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第一王子は出番がほしい!  作者: いとなつきみ
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第一王子は出番がほしい!

 その後、僕はお祖母様の下に庇護された。


 王妃達の暗躍は、今のところ鳴りを潜めている。


 ジャックリーズがあの後、全く表に出て来ない事と関係しているのかもしれない。


 平穏な日々。しかし僕は、久々なそれを享受する事が出来ずにいた。


 あれから、何もしゃべらず無表情な(いやそれが本来なんだが)普通になってしまった人形を見るたび、喪失感に苛まれ、ため息ばかりをついている。


 思い返してみると、僕は人形に名前さえ聞いていなかった。それは友人として、又、命の恩人に対してどうなんだと、後悔ばかりの日々。


 そして人形との邂逅をリフレインしているだけの毎日。


 こんな姿を人形が見たら「何ヘタレてるの!」って怒られそうだな・・。


 そう思いながらも何をする気も起きず、今もお祖母様ご推薦の、真面目そうな従者から、城内の話題をボーっと聞いてる最中だ。


 「次は慶事です。先頃テンプルトン公爵家にお子様がお生まれになりました」


 テンプルトン家に子供が誕生⁉ その瞬間、水をぶっかけられたように、僕はシャキッと現実世界に引き戻された。


 僕は新しい従者をマジマジと見る。


 テンプルトン公爵家と言えば・・心臓がどきどきしてきた。人形が言っていたオトメゲームの・・エリマキの・・・悪役令嬢の・・・確か名前は・・僕の凝視に気付かないまま、従者は用件を書き留めた木札を読み上げる。


 「女のお子様で、お名前はカテリーナ様との事です」


 僕の心の声が聞こえたみたいに、従者は知りたい事を教えてくれた。


 だが、カテリーナって・・本当に⁉ 


 「フッハハハッ!」


 「ブ、ブレント様?」


 従者は、今までボーっとして、反応もしゃべりもしなかった僕が、突然笑い出した事にビックリし、呆気に取られた顔でこちらを見ている。

 

 従者に不信がられているぞ、落ち着け!


「ゴホン・・あーいや、なんでもない。思い出し笑いだ」


 そう今はなんでもない、ゲームはこれからだ!


「カテリーナ=テンプルトン公爵令嬢・・ニコラスの一つ年下・・」


 そう小さく声に出して言いながら、本棚の上にちょこんと座っている、すまし顔の人形を見る。


 もちろん人形は何もしゃべりかけてこない。しかしその整った顔は「私の言った通りでしょ!」と偉そうに言っているみたいだ。 


 あれ?そういえば・・なんで人形はまだここにいるんだろう?


 今更ながら疑問が湧いてきた。


 失念していたが、伝承通りなら、いつの間にか宝物部屋に戻ってるんじゃなかったのか?


 よーく考えてみれば、大精霊様に守られているはずの人形が、簡単に盗まれたって事からしておかしい。

 

 それって、全て大精霊様のシナリオ通り・・という事だったりして・・。


 そうだとしたら、これはもしかしたら数百年ぶりの「人形の出現」って事?

 

 危機が去っていないから人形はまだここにいる、とか?・・・


 ええぇぇ-っ⁉ もしそれが当たっていたら大変だ!


 ボーっとしている場合じゃなかった!


 どーしよぉー⁉ 落ち着け僕!落ち着いて考えろ! 

 

 えーっと、もしもこの事象が「人形の出現」とするならば、人形が熱く語ってたのは、エリマキという架空のゲームの話・・。


 じゃあ、将来、その架空のゲームが現実になった時、王国に一大事が起こるっていう事かな?一大事って何が起こるの? 回避策はあるの?


 ・・・わからない。今は何も、これから何が起こるのか確実な事はわからない。


 だけど、人形が教えてくれたゲームの知識はある。カテリーナが生まれたように、時が僕に教えてくれるに違いない。


 そして嬉しいことに、今回の事で人形に再び出会う希望が出て来た。

 

 僕は本棚に近づき人形を手に取ると、ジッと見ながら心の中で宣言する。


 『ゲームは着々と開始に近づいている。君は宣言通り僕の前に戻って来る。君が言ったようにカテリーナかヒロインか、はたまた残念なモブ、とかいう者になってかもしれないけど。 だが何になろうと僕は必ず君を見つけてみせる。キアイトコンジョで!』

 

 戻ってきた人形は、誰になろうときっとゲームの展開に絡んでくるはずだ。


 だから僕はゲームの中に出番がほしい! かつてないほど強く思う!


 


 僕は、やる気が出て来て気がはやった。しかしゲームが始まるのはまだ何年も先の事。先ずはそれまで生き延びないと! 話はそれからだ。


 その為の第一歩は、笑顔で味方を増やすぞ作戦!・・笑顔の練習・・か。


 結局、人形の言う通りになったな!

 

 改めて見ると、人形のキラキラした目は笑っているように見えた。


  

 

 その時の僕は、自分が人形相手に百面相しているなんて気づいていなかった。そんな僕を従者が驚愕の表情で凝視しているのにも。


 

 この後、僕に『人形王子』という非常に面倒な二つ名が付いてしまうのは別の話。


 




 

 


 



完結しました。 最後まで読んでいただきまして有難うございました。

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