物語は
「あのねブレント、私、というかこの『守護人形様』は、大精霊様のお使い様で間違いないわよね?」
「そうだな」
小さい子供に言うような人形の口調にカチンときたが、それよりも話の先行きが気になったので、僕は簡潔に返事した。
「だったら私の意識を引っ張っているのは、大精霊様って事になるんじゃない?」
「え、えーっとそう、なのか・・・な?」
人形は自信たっぷりに言っているが、それ以外の可能性も有るような・・・。
「そうに決まってるじゃない!だいたい勝手に異世界に転移させられたり、人形にさせられたり、今からって時に意識引っ張られたり、私、大精霊様に対して、結構不満が溜まっているのよね!一言文句言っても許されると思うんだけど!」
人形は息巻いているが、ちょっと心配になってきた。
「おい!そんなんじゃ大精霊様にお会いできても、ご機嫌そこねて、君の大っ嫌いな黒いアレみたいに、バシッと一瞬で潰されてしまうかもだぞ!」
「えーそれは嫌だー。しょうがない!諦めるか」
良かった。・・ってなんで人形の妄想を真剣に考えてるんだ僕・・。
「でも、これ以上変なのに転移させられるのも嫌だから、どうにかしてブレントの所に、人間として戻してもらえるように、かわいく頼んでみるよ!」
また妄想か!
しかしこの非常識な状況では、呆れた妄想とも言い切れない。それに人形は誰にでも平気でズケズケ言う所があるから心配だ・・・。
僕がうろんげに人形を見ていると、
「大丈夫、大丈夫、気合と根性だよ!」
「また出た、キアイトコンジョ」 ハァ―と僕が脱力していると、
「ブレント」
人形が僕を呼んだ。さっきとは違い、真剣な口調にドキッとした。
悪い予感が僕を押しつぶす。
「ブレント!」
「・・・・」
答えたら予感が現実になりそうで・・
「ブレント‼」
焦ったように人形が僕の名を呼ぶ。もう逃げられない・・
「な・・に?」
一言絞り出す。すると人形は早口で宣言した。
「私、絶対この世界に、ブレントの所に戻ってくるから!カテリーナかヒロインか、もしかしたら残念なモブになってかもだけど」
残念なモブ??とか考えている暇もなく、
「戻ってきたら約束通り笑顔の練習ね!」
「うっ」やっぱりいやかも!
「返事は?」人形が畳み掛けてきた。しょうがない、
「わかった約束だ」すると人形の元気な声が返ってきた。
「約束ね!じゃあまた!」
その瞬間、フッと人形の中から意識が消えたのが分かった。
こうして、僕と自称『異世界転移人形』との短い物語は、あっけなく終わってしまった。
読んで頂き有難うございます
次話は最終話になります。 一時間後に投稿予定です