかりした女の子だった。可愛い、というよりはクール系やキレイ系に入るのだろうか。


 「そうね、これなんかいいんじゃないかしら?」


 そういうとクラリス白い貝殻のついたイヤリングを見せた。ハワードは物珍しげにそれを手に取る。


 「うーん、あとは、これと、これと……ここら辺とか?」


 その後もクラリスの吟味は続いたが、ハワードは先ほどのイヤリングが気に入ったらしく、手のひらの中をじっと見つめたままだ。

 「ありがとう、クラリス。これが気に入ったよ。きっと、あの子の髪の色に映えるだろう。さすがクラリスだな。」


 そう言うと、ハワードがにこりと微笑んだ。その眼差しがあまりにも優しげで、思わずどきりとしてしまう。


 (ちょちょちょちょっと、駄目駄目駄目駄目!!ハワードルートの餌食(えじき)になりたいの!?私!?)


 一瞬でもときめいてしまった自分を叱咤する。私はライバル令嬢、恋に落ちたら最後。と心の中で何度も自分に言い聞かせた。そんな気持ちをつゆ知らず、ハワードは嬉々としてイヤリングを眺めている。お門違いもいいとこながら密かに恨めしい気持ちで睨むと、ふと、一つの商品が目に入った。


 (あ、可愛い。)


 それは華奢な一連パールがついた青いリボンの髪留めだった。クラリスはいつも黒地の細いカチューシャをつけている。少し地味だし、ちょうど新しい髪飾りが欲しかったところだ。水を連想させるそれはクラリスの心をぐっと掴んだ。


 「気に入ったのかい?」


 どうやら自分で思っていたよりも見入っていたらしい。隣からハワードがひょこりと覗いた。


 「おそらく淡水パールを模しているね。レシーヌ湖では淡水パールがごく稀に取れるから、それをイメージしているのだろう。……君にとても似合いそうだね。」


 そう言うと、彼は髪留めを手に取りそのままレジへ進み、あれよと言う間に会計を終えてしまった。


 「ちょっと、ハワードったら!!」

 「はい、これ。君にはお土産を選んでもらったからこれはそのお礼さ。是非つけてもらえると嬉しいよ。」


 そう言われてしまうと、もう何も言い返せない。かろうじて高すぎる礼だと口を尖らせてみるが、はははと笑い飛ばされてしまった。


 (そうよ、この人ったらこういうところがあるの!!)


挿絵(By みてみん)


 嬉しさで少し頬を赤らめながらも、頭ではしきりに反抗する。所謂(いわゆる)、天然タラシ。いつもは少し真面目すぎる堅物の癖に、ふとした時に兄のような優しさを発揮する。男らしさのアピールでなければ、恩着せがましいこともない。素直に気持ちを伝えられる男なのだ、彼は。そうやって何人の女子生徒を虜にしてきたことだろうか。皆、大っぴらにはしないものの、校内には彼の隠れファンが多い。

 今日はいやにハワードに心乱されることが多い。まるで自分がゲームの主人公で、彼のルートでも攻略しているような気持ちになってしまう。実際は違うのだが。クラリスは本日何度目か分からぬ「私はライバル令嬢」という戒めを脳内で反芻させ、もう一度気を引き締め直した。


 幸い、ハワードは学年委員の仕事があるといってそのままその場を去っていった。そういえばカミラはどうしているだろうと店内を見まわせば、彼女はまだ先ほどの棚から移動していなかった。何かめぼしいものがあったのだろうか、後ろから近づきそっと覗くと、彼女は一つの品物を手に取り、じっと見つめていた。すずらんのあしらわれた大きめのバレッタだった。下部にオリーブ色のロングリボンが付いている。

 カミラはいつも、黒のサテンリボンに白薔薇がのった大きめのバレッタをつけている。作りこそ似ているが、今手に取っているものは趣が少し異なる気がした。なんとなく彼女らしくないのだ。

 意外だとは思いつつ、人の趣味に口出しするほど無神経ではないので、何も言わず後ろに控える。実際、カミラの雰囲気と異なるというだけで、バレッタ自体はなかなかおしゃれで好感が持てるのだ。どこかのだれかさんとはセンスが違う。

 背後の気配に気づいたカミラが、こちらを振り返る。クラリスが待っているのに気がつくと慌てて商品を戻してしまった。


 「お待たせして悪かったわね。さ、行きましょう。」

 「あれ?買いませんの?」

 「……ただ見てただけですわ。」


 そういう割には随分見入っていた気がするが、本人がいいというのだからよいのだろう。自由時間も気がついたら三十分程しか残っていない。

 今回は挿絵がカラーです^^結構ときめきシーンだったので何となくカラーにしちゃいました笑

おそらく次からはまた単色に戻りますがあしからず~

 やっとクラリスの髪飾りがメインのものになりました!カチューシャだと描き忘れがちだったので嬉しいです。

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